- 社 名
- 石井食品株式会社
- 事業内容
- 調理済食品の製造及び販売
- 設 立
- 1945年5月
- 資 本 金
- 9億1,960万円
- 所 在 地
- 千葉県船橋市本町2-7-17
日本初の調理済みハンバーグ「チキンハンバーグ」や「ミートボール」でおなじみの石井食品株式会社様。佃煮製造を祖業とし、80年にわたる歴史の中で、惣菜から非常食、配慮食まで、さまざまな商品を世に送り出してきました。「真(ほんとう)においしいものをつくる」のミッションの下、「品質保証番号」「厳選素材」そして「無添加調理」の原則を守りながら、時代のニーズに対応した「便利で身体にいい加工食品」を追求している企業です。
同社では2024年、オフィスコンピュータによる販売システムから移行する形で、内田洋行ITソリューションズ(以下ITS)の統合システム「スーパーカクテル(スパカク)Core FOODs」を導入。属人化していた業務の標準化が進んだほか、ペーパーレス化の進展や改善文化の醸成などの効果もあらわれています。
ミートボール
チキンハンバーグ
導入後の効果
Effect
- 誰でも容易にシステムを扱えるようになり、業務標準化が実現した
- 他のシステムとの連携も奏功し、業務の効率化・ペーパーレス化が進展した
- 業務フローのドキュメント化や業務改善への意識が高まる副次的効果も
導入の背景
Background
業務標準化を目指し、長年利用のオフコンをリプレース
食品業界での経験豊富なITSへの信頼感から、スパカクを導入
石井食品株式会社様は30年以上にわたり、オフィスコンピュータ(オフコン)による基幹システムを使用してきました。近年では、システムそのものの老朽化に加え、保守担当者が1~2名と少なくなり、高齢化も進展。それに加え、システムを使った業務の属人化という課題もあったと、同社IT戦略部の津留一仁氏は語ります。
「オフコンで使用しているプログラム言語を扱える人材は限られており、保守は外部の方に委託。データの分析にしても、その都度ベンダーさんにデータ出力を依頼しなければなりませんでした。現場業務の中でもあの『黒い画面』をすぐ触れるようになるかというと難しく、一人前になるまでには数年かかる状態。例えば欠品処理も『この人が出社していないと対応できない』という状況があったようです。このようにシステムを扱える人物が限られているため、不便なことがあっても『ここを変えたい』と、現場はなかなか言い出しづらい状況でした。
また、当社には八千代(千葉)、京丹波(京都)、唐津(佐賀)に工場がありますが、それぞれのシステムの仕様や、データの持ち方が異なっていたため、3工場の業務標準化も迫られていました」

IT戦略部 津留 一仁 様
こうした課題を受けて同社は、IT戦略部が主体的に運用できる新たな基幹システムを導入し、業務改善につなげるためのプロジェクトを組織。5社によるコンペを実施しました。
「選定にあたっては、『自分たちでシステムをコントロールしたい』という思いが強かったので、私たちがしっかり理解できるパッケージシステムであることを重視しました。また、物流システムなど社内で稼働している他のシステムとの連携のしやすさも考えなければなりませんでした」
同社が最終的に選んだのは、こうした条件をクリアしたITSの「スーパーカクテルCore FOODs」でした。津留氏は、ITSに対する信頼感も決め手になったと振り返ります。
「私自身、基幹システムのリプレースは今回が初めてだったので、正直どんなシステムが良いのか明確には描けていませんでした。だからこそ、食品製造業でのITSの豊富な経験は頼りになると思ったんです。あとは相性というか、SEをはじめとした担当者を信頼できるかも重視していました。ITSのメンバーからは、『同じチームとして働いてくれる』『相談できる』という感覚を抱きましたね」
導入の成果
Results
業務棚卸と現場社員との密なすり合わせを行いリリース
誰にも操作しやすいスパカクが、業務属人化の解消に寄与
スーパーカクテル導入の準備は、2021年にスタート。同社はまず、対面とリモートミーティングの双方で現場とコミュニケーションを取り、3工場それぞれの業務の違いを整理。各現場のエース格の社員を巻き込みながら、業務シナリオをスプレッドシートに一覧化するなど、業務の棚卸を進めました。
「現場とのやりとりには時間をかけました。それまでのシステムを変えれば、最初は抵抗感があるはずが、当社の社員は『なぜ変えるのか』を丁寧に説明すると、みんな協力してくれたんです。そこは私自身のモチベーションになりました。
スーパーカクテル導入にあたっては、できる限り業務を標準に合わせる方向で進めました。請求書フォーマットなどは自社システムで対応し、基幹システムであるスーパーカクテルはカスタマイズを最小限にすることを意識。ITSには開発環境を早期に提供してもらい、現場との毎週のミーティングの中で、リリース後のシステム像を共有しながら認識合わせを細かく行いました」
