食品業界の現状と2026年におさえるべきトレンド

 2026年6月18日に開催しました「食品業界の2026年展望と収益改革セミナー」の基調講演「食品業界の現状と2026年に押さえるべきポイント」をレポートいたします。

 2025年の食品業界は、物価上昇の長期化や消費者の節約志向の高まりを背景に、売上は維持・成長しながらも販売数量の伸び悩みや収益性の低下といった課題に直面しました。

 本レポートでは、2025年の市場動向を振り返るとともに、2026年に向けて企業が押さえるべき経営課題や注目トレンドについてまとめています。株式会社矢野経済研究所 大篭 麻奈 氏に解説いただきました。

食品業界を取り巻く環境

実質GDPの推移

 2025年の実質GDP成長率は、内需が伸びた一方外需のマイナス要因で、前期比+1.1%という緩やかなプラス、そして2026年3月までは+0.5%となっています。

講演資料:「食品業界の現状と2026年におさえるべきトレンド」より

消費者物価指数

 2025年の消費者物価指数は、米の高騰が大きな要因となり3.1%増、米以外の食料品は、チョコレート、しょうが、ほたて貝、ごぼう、無菌包装米飯などの値上がりで6.8%増となりました。

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日経平均株価

 日経平均株価は、2025年年初は大幅な下落がありましたが、その後はAI、半導体関連の牽引により株高が続いています。本年5月には6万円台を突破し、上昇傾向です。

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為替相場

 2025年の為替は157円から一時140円まで円高が進み、後半は150円台となりました。2026年も円安基調で、日銀による為替介入でもその流れは変わっていません。

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インバウンド

 2025年の訪日外国人観光客は4,000万人を突破し、韓国、中国、台湾、香港などのアジア圏が中心で、アメリカも増えています。

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 消費額は約9.5兆円、1人当たり22万8,809円で前年比100.9%となっており、中国、台湾、韓国、香港などは伸び悩み、アメリカは増加しています。訪日者数は、中国や香港は減少し、台湾はプラスで推移しています。

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国内観光客

 国内旅行者は5億5,366万人で、コロナ前との比較では94.3%、宿泊旅行は回復傾向、日帰り旅行は約8%減となっており、人数ベースでは減少傾向で、団塊世代の高齢化が原因とも見られています。

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 旅行支出は必要経費が上がっているため、お土産などへの予算制限が懸念されます。菓子類については、購入率は変わらず、購入者単価が上昇しています。

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食品業界の現状

値上げ

 2026年は前年比で、乳製品108.2%、水産加工品144.8%、農産加工品108%と値上げされました。小麦加工品、油脂類などは落ち着いていますが、小麦加工品は再度の値上げが予想されています。

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食品製造業の景況感

 食品製造業の景況感DIは、企業規模により差があるもののおおむねプラスですが、2026年にかけて明確な改善が見られていません。今後は中堅企業において慎重な見方が強まっています。

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2025年度上場企業の決算状況(食品製造業・卸売業)

 上場企業の2025年度決算状況は、増収が多くなりました。利益額も全てのカテゴリで増益となりましたが、営業利益率は糖類、菓子・パン、その他加工食品で低下しています。増収増益と減収減益は大きな変化はありませんが、増収減益は20.2%から28.3%に増え、減収増益は10.1%から6.3%と減少しました。

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加工食品市場

 加工食品市場規模は、前年度比2.4%増の32兆6,000億円で、値上げが要因となっています。

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 品目別では飲料、菓子類、酒類、パン・麺類の構成比が大きく、インスタント食品、レトルト食品、冷凍食品の伸び率が大きくなっています。

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飲料

 飲料市場は猛暑や備蓄需要により前年度比0.3%増、5兆3,500億円で、単価上昇が主な要因です。今後は高付加価値の商品開発が成長の鍵と見ています。

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 茶系飲料は、価値の高い商品として価格と内容のバランスが鍵となり、「綾鷹」や「お~いお茶」などが好調で、機能性飲料は、プラズマ乳酸菌を使った「おいしい免疫ケアシリーズ」、「キレートレモン」、「特水」などが伸びました。

