2022年10月5日に開催しました「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」についてレポートいたします。
2019年4月、遺伝子組換え(以下本文中、「遺伝子組換え」を「GM」という)食品の表示に関する食品表示基準の一部が改正され、2023年4月1日完全施行となります。
本講演では新制度の概要と求められる対応について解説いただきました。
遺伝子組換え食品とは?
遺伝子組換え食品とは
GM作物とは、他の生物の遺伝子を組み込んで新しい性質を持たせた作物です。日本にも大豆、とうもろこし等が1996年から輸入されており、現在、日本はGM食品の輸入大国と言える状況にあります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
組換え作物の例 除草剤耐性作物ダイズ
大豆のGMで代表的な性質は除草剤耐性です。特定の農薬に耐性があり、除草コストが削減できるため大量に栽培されています。
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組換え作物の例 害虫に強いトウモロコシ
とうもろこしのGMの代表的な性質は害虫抵抗性で、殺虫剤を使用せず特定の害虫の食害を防ぐことができます。
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我が国における遺伝子組換え表示の対象農産物の輸入量・作付面積割合の変化(大豆、とうもろこし)
日本に輸入しているGM大豆、GMとうもろこしは、飼料や油糧等、表示義務の対象外のものに利用されています。
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国内での安全性審査のプロセス
GM作物は、環境への影響はカルタヘナ法に、食品は食品衛生法、飼料は飼料安全法に基づき安全性審査を受ける必要があり、食品は、環境への影響の審査後、食品としての安全性審査を経て商品化されます。
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食品としての安全性審査ステップ
GM作物の安全性審査は内閣府に設置された食品安全委員会が実施、実質的同等性の概念に基づきGMによって新たに加えられた形質を集中的に調べる安全性評価で、安全性を認められたものだけが流通可能となります。
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世界の栽培状況
GM作物は日本では商業栽培されていません。世界ではさまざまな地域で栽培されていますが、国によって栽培作物は異なります。現在しょうゆなどの原産地表示で「遺伝子組換えでない」の表示(以下、「『遺伝子組換えでない』の表示」を「『でない』表示」という)があるものは、GM大豆を栽培していない国から輸入された脱脂大豆が原料となっていると考えられます。
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日本で食品としての安全性審査の手続きを経た遺伝子組換え食品
2022年9月6日現在、9作物331品種が日本で安全性審査手続きが終了。2022年3月に油糧用からしなが加わりましたが、とうもろこしの品種が多くを占めています。安全性審査が終わった作物、品種以外のものの輸入は検疫所でチェックされ、シップバックされる場合もあります。
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現在「遺伝子組換え食品」についてどのようなイメージを持っていますか?
怖い等、GM食品への消費者の印象はあまりよくなく、年代が上の方ほどその傾向が強いようです。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
ネガティブ(怖い・悪い)イメージを持つようになった理由は?
ネガティブな印象を持った理由で一番多いのは、わざわざ「でない」表示があるからです。「遺伝子組換え」と表示された商品がほとんど流通していないため、かえって注視する傾向があるかもしれません。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
遺伝子組換え食品表示制度と表示改正
遺伝子組換え食品の表示制度
現行制度では、分別生産流通管理の下、GM農産物の使用が明らかな「遺伝子組換え」、GMと非GMが分別されていない農産物使用の「遺伝子組換え不分別」、従来のものと組成や栄養価が著しく異なるものが義務表示で、改正後も義務表示の骨格は変わりません。「でない」表示はあくまで任意表示で、現在、みそ、しょうゆ等、横並びであえて表示する業界が散見されますが、今回改正されたのは任意表示の基準です。
なお高オレイン酸大豆は、組成、栄養価が異なるものの一つでしたが、非GMでの開発成功に伴い、本年3月30日に義務表示対象外となりました。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
義務対象
表示の義務対象品目は安全性審査で流通が認められた9農産物と、それを原材料とした33加工食品群です。しょうゆや植物油等、加工段階でGMタンパク質も組換えDNAも分解されて検査で検出できない食品は、日本では表示義務の対象外で、加工後も組換えDNA等が残る食品が義務対象です。「表示義務の対象となるのは主な原材料(原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるもの)」とのルールがあり、1つの食品で複数ものが表示義務の対象となる場合もあります。
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「遺伝子組換え」と表示された食品を見たことがありますか?
