お客様に生産現場から品質管理を伝える

札幌
2017/10/23

2017年10月3日に札幌で開催しました「内田洋行ITフェアin札幌」イベントでの講演「お客様に生産現場から品質管理を伝える -売れる為の品質管理とは- 」についてレポートいたします。

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お客様に生産現場から品質管理を伝える
-売れる為の品質管理とは-

【目次】
◆他社の失敗から学ぶ -具体例-
◆食品衛生を徹底するためのHACCPを導入するメリット
◆ヒューマンエラーを無くすための社員教育

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▲ 食品安全教育研究所
  河岸 宏和 氏

 「他社の失敗から学び想定外をなくす」食品は、安全という土台の上でおいしいことが 必要です。食品基地、北海道の商品が農場管理から、製造現場までの安全を考えるだけでなく、おいしいことをお客様にいかに伝えるかを具体例を持って解説します。
 食品衛生を徹底するためのHACCPを導入するメリットとヒューマンエラーを無くすための社員教育をご教示いただきます。

他社の失敗から学ぶ -具体例-

どちらの階段を登る?

 食品工場もしくは食品製造現場は安全でおいしくて利益が出なければダメです。私のような、いろいろな工場を見ている人間が皆さんに注意するようでは、まだ事故の発生率は高い。今日来ている皆さんが本物のプロになり、工場の中で注意し合えばクレーム発生率は、ぐんと減ります。さらに従業員同士が注意し合うようになれば、クレーム発生率は限りなくゼロに近づきます。
 クレームより優先するのは従業員の安全です。事故・労災が起きてから改善するのではなく、皆さん自身が気づかなくてはいけません。たとえば、ワンオペ(ワンオペレーション)や過重残業の問題があります。早朝勤務で、たった一人で仕事をしている人はいませんか。コンビニにお弁当を納めている会社で、炊飯ラインに男性従業員が挟まって死んでいました。品質管理云々以前に一人で仕事をさせてはいけない。今日来ている皆さんが臭い物にフタをせずに言わなければいけないんです。

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安心と安全に投資を

 女の子が食事をしていたら、異物が入っていて前歯を折ってしまいました。女の子の親から「お宅の会社は、どうしてエックス線検出器をつけてないんですか」と聞かれました。皆さんなら、どういうふうに返事をしますか。「ウチはお客さまの安全よりも利益が優先なので、検出器など買いません」とはいえません。
 会社を20年、30年存続させるために何に投資しなければいけないか。それを決めるのはオーナーや社長です。皆さんは安心や安全に投資するよう提案をしなければいけません。提案すると面倒臭い。オーナーや社長が利益が出ていないから、そうした投資はできないと判断したら、あやうい階段を登ることになります。安全という土台がしっかりしていないから、風が吹けば簡単に倒れてしまう。登る階段を間違えると、大変なことになります。 

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アップルが手本としたのは?

 方針が大事です。スティーブ・ジョブズは世の中が豊かになってほしいと願い、仕事をしていました。「今はモノは売れないよ、不景気だし」と、よくいわれます。そうでしょうか。iPhone10、iPhone8は出た瞬間に行列ができました。その秘密の一端を、お話しします。ウインドウズのパソコンは裏も表もシールをペタペタと貼っています。アップルの商品はシールを一切貼っていません。キレイに対するこだわりがあります。
 スティーブ・ジョブズが何を見本として商品開発をしたか。日本の神社などです。日本の神社などでは参道を毎朝きれいに掃いています。ていねいに雑巾がけしています。
 皆さん、今朝、会社に行って机の上を拭いてから仕事を始めましたか。電話を拭いてから仕事を始めましたか。玄関を、だれが掃きましたか。徹底的に整理・整頓・清掃をすると、「あそこの工場の玄関は、いつ行っても掃除している。ほうきをかけている。工場の周りもきれいだね」と言われます。きれいな参道をつくる、きれいなところをつくる。そこに軸足を置いて商品開発したのがiPhone、iPadです。彼は日本から学びました。

たったひとりでも声をあげる

 たった1人でも声を上げれば、事故は起きません。そのたった1人が皆さんなのです。皆さんがミートホープにいたら、「社長、パンなんか入れてはダメですよ」と言えたかどうかです。皆さんが雪印食品にいたら、「段ボール箱を詰めかえたらダメですよ」と言えたかどうかです。