ITSと連携した入念な準備と開発期間を経て、2024年の年明けにまず唐津工場で先行してリリースを行いました。現行システムからの実績データは夜間バッチで取り込む設計にするなど、現場への影響を考慮しながら、段階的にシステムを移行。現場からのフィードバックを受けながら改善も進め、同年秋までに全社でリリースが完了しました。
「スーパーカクテルで得られた一番の変化は、やはり業務の属人化の解消です。オフコンの頃は、多くの機能・メニューを使わなければなりませんでしたが、スーパーカクテルはUIが優れていて、機能・メニューもシンプルでわかりやすい。現場のメンバーもすぐに使えるようになりました。
現在スーパーカクテルを利用しているのは、受注や経理、請求の約35人の担当者です。
特に便利なのは、データ抽出の機能ですね。自分たちでさまざまな形式でデータを出力できるので、それらを簡単に分析・活用できるようになったのは助かっています」

八千代工場外観
スパカク導入により、半分の人員で運用可能になった業務も
現場で自発的に業務改善を試みる文化も醸成された
スーパーカクテル導入から1年が経過し、業務の標準化のほかにも、さまざまな成果が表れてきているという同社。手入力作業に頼る部分も少なくなかった受注部門ではEDIの利用が進み、請求書もクラウドツールを使って電子化。新たにスーパーカクテルが基幹システムに置き換わったことが、業務効率化・ペーパーレス化を大きく後押ししたそうです。
「例えば請求業務は、以前の半分の人員で運用できるようになりました。こうした業務効率のアップも、スーパーカクテル導入の成果ですね。もう一つは残業時間。システムのリプレースのみによるものではないかもしれませんが、全体として以前より明らかに残業時間が減少しています。
定性的な成果というところで言えば、改善の文化が醸成できたこと。今までこの仕事をやってきた中で、一番わくわくしている点ですね。現場からは『こうしたらもっと効率的』『こんなふうに変えていきたい』という声が次々に出てきて、私たちIT戦略部と相談しながらシステムを改善していく流れができました。オフコン時代と異なり、自分たちがシステムをコントロールできるようになりましたし、電子化の進展など業務改善の実感が得られるようになってきたからだと思っています」
さらに、導入準備の段階で業務棚卸を進めたことで、「ドキュメントを残す文化」も職場に根付いているようです。
「システムにしても現場業務にしても、誰か一人の負荷が高くなってしまわないように、ドキュメントを見れば誰でもある程度業務ができる状況にしておくことは大切です。何かエラーが起きたときも、リカバリーするための手順を『その場でやっておしまい』ではなく、しっかりドキュメントに残す。そのあたりのルールづくりができたのも、今回のシステム移行の成果だと思っています」
今後の展望
Prospects
ITS担当者の真摯さに信頼感
今後はスパカクの豊富な標準機能を活用していく
ITSの担当者に対し、顧客とベンダーという立場を超えた信頼感を覚えていると、津留氏は語ります。
「当初から『立場は関係なく、どんどん意見をください』とお伝えしていたんですが、ITSはそこをしっかりやってくれますね。システムリリース後の運用においても、社内でなかなか相談できる相手がいない中、ITSの担当者が『壁打ち』になってくれてすごく安心しました。小さなことでも対応いただける真摯さには、本当に感謝しています。
そしてこのスーパーカクテルには、これまでのITSの経験やノウハウが詰まっています。私も別業界から転職してきた身なので、スーパーカクテルから学ぶところは多いです。ここまでは自社の業務に必要と思われる機能だけを使っていましたが、スーパーカクテルにはまだまだ標準機能がたくさんあります。今後はこれら理解して、もっと活用していきたいと思っています」
最後に、スーパーカクテルの導入を検討している方へ向けてのメッセージをいただきました。
「システムのリプレースにあたって当社が気を付けたのは、業務改革を同時に行わないということです。業務フローも合わせて変えたくなるところですが、プロジェクトがすごく大きくなってしまうので、業務標準化に留めました。あとは先ほどお話ししたように、カスタマイズは最小限にすること、そしてプロジェクトリーダーは『最後まで走り切る』という熱意も重要なのかなと思っています。
このプロジェクトの中で、技術を持った社員の高齢化や人手不足、システムの老朽化などは、食品業界全体が抱える課題だと感じました。今回の当社の経験をもとに、業界全体のソリューションにつながるような活動ができればと考えています」
※掲載内容は取材時点(2025年11月)のものです。