現行制度施行当初と異なり、現在「遺伝子組換え」表示が義務付けられた食品は市場でほとんど見掛けません。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
「遺伝子組換え不分別」と表示された食品を見たことがありますか?
現在、一部で見掛ける「不分別」と表示がある食品は、植物油等、任意表示の食品に、あえて表示しているもので、義務に基づき「不分別」と表示された食品は、ほとんど市場で見掛けません。食糧需給の逼迫(ひっぱく)により、GMでないものが購入しづらくなると、「不分別」の食品が多くなるかもしれません。
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義務表示の表示方法
義務表示で特に重要なのは、分別生産流通管理をしてもGM農産物の意図せざる混入が5%を超えた場合およびそれを加工食品の原材料とした場合も、全く分別生産流通管理していない場合と同様に「不分別」として表示義務が生じる点です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
分別生産流通管理
分別生産流通管理すなわちIPハンドリングとは、国産、輸入を問わずGMと非GMの農産物を農場における生産、流通、加工の各段階で善良なる管理者の注意をもって分別を管理し、それが書類によって証明されていることで、農場から加工食品の製造まで、どの場面でも混入がないよう管理する必要があります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
店頭で見る表示のほとんどは?
現在、店頭で見るのはほとんど「でない」表示です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
2017年 消費者庁「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」
2017年、消費者庁が「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を開始、消費者団体、学識者、事業者が議論し、制度が始まって以来17年ぶりにGMの表示制度が見直されました。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」の概要
検討会では、現行制度で表示義務の対象外の、加工後組換えDNA等が残存していない食品の義務対象への変更も検討されましたが、対象品目を含め、義務表示は現行を維持、「でない」表示が認められる条件の、意図せざる混入の域値の5%以下から不検出への厳格化が結論となりました。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
遺伝子組換え表示制度に係る分別生産流通管理等の実態調査の概要
現在流通している大豆やとうもろこしへのGMの混入率を調査したところ、分別生産流通管理をした上で「でない」表示している場合でも、大豆で最大0.3%程度、とうもろこしでは4~5%を超える混入があることが分かりました。とうもろこしは、風の媒介で受粉するため農場で交雑しやすいこと、1粒に複数の組換えDNAが存在するスタック品種が多いことの影響が考えられます。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
日本及び諸外国における「遺伝子組換え」表示が免除される混入率及び「遺伝子組換えでない」表示が認められる混入率
日本の現行制度は「遺伝子組換え」や「不分別」の義務表示が免除されるGMの混入率が5%以下で諸外国に比べて高い上、「でない」表示が認められる意図せざる混入率も、諸外国の多くて0.1%未満に比べ5%と高く、前述の検討会は、日本も、「でない」表示を認める検出限界の設定ではなく、非検出への厳格化が適当としました。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
遺伝子組換え食品表示の改正の概要
現行制度は義務表示2区分と任意表示1区分の計3区分です。改正後は、義務表示2区分に変更はなく、任意表示を2つに分け、計4区分となります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
新たな遺伝子組換え表示
新制度では任意表示は2つに区分され、1つは分別生産流通管理した上で意図せざる混入が5%以下の旨表示する新しい分類、もう一つは、基準を非検出のみに厳格化した「でない」表示です。なお、分別生産流通管理しても意図せざる混入が5%を超える場合は、現行のルールから変更はなく「不分別」の表示義務があります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
新しい遺伝子組換え食品表示制度
消費者庁ウェブサイト「遺伝子組換え表示制度」
消費者庁のウェブサイト「遺伝子組換え表示制度に関する情報」では、Q&Aやパンフレット等、多様な情報が紹介されています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