上手な情報発信が大事

 組織の責任者は365日24時間、お客さまと従業員と地域のことを考えなければいけません。皆さんは、何の夢を売るプロになるのですか。ここが大事なところです。何をお客さまに伝えますか。皆さんの会社では、だれが何を伝えるか決まっていますか。1時間、2時間、あるいは何時間でも会社の商品を細かく伝えられるプロはいらっしゃいますか。食べ方や煮方には、こんな方法がありますよ、と伝えられる。それができた瞬間に差別化できるのです。ただ、いいものをつくっているよ、ではダメなのです。上手に伝えなければいけません。

ネット情報のチェックを

 いまはSNSが発達していますから、悪いうわさも、いい情報もあっという間に広がります。SNSは非常に怖い。何をいっているかというと、ネットの情報をチェックしていますかということです。食品にゴキブリが混入していたとネットにアップされたら、操業を停止する事態につながりません。あるいは皆さんの会社の商品を持っている、使っている、毎日食べているということを、お客さまが自信を持ってしゃべっているのかどうかです。

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経営に与える重要度

 放射能汚染を除けば、会社に対して最も影響度の高いのは化学薬品の混入です。そんなことが起きる可能性は非常に少ないという表なのですが、アクリフーズの農薬混入事件があり、中国毒ギョーザ事件もありました。それを他山の石としなければいけない。何をすべきか。作業着を家に持って帰ってはいけません。会社に大きなカバンを持ってきてはいけません。従業員のロッカーの確認は、いつやっていますか。週末に退社するときはロッカーの中を空っぽにして帰っていますか。24時間365日、危機が起こらないように考え、実行するのが皆さんの仕事です。

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雪印乳業は過去にも大規模な食中毒事件を

 皆さんの会社のミスター品質は、だれですか。ミスター品質をつくり上げなければいけません。雪印乳業は実は1955年に学校給食で食中毒事件を起こしています。停電でエンテロトキシンが増殖、その原料乳を使った脱脂粉乳が学校給食に供され、1936人に及ぶ食中毒事件が発生しました。おまけに事件当初、雪印乳業は因果関係を否定する記者会見を行っています。こういうことを繰り返してはいけないと、新入社員教育でずっと教えていましたが、「もういいだろう」と教育を止めてほどなく事故を起こしてしまいました。たった1人が「エンテロトキシンは熱でも死なないから、出荷してはいけない」といえば雪印乳業は大丈夫でした。

人の口に戸は立てられぬ

 一番起こる可能性が大きくて、被害が大きいのはネットでの情報拡散です。SNSで厨房にお湯を張って、お風呂にして入っている写真が出回りました。調べてみると、登別温泉でした。皆さんの工場の中で撮られたらアウトです。実際、ロシアの例ですが、ハンバーガーチェーンの牛乳工場の回転釜の中で、お風呂に入って遊んでいる写真が出回りました。きちんと対策を立てて、実行しなければいけません。

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転倒事故を防ぐ基本の基本

 一番多い労災事故は転倒事故です。転倒事故を防ぐのに一番いいのは必ず手すりを持つことです。手すりを持たないで階段を降りたら、どなたか注意をしてくれますか。私は、いろいろな会社を訪問しますが、ここ20年で、たった1カ所だけ「手すりを持ってください」と言われました。皆さんの会社にはルールがありますか。教育していますか。できてない人を見たら、注意していますか。従業員同士で注意できるようになれば、素晴らしくいい会社になります。

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 ドベネックの樽という図があります。たった1カ所でも水漏れをすると、その工場の品質すべてがダメになります。「私の仕事は品質管理だから、この仕事さえしていればいい」というわけにはいきません。タガが外れたら、水は全部漏れてしまいます。遠くから、これを見るのは大変な仕事ですが、それがミスター品質の仕事です。

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安全と品質は一体

 たった1回大きな食中毒を出すと、店を閉鎖しなければいけなくなります。一番対策が必要なのは作業着です。作業着を家に持って帰ってパンツと一緒に洗っていませんか。一緒に洗ってもいいのですが、せめてアイロンがけをしてください。アイロンの熱でO157は死にます。そこまで指導しないと、いつ人が死ぬかわかりません。

