
基幹業務システムのリプレイス、成功のポイントは?
基幹業務システムをすでに導入しているものの、業務フローや時流の変化、あるいはシステムの老朽化といった要因で、現場・経営側のニーズと合わなくなることは少なくありません。そこで検討したいのがシステムの入替え、いわゆるシステムリプレイスです。当然ながら入替え期間も社内の基幹業務は止められません。通常業務と並行してプロジェクトを進め、慎重にデータ移行する必要があります。本項では、実際の導入事例をもとに失敗しないERPシステムリプレイスのポイントについて解説します!
システムリプレイスとは?
システムリプレイス(リプレース/replace)は、既存システムから新しいシステムに移行することをいいます。
技術の進化や業務プロセスの変化に伴い、既存システムの機能不足が浮彫りになる、あるいはランニングコストの見直しが必要になるといった事態は珍しくありません。また、中小企業で散見される課題として、オフコンや自社開発システムのレガシー化や業務の属人化が挙げられます。保守切れによって時流に対応できない、担当者の高齢化や後継者不足により業務移管がスムーズに行なえない、といったケースです。
そうした場合、パッケージシステムへのリプレイスを実施することで、業務プロセスの最適化やパフォーマンス向上、属人化の解消といった効果が期待できます。
パッケージシステム
とは?
ERPシステム導入にあたっては、ゼロから開発するフルスクラッチ開発と既存システムを流用するパッケージ開発から選択することになります。フルスクラッチは自社の業態に合わせた自由度の高いオーダーメイドが可能である反面、導入や保守・管理に莫大なリソースが必要です。また、特定の担当者に業務が属人化するデメリットも。
一方、既存システムやコードを流用して構築するパッケージシステムは、要件すり合わせや開発・運用・保守に要する時間や費用を大幅に節減できることがメリットです。関連法改正によるアップデートが都度必要となる食品業において、より効果が大きい方式といえるでしょう。
ERPのシステムリプレイス
検討チェックシート
お使いの基幹業務システムがつぎのチェック項目に当てはまる場合、システムリプレイスによる業務効率化が期待できます。
- オンプレミス型
- サーバーを自社に設置するオンプレミス(On-Premses)型システムは、クラウド型に比してカスタマイズ性で優位性がある一方で、保守管理やカスタマイズのコストが高く、時流の変化への対応が難しいというデメリットがあります。
- オフコン
- オフコン(オフィスコンピュータ)は、1970年代から事務処理や販売管理・在庫管理などの用途で多くの中小企業で導入が進みました。その高い安定性から長らく日本のビジネスシーンを支えてきましたが、現在ではほとんどのメーカーが撤退しているため、故障しても対応できないケースがあります。ハードウェアの老朽化や保守切れ、担当業務の属人化、PCへのデータ連携が進まないといったデメリットがきわめて大きく、多くの企業でクラウド型ERPへのリプレイスが進んでいます。
- 自社開発(フルスクラッチ)システム
- 完全なゼロの状態からフルスクラッチで構築したシステムは、自社の業態や業務フローに合わせた細かなオーダーメイドが可能です。一方で、保守や更新が高コストになること、扱える人員が限定されるデメリット(業務の属人化)もあります。担当者の不在や退職で混乱が生じるケースも少なくありません。そういった課題は、自社開発システムから市販パッケージシステムにリプレイスすることで解消できます。事業拡大を考えた場合でも、パッケージシステムによる業務の標準化は必須になるでしょう。
- 保守・サポート切れ
- サポート終了した基幹業務システムはセキュリティリスクが高く、不正アクセスや情報漏洩に対して脆弱です。消費者に被害が及ぶ生活必需産業である食品業は、圧力をかけやすいことからサイバー犯罪の標的になりやすい業種のひとつとされています。基幹業務システムが不正アクセスにより暗号化され、システムの起動自体ができなくなり、復旧に6カ月を要したという国内事例もあります。また、保守・サポート切れのシステムは、頻繁に起こる法令・税制改正にも対応できないため、すみやかなシステムリプレイスが望ましいといえるでしょう。⇒参考:セキュリティ
- サポートに不満
- 例えば外国製ERPの場合、きめ細かなサポートを受けることは困難です。基幹業務システムやERPは日々の業務に不可欠のシステムだからこそ、万一のトラブル時のサポート体制は機能以上に重要といえます。
- 連携性・拡張性に不満
- さまざまなシステムとデータ連携して業務の全体最適を図れることこそがERPの強みです。現状、思うように部門間のデータ連携ができていない、機能拡張に不満があるとお感じなら、リプレイスが選択肢に挙がります。
- 業務負荷の高まり
- 例えば、現状のシステムで販売管理と在庫管理で同じデータを二重入力する必要がある、それによって人的ミスなどの非効率が多い、データの反映が遅れるといった業務課題があれば、システムを見直すタイミングかもしれません。
上記チェックリストに当てはまる場合、システムリプレイスのご検討をおすすめいたします。
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オンプレか? クラウドか?
