2017年12月6日に東京で開催しました「食品ITフォーラム~Dec.2017~」イベントでの講演「IoTをビジネスに活かす! ~これからのIoT時代に考えておくべきポイント~」についてレポートいたします。
▲ 富士通株式会社
ネットワークサービス事業本部 IoTビジネス推進室
窪田 航平 氏
昨今ビジネスを取り巻く環境が急速に変化している中、IoTを有効活用し、ビジネス発展を狙うことが期待されております。
しかし、「効果は本当にあるの?」「どう準備したらいいの?」等の理由により、IoTの取組みをされている企業は未だ多くはありません。
本セミナーではIoTを取り巻く最新状況と具体的な活用事例をご紹介いたします。
1.IOTの動向
IoT時代の到来
IoT時代の到来で、重要なポイントは、ひと・モノ・環境などあらゆる情報がデジタル化されることです。今まで、あまりとれていなかったデータがデジタル化され、ネットワークにつながることで、さまざまな新しい価値創出に使われるようになりました。
IoTとは何か
発祥としては1999年にケヴィン・アシュトンが「Internet of Things」を提唱しました。ただ、もともとはRFIDを対象としたものでした。現在は例えば、ICTアドバイザリー企業、ガートナーはテクノロジー・プロバイダー各社、各種テクノロジー、セールス/マーケティング・モデルのすべてを変革するものとして定義していますし、コンピューターネットワークのCISCOは人、モノ、データ、プロセスをネットワークで結びつけ、すべてを「オンライン」するものと定義しました。富士通も2000年ころには「Everything on the Internet」というものを提唱しています。
実際のところ、まだ決定的な定義はなく、組織や立場によって、さまざまな定義があるといった現状です。
なぜIoT が期待されているのか
1つはスマートフォンの急速な普及に加え、通信、センシング、大容量データ処理などの技術が進展したことで適用できる領域が一気に増えました。2つは競争の激化、ニーズ・価値観の変化、少子高齢化などビジネスや社会課題への対応です。
IoTがもたらすイノベーション・インパクト
経済産業省の資料によると、IoTがもたらすイノベーション・インパクトの1つは潜在需要を喚起する新商品・サービスの開発、2つは事業運営の構造改革・効率化、3つは社会的課題への対応です。単に事業やサービスをつくるだけではなく、効率化・コストダウンにも役立つと期待されています。
2.富士通のIOT実践事例
IoTができること:水質測定サービス
IoTを通じて現実世界から収集できるデジタルデータが増加します。データを活用するためには価値提供のサイクルを回す必要があります。例えば、あるセンサメーカ様では従来、採取した水質データを事務所に持ち帰って解析していました。データもアナログで保管され、管理も困難でした。そこで、富士通の「IoT Platform」を活用、センサーデータをクラウドに上げることで、簡単かつ迅速に測定情報を管理・分析できるようになりました。
マンホール下の水位モニタリング
下水道の水位をリアルタイムに把握し、ゲリラ豪雨などによる洪水の危険性を住民にいち早く伝えるサービスで、福島県のある市と協業し、実際にサービスを提供しています。特徴はIoTの最新の仕組みであるLoRa方式を導入、バッテリだけでも1年間稼働することです。しかも、下水道と地表の温度差を利用して発電も行っており、常にバッテリに発電した電力を供給することで電源いらずのセンシングを実現しました。
運行・道路情報サービスの新規事業を創出
トランストロン様が提供している運行・道路情報サービスの事例です。速度・運行時間などの運転情報を記録するデジタコ(デジタルタコグラフ)を活用、ネットワーク化し、リアルタイムで情報を集めて総合的な運行支援サービスを提供しています。従来の車載情報機器事業、つまりモノ(ハード)売りからクラウドサービスビジネスに転換、2016年には新サービスが売上高の24%を占めるまで急成長しています。しかも、集めたデータを有料で自治体に提供、自治体が危険個所のチェックに使用するなど事業の幅も広がってきました。サービスビジネスへの転換を果たしただけでなく、新たな顧客を創造した事例です。
RFIDによるユニフォーム管理