金属混入:現場内持ち込み禁止物を明確に

 金属混入を防ぐ一番いい方法はなんですか。コンタクトレンズはOKですか。眼鏡はOKですか。コンビニのおにぎりを食べると、コンタクトレンズが出てきたことがあります。コンタクトレンズをつけている人が入ったとき、出たとき、チェックするシートをつくっていますか。メガネ、コンタクトレンズ以外は持ち込み禁止にすべきです。

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金属混入:出勤時の持ち込み検査

 出勤時に従業員が大きなカバンを持ってきたら、中身をチェックします。退出時もチェックします。皆さんの会社、していないですよね。アクリフーズの農薬混入事件から何も学んでいない。大手百貨店・スーパーは必ず透明なビニールカバンに飲み物と財布だけ入れて入り口で確認し、退社時も確認します。日本の工場ではしないのです。アクリフーズはやはり対岸の火事なんですね。

金属混入:金属検出機を設置し、精度を確認

 さらに金属混入を防ぐためには金属検出機、エックス線検出機を設置する必要があります。商品から、ちょっとした金属異物、石などが発見されたら、回収を余儀なくされます。最終製品が金属検出機などの異物検出機を通過しているからこそ安心して出荷することができるのです。ジャガイモなどの農産物は土の中にある石、金属などの異物を内部に取り込んでしまう可能性があります。牛・豚肉などの畜産原料も注射針の折れたもの、散弾銃などの金属が混入している場合があります。農産物、畜産原料は金属検出機、エックス線探知機での全量検品が不可欠です。

食品衛生を徹底するためのHACCPを導入するメリット

なぜ日持ちするのかの理屈が重要

 皆さんの会社の商品が、なぜ日持ちするのか、明確になっていますか。それが世の中でいうHACCPです。この洗い出しをやった上で賞味期限が30日だとすると、日持ちすることの理屈が必要です。

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アレルゲンを含む食材の管理

 アレルゲン対策としては最終的には専用工場をつくる必要があります。もし自分の子どもが小麦アレルギー、タマゴアレルギーだったら、ボールも鍋も専用にすると思うのです。せめて専用のラインでなければいけません。

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ヒューマンエラーを無くすための社員教育

安全管理:まずルールをつくる

 まずルールをつくらなければいけない。人に教育するときには会社全体でルールをつくり、きちんとトレーニングをします。従業員が注意し合うようになれば、食品事故も労災、火事も減ります。紙芝居を1枚つくって、朝礼で共有します。

笛を吹く重要性

 ルール違反や不正を見たら、その場で笛を吹きます。手すりを持たないで階段を歩いている人、手の洗い方がいい加減な人、髪の毛が出ている人を見たら、従業員が、その場で注意します。そうした教育ができていれば、事故など起きるわけがない。スーパーの従業員が「あの人が魚を切っている日は刺身を買いません。トイレに行っても手を洗わないし、落としても平気で使うから」と言いました。教育で一番大事なことは今つくっているものは、あなたの大切な人のためにつくっているものだということをたたきこむことです。自分の子どもに食べさせるものだと思った瞬間、「手を洗ってね」「落としたものを使ってはダメ」という声が出てきます。

従業員全員が互いに注意

 「事故が起きたら対応します」では事故は減りません。特定の人が声をあげるのではなく、従業員全員が互いに注意していく。それができた瞬間、商品は良くなります。これを企業文化といいます。いい会社に行くと、全従業員が「いらっしゃいませ」「おはようございます」と、きちんとあいさつしてきます。工場に入ったら、「だれと、お約束ですか」と声をかけてくれるのはいい会社です。

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朝礼で、全員の前で褒める

 従業員が進んで何かを指摘してくれたとき、どうしたらいいでしょうか。一番いいのは朝礼で「本当に、いい仕事をしてくれましたね」と褒めてあげることです。全従業員の前で拍手する。これはすごい力になります。上司や同僚から「あなたがいてくれなければ困る。あなたが私たちの会社のミスター品質です」といわれたら、うれしいものです。とにかく徹底して褒めましょう。

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 講師ご紹介 

食品安全教育研究所
代表 河岸 宏和 氏

1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。

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