遺伝子組換え食品表示制度の説明会資料
消費者庁が2019年6月に東京と大阪で実施の説明会用に作成したパンフレットでも改正の詳細が説明されており、表紙に2023年4月1日から新制度となる旨明記されています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
パンフレットでは新制度での任意表示の例も示されています。GMの混入がない場合のみの「でない」表示は、「非遺伝子組換え」等の表記も可能。分別生産流通管理をして意図せざる混入が5%以下の場合の分別生産流通管理した旨の表示は、「大豆(分別生産流通管理済み)」等が可能です。なお混入率の表示は、全量検査が不可能である以上、正確性が担保できないため、実質的に難しいでしょう。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
パンフレットでは、任意表示を2つに区分することが消費者の誤認防止や選択機会の拡大につながるとしています。また、大豆、とうもろこし以外の農産物には意図せざる混入率の規定がないため、非検出が「でない」表示の条件だと記載もあります。この点は現行から変わりませんが、「でない」表示には分別生産流通管理が必要なので、今後は非商業栽培国から輸入した農産物でも分別生産流通管理が必要となります。なお、GM混入の可能性がある場合、「なたね(分別生産流通管理済み)」等の表示は可能です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
新たな任意表示制度に関するQ&A
パンフレットのQ&AのQ1~Q3では新制度施行までの表示の早期切替えを促し、改正後の基準に則さない表示がある包材の残物は、施行後、使用不可と明記しています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
Q4は、適切に分別生産流通管理された旨の表示方法に関する記載です。消費者庁が推す「IPハンドリング」や「IP管理」は少々難解で、普及が難しい面があるようです。また、「ほぼ含まれていません」等、GMの混入がないと解釈されかねない表現も避ける必要があると記されています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
Q5では、「でない」表示できる条件であるGM農作物の混入がない旨を確認する社会的検証と科学的検証の方法として、第三者分析機関による分析、次の①~③を証明する書類等の整備が考えられるとしています。
①生産地でGM農産物の混入がないことを確認した農産物を専用コンテナ等で輸送し、製造者の下で初めて開封していること。
②国産品やGM農産物の非商業栽培国で栽培されたものでも、生産、流通過程でGM農産物の栽培国からの輸入品と混ざらないこと。
③生産、流通過程の各事業者においてGM農産物が含まれていないことが証明されており、その旨記載された分別生産流通管理証明書を用いて取引を行っていること。
①は、国の内外を問わず、混入がないラインでの輸送が必要で、②は、倉庫やトラック、工場等、流通のいかなる課程での混入も不可です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
消費者庁ウェブサイト「遺伝子組換え表示制度」
消費者庁のウェブサイトには食品表示基準の補足資料やQ&Aが掲載されています。このQ&Aは2022年3月30日に大幅に更新され、「でない」表示できるものや監視執行等の詳細が示されています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
「遺伝子組換え表示に関するQ&A」一部抜粋
「遺伝子組換え表示に関するQ&A」のGM-38では、分別生産流通管理実施の旨任意表示する際、「遺伝子組換えでないものを分別」等、消費者が誤解しかねない表示は不適正だと明記しています。また、GM農産物の混入率の表示は可能としながら、表示より実際の混入率が高い場合、不適正な表示となる場合があり要注意と改めて記載しており、実質的に数字の記載は不可と解釈せざるを得ません。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
GM-40では、第三者機関による分析は任意表示の必須条件ではないとしつつ、保健所等が検査して原料農産物にGM農産物の含有が確認された場合、「でない」表示は不適正な表示となる旨明記しています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
GM-41では、GMの混入がないとの確認を依頼する第三者機関に指定はなく、民間機関への依頼も可としていますが、結果の信頼性の点から分析機関の要件は厳しく、自社での分析は容易ではありません。また、新制度施行後は、第三者機関や自社で行った分析で問題がなくても、行政の科学的、社会的検証でGM農産物の含有が確認された場合、「でない」表示は不適正な表示となる旨もここで明記されています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