あるホテルではフロントスタッフ、調理人、ハウスキーパーらが着用するユニフォームすべてにRFIDソフトリネンタグをつけました。RFID とはID情報を埋め込んだICチップのことで、電磁界や電波などを使って近距離の無線通信によるデータのやりとりが可能です。ユニフォームをクリーニングに出す際、以前は手作業で確認していました。ゲートを通すことでRFIDのデータを読みとり、一括して検品ができるようになり、大幅な作業効率化を実現、間違いや不正使用の防止にも貢献しています。
製造現場の見える化
FINET山梨工場では製造現場で発生するさまざまなセンシングデータと、関連する背景データをひもつけてクラウドに集約、製造現場の「見える化」を実現しました。経営者、現場の管理者、作業員が情報を共有することで、改善策の立案・実行のプロセスもスピードアップ、即日、実行できるようになりました。ライン停止時間も30%削減、大きな生産性向上が実現しました。
リペア工程の可視化
島根富士通ではノートパソコンやタブレットを年間約200 万台つくっています。リジェクト品といわれる、一般工程から検査ではじかれてしまったものを修理して出荷していますが、チャーター便が多く発生し、間接コストがかかっていました。そこで、製品にビーコンセンサーを添付し、ライン上のゲートウェイで位置情報・滞留時間・出荷期限などをリアルタイムで検知、リペアエリアを見える化したことでリジェクト品の管理が格段に容易になりました。フィードタイムを従来最大20%短縮、輸送コストの30%削減も達成しました。
微粉炭機赤熱事故防止に向けた予兆検知
発電所などで重要設備のセンサーデータにもとづき、故障を未然に防ぐためのソリューションを適用した事例です。従来、温度センサーを使って警報閾(いき)値を超えた場合、対処していたのですが、急激な温度上昇があった場合、回避は困難で事故後の対処になってしまっていました。それを防ぐために光ファイバーの温度測定技術を応用、1 万点以上の高精度の温度情報を一元取得し、ODMAという解析ツールを活用することで予兆検知を実現しました。
工場現場作業員の安全管理
A 社の工場では厳しい暑さの中、夜間など単独での巡回作業があり、急病などで倒れたときに大変だということで、それを管理したいという要望がありました。そこでユビキタスウェア(ロケーションバッジとバイタルセンシングバンド)を装着し、作業者の位置情報や熱ストレス、熱中症にかかりそうかどうかの情報、転倒などの情報を検出し、管理室で把握できるようになりました。
事例を見るポイント1 :生かされていなかったデータを活用
ポイントは従来、あまり取れていなかったデータを活用して価値に転換し、新たな事業の軸や効率化に結びつけたところです。
事例を見るポイント2 :自社が見える、まわりが見える
もうひとつはセンシングデータをビッグデータとして収集、事業の改善に活用し、生産性向上やコストの削減につなげたことです。さらに、利用者がどのように使っているかといった情報を活用することで、付加価値・新事業の創出も実現しました。
3.富士通の取り組み
富士通が目指す“ヒューマンセントリックIoT”
イノベーションの主役は利用者である“人”であると考え、人を中心として価値提供サイクルを回して事業化を進めることが大事であると考えています。
ビジネス創造プロセス
新たなビジネスを検討しようとしても予算化の段階で挫折するケースが目立ちました。そこで企画検討の後、ビジネス実証を挟み、なるべくスモールスタートできるようなビジネス創造プロセスを提案しています。コストをかけずに実証することで、スムーズに企画予算化・開発ステップへ進むことができます。
IoTの活用を支える関連商品群
富士通ではIoTの活用を支える関連商品群を用意しました。センサーデバイスからネットワーク、クラウド、アプリケーションまで豊富なラインナップ。自社だけでなく、さまざまなビジネスパートナーと共創しながら、商材、技術を融合させたシステム、サービスを開発。具体的にはIoTコンサルティング、IoTシステム設計・構築支援サービス、IoTシステム運用支援サービスを提供しています。
食品業向けパッケージ「スーパーカクテルCore FOODs」
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