ERPを導入する際、事業者さまはオンプレ型とクラウド型から選択することになります。オンプレ型とはオンプレミス(英:on-premises)、直訳すれば「店内」「構内」となり、転じて自社設置型システムを指します。運用するうえで必要なソフトウェア/ハードウェアを自社で保有・管理する、従来型の運用形態です。安定性は高いものの、サーバー管理の労力や設置スペースをとられることがデメリットです。
現在の主流はクラウド型ERPです。ネットワークを通じデータセンターのサーバーを利用してアプリケーションを動かすクラウド型では、自社にサーバーを設置する必要がありません。管理の労力やスペースを省けるほか、BCP対策としても有用です。災害や事故によるデータ消失を防ぎ、非常事態でも安定した事業継続が可能になります。
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ERPシステムリプレイスのデメリット
ERPのシステムリプレイスは、基幹業務全体のワークフローに影響が及びます。当然ながら、費用・人員・時間の面で非常に大きなプロジェクトになります。現在のシステムに不満はあるもののリソースを鑑みて見送るという判断もまた、選択肢のひとつといえるでしょう。
ただ、システムリプレイスの検討事由が保守・運用コストであれば、先延ばしにするほど、それは重くのしかかります。業務負荷の問題であれば、担当者の不満や疲弊が募ることは大きなリスクです。長期的にみれば、早めにリプレイスしたほうがメリットは大きいでしょう。
補助金を活用して導入する、といったことも可能ですので、こちらの記事もご確認ください。⇒参考:IT導入補助金活用ナビ
ERPシステムリプレイスの進め方
ERPのシステムリプレイスには、定常業務への影響を最小限に抑えることと、新しい環境への早期適応が同時に求められます。そのためには、詳細かつ現実的なスケジュール設定が不可欠です。
また、それぞれのプロセスについて注意すべきポイントを整理し、適切に対応することも重要といえるでしょう。
内田洋行ITソリューションズ(ITS)では、ERPのシステムリプレイスについて数多く手がけてきました。蓄積した豊富なノウハウをもとに、スムーズなシステム入替えをご支援いたします。
システムリプレイスの手順については、下図でご確認ください。
システム入れ替えの流れ
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- 要件定義・基本設計
- 貴社の現行業務から課題と必要な機能を洗い出し、新システムの運用や必要な改修内容を設計
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- 移行
- 現行システムから新システムへのデータ移行作業
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- 本稼働
- 新システムの導入効果を最大限にするための利用者さま教育計画を立案・推進
01要件定義・基本設計
スムーズなリプレイスを進めるには
ERPのシステムリプレイスに際しては、改革の目的・方向性・プロジェクトの進め方を明確にし、関係者全員で目的を共有することが重要です。このプロセスに数カ月、あるいは1年かけて丁寧に進めたお客さまの例では、大きな混乱もなくスムーズに稼働されています。また、構築段階から部門長を交えた全員参加型プロジェクトにしたことで移行がスムーズに進んだ事例もあります。
最初から自分たちが利用するという意識付けができ、移行もスムーズだった
現場担当者の理解を得るのが肝要
ただ、システムリプレイスで全社最適が図れることを頭ではわかっていても、現場担当者が使い慣れた旧システムや業務フローからの移行に不安感を抱くことは少なくありません。リプレイスを進めたい経営サイドと現場でしばしば見解は衝突しがちです。一方で、業務フローの洗い出しや要望の精査など、実際にシステムをお使いになる現場メンバーの協力は、プロジェクトにとって不可欠です。
システムリプレイスの旗振り役、プロジェクトリーダーには、ITの知見と同時に、社内業務に精通していることが求められます。現場の抵抗感に理解を示し、そのうえで前向きな気持ち、新システムのメリットを丁寧に伝えることが重要です。
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注意すべきポイント
- パッケージ標準を重視しすぎ、業務運用に無理が出てしまう
- 現状業務を重視しすぎ、業務標準化が実現できない
- 現場担当者の理解が得られない
- ITSからの支援
- システム開発・導入だけでなく、食品業の基幹業務についてノウハウを有するメンバーを総動員し、ご納得いく要件定義・基本設計作業を実施いたします
02移行
移行期間と移行時期
現行システムからスーパーカクテルCore FOODsへのデータ移行作業に入ります。基幹業務をストップさせることはできないため、旧システムと新システムを並行稼働させながらデータを移行するのが一般的です。この際、年末などバックオフィスが多忙となる時期は避けたほうがいいでしょう。
システム移行期間は、導入システム構成や企業さまによってまちまちですが、前述した半兵衛麸さまの事例では年始から運用を始めて4月の稼働に向けて準備し、大事をとって約2カ月の並行稼働を経て本稼働しています。
また、川賢さまの事例でも、運用時は新旧両システムを2カ月間同時稼働させ、慎重にシステム移行を進めておられます。

2024.09.11
事業拡大に伴う管理システムの一元化で、手作業の煩雑さや転記ミス排除
お客様情報 導入後の効果 導入の背景 導入の成果 今後の展望 社 名 株式会社川賢 事業内容 飼料販売、肉豚・鶏卵の生産 設 立 1976年 ...
現行システムに関わる作業は貴社主体の作業となりますが、豊富なリプレイスのノウハウをもと、弊社も積極的にご支援いたします。
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注意すべきポイント
- 現行システムからのデータ移行作業の負担が想定以上に大きく、他の作業が進まなくなる
- 旧システムと並行稼働させて数カ月スパンのプロジェクトになることに留意する
- ITSからの支援
- 現行システム調査を行ない、移行対象項目の検討と判断のご支援
- 移行用Excelシートへのデータ抽出作業支援
- 登録データ確認時の不備に対する原因調査
03本稼働
新システム・新運用の効果を最大限にするための利用者さま教育計画を、プロジェクトメンバー一丸で立案・推進いたします。
システムリプレイスプロジェクトは、単に稼働して終わりではありません。効果に繋がる運用への助言、支援、また、実際の効果や現場担当者の意見をフィードバックして、よりよいシステム構築を目指します。
各担当者が実際にシステムを触って実感を持つことができ、システム入れ替えに関して建設的な意見が現場で増えた
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注意すべきポイント
- 教育計画が利用者任せとなり、新システムの利活用が進まない
- 現場メンバーでは直接SIベンダーとやり取りすることが難しい
- ITSからの支援
- マニュアル作成支援
- 説明会講師支援
- テスト時適時立合支援
- 稼働時適時立合支援
- 例外業務の運用再定義など