GM-58では、牛の飼料等、食品の原材料に当たらないものの任意表示も正確な表現が望ましいと明記。GM飼料「不使用」は不確実なので「分別生産流通管理された飼料で飼育された牛の牛乳」等が望ましい、「遺伝子組換えでない牛乳」等、GM技術で作られる牛乳があると誤解されかねない表示も不可としています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
GM-60では、監視は、地方自治体や保健所等が、書類を確認する社会的検証を基本に、これに先立って科学的検証で対象を絞り込む等、社会的、科学的両面の検証を組み合わせて実施すること等が記載されています。特に、「でない」表示を続けるには分別生産流通管理実施の旨を証明する書類の整備が不可欠となります。
GM-61では、「でない」表示に反して行政の科学的な分析でGM農作物が検出された場合、表示は不適正となり、食品表示法に基づき指示、命令、罰則等、所要の措置が講じられると明記しています。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
科学的検証「遺伝子組換え農産物の混入がないことの確認方法」
消費者庁は2021年9月15日の「食品表示基準について」の第24次改正で、ダイズ穀粒とトウモロコシ穀粒の科学的検証の新しい分析法として、陰性であればGM農作物の混入の可能性がないことを示す、リアルタイムPCR法の適用を通知しました。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
「遺伝子組換えでない」表示のための定性試験ΔΔCq法とは
国立医薬品食品衛生研究所が「でない」表示のための定性試験として開発したΔΔCq法は、試験室間や検出限界付近でのばらつきを解決し、不検出を精度よく判定できる手法です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
ΔΔCq法は、ある遺伝子について基準となる混入率を設定、設定した混入率の標準試料と検査対象の試料のゲノムを増幅するサイクル(Cq)を比較し、検査対象の試料の増幅サイクルが標準試料より長い場合、ある遺伝子について陰性で、標準試料より混入率が低いと判断する検査方法です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
ΔΔCq法のとうもろこし標準試料
ΔΔCq法の標準試料のGMの混入率は確実に検出される濃度で設定されます。とうもろこしは0.1%、大豆は0.05%と厳しいため、従来の分別生産流通管理ではΔΔCq法で陽性となります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
説明会・Q&A・検査法のまとめ
説明会等の要点は次のとおりです。
・2022年の4月1日以降、「でない」表示した食品は、保健所等の監視下で、社会的、科学的検証によりGM農産物の混入がないことを確認される場合があります。
・科学的検証の新しい検査方法は厳格で、従来の分別生産流通管理では陽性となります。
・国産や有機の原料でも、生産地、運搬や保管、製造段階でGM混入の可能性があれば検査で陽性となり不適正表示とされる場合があるため、「でない」表示には各工程の証明書等、相応の管理と覚悟が必要となります。
・科学的に適切に検証していても行政の検査で陽性となれば不適正表示となることを踏まえ、多くの商品が分別生産流通管理済みの旨の表示になると考えられます。
・新制度にパンフレットや広告の規制はありませんが、容器包装とパンフレットで情報が違うと消費者が混乱するため、注意が必要です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
適切に分別生産流通管理された原材料に任意で事実に即した表示をする際の表示例
消費者庁は資料で、適切に分別生産流通管理された原材料の任意表示の例を示していますが、いずれも消費者に分かりづらいことは否めません。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
豆腐・納豆の事例
豆腐と納豆の業界は、適切に分別生産流通管理された原材料の事実に即した表示に2020年頃から対応し、海外産、国産を問わず、流通、製造過程で大豆原料にGM原料が混入する可能性が否定できない場合、既に「分別生産流通管理済み」と表示しています。有機JAS認証工場で製造していても、GM混入の可能性が否定できず「分別生産流通管理済み」の表示をした商品もあります。Q&A等を読み込むと、そう書かざるを得ないとの当然な判断かもしれません。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
オーガニックもいろいろ
オーガニックの商品の原材料表示は、事業者の管理の仕方によるようです。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
豆腐製品の表示例
豆腐では、原材料の枠内に「大豆(分別生産流通管理済み)」と表示し、原料原産地は賞味期限に記号で記載、その下に記号が指す産地を表記する先進的な方法や、「遺伝子組換えのものと分けて管理しています」とのシンプルな表記等の工夫が見られます。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
豆腐等の原料の「カナダ又はアメリカ」産大豆を「でない」表示している事業者も、施行までに対応すると思います。みそ等ではGM関連の表示が一切ない商品が出てきました。
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しょうゆの表示例
元々任意表示のしょうゆ業界の対応は事業者によってまちまちで、未対応の事業者の対応の遅延が危惧されます。オーガニックも、「でない」表示のもの、そうでないものがあります。
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ポテトチップスの表示例
現在、ポテトチップスは、こだわりの商品で「でない」表示のものがあります。コーンチップスの原材料のとうもろこしを「でない」表示している商品は、よほど特別な管理をしているか未対応か不明です。
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ポテト菓子の表示例
以前は「でない」表示していて、改正に合わせてGM関連の表示をやめたポテト菓子もあります。「遺伝子組換え」、「不分別」の表示がないことから、GMの混入を5%以下にする分別生産流通管理をしていると分かりますが、それをあえて無表示としたわけです。原料原産地表示も考慮し、任意表示の非表示を判断しても問題ないと考えます。
東京都条例 遺伝子組換え食品表示マーク
東京都バイオテクノロジー応用食品のマーク表示ガイドライン
東京都では、2001年に独自のバイオテクノロジー応用食品のマーク表示ガイドラインを作成、都内の事業者に「組換え」、「不分別」、「非組換え」を大きく表示した都のマークの使用を働きかけてきました。
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マーク表示例
現在、都のマークはオーガニックの冷凍コーン等で使用されていますが、使用する商品としない商品がある事業者もあるようです。
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遺伝子組換え食品の新たな任意表示制度の施行に伴うガイドラインの改正について
現行のマークには分別生産流通管理されてGMの混入率が5%以下の場合の選択肢がないため、本年8月、都は食品安全審議会でガイドラインの改正を検討しました。
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遺伝子組換え食品の新たな任意表示制度に対応した遺伝子組換え食品のマーク表示例
審議会で、円を新制度の4区分で分割し、該当する選択肢を一番上に表示するマークへの変更が決まりました。義務表示の選択肢に変更はありません。
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都のマークは、任意表示が「非組換え」から「分別生産流通管理済」と「非組換え」になります。現在、都のマークを使用した商品は少数ですが、施行後使用される可能性もあります。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
遺伝子組換え食品表示の今後の方向と課題
東京都バイオテクノロジー応用食品のマーク表示ガイドライン
制度の改正は、当初、国産大豆使用の場合「でない」表示を可能とする設計のはずでしたが、分析技術を精査するにつれ厳格化が進み、非常に厳しいものになりました。結局、国産原料でも分別生産流通管理済みの旨の表示となりますが、豆腐、納豆業界は既にこの表示を定着しつつあります。ただ、分別生産流通管理という言葉は難しく、GMの文言が含まれないため、表示制度が消費者にとってより難解になることが危惧されます。
無表示にして対応する業界も出てきましたが、施行後も「でない」表示をすべく相当の覚悟を持って生産、流通、製造各工程での分別管理を準備中の事業者がある一方、改正後の厳格さへの認識不足から「でない」表示のまま未修正の事業者も多いと思量されますので、制度の周知徹底が急務だと考えます。いずれにしても、消費者の誤認のない表示が肝要です。
講演資料:「2023年4月施行まであと半年 遺伝子組換え食品表示制度改正で何がどう変わる?」より
一般社団法人
Food Communication Compass 代表
消費生活コンサルタント
森田 満樹氏
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