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菓子

 菓子市場の規模は、単価上昇により前年比3.6%増の4兆8,612億円と推計していますが、2026年度はやや厳しい見通しです。

 デザート類では、暑い夏の長期化によりアイスが市場を牽引しています。

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和・洋菓子・デザート

 和・洋菓子・デザート市場でのトレンドを3つに分類し、まずカフェ・テイクアウト系で、ドーナツ、アサイーボウル、グリークヨーグルトが若い世代に人気です。手土産・ギフト系では、パイ菓子、極厚バターサンド、焼き菓子が人気の高い分野となっています。例えばグレープストーンのベリールビーカットはSNSで話題になり人気店となりました。ディリー生菓子系では、節約志向の中、プチ贅沢としてシュークリームやロールケーキが好調です。

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 また推し活や香りなど、体験価値を求める傾向があり、特に紅茶フレーバーに人気があり、株式会社BAKEの「Tea Drop」、若尾製菓の「TEA MARIA」、明治の紅茶クッキーが入ったアイス、ハーゲンダッツの紅茶フレーバーのアイスなどがあります。2026年もその流れは継続しており、茶葉による味の違いを生かした商品が出ています。

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 推し活・カラー消費としては、Cake.jpが展開している「カスタムケーキ」は推しアイドルのテーマカラーなどをカスタマイズできるケーキで人気があり、この流れを受け、銀座コージーコーナーやアンリ・シャルパンティエでもカラフルなケーキが展開されました。また栄太郎總本舗の栄太郎飴ポケット缶がカラフルになったり、クラブハリエのシェフそのものが推し活の対象になるといった動きも見られます。

酒類

 酒類の市場規模は若年層のアルコール離れなどの影響により、前年比2.6%減となっています。酒税の一本化により各メーカーはビール路線の強化を進め、キリンビールの「晴れ風」「GOOD ALE」、アサヒビールの「Asahi GOLD」が好調で、サントリーの「金麦」をビールに格上げする動きもあります。無糖系のRTDやノンアルコールも人気です。

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パン・麺類

 パン・麺類は、2019年を100で2025年は113となっています。パンの売り上げ好調は米不足と価格改定によりますが、数量自体は減少傾向にあるため、高付加価値化、価格訴求の二極化、三極化が進められています。パスタは米の代替需要により売り上げを伸ばし、アルデンテからモチッとという食感への好みの変化、また簡易調理の需要などが見られます。

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レトルト・インスタント食品

 レトルト・インスタント食品は、2019年を100で114となっています。レトルトカレーに人気がありましたが、割高感により直近ではルゥカレーが伸長しています。パスタの需要に連動し伸びてきたパスタソースは沈静化していますが、外食から内食化が進み、割高なプレミアム商品が堅調です。

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冷凍食品

 冷凍食品は、2019年を100で113となっており、調理の簡便化のニーズにより拡大が続いています。定番の餃子、炒飯の簡便性の追求、ワンプレート冷食の人気、冷凍野菜の拡大などが特徴としてあります。

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 イオングループが展開する冷凍食品専門業態「@FROZEN」は冷凍食品に特化した店舗で、地域性のある商品や外食チェーンの冷凍食品も扱っています。

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食品通販

 食品通販の市場規模は、前年比3.3%増の5兆74億円と拡大しています。冷凍のお取り寄せグルメは、やや伸び悩み傾向ですが、今は日常品や冷凍食品のまとめ買いが好調で、クーポンの発行などの施策が強化されています。またワンプレート冷食や外食の通信販売も好調です。

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市場データから見る、2025~2026年に選ばれる食品の条件

 市場データから見える背景として、加工食品市場の数量減少、節約志向、夏型商品の長期化、冷凍、即食、惣菜のインフラ化、健康志向、プチ贅沢化などがあります。

 この背景から、物価高でも選ばれる“買う理由”として、手軽さ、価格に見合う満足感、健康感、本格的な味の満足感、わくわく感・話題性、ブランドの安心感などが選ばれる条件です。

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第44回食品ヒット大賞から見る、ヒット商品の4つの共通項

 日本食糧新聞社の食品ヒット大賞で受賞した食品のトレンドは、簡便性、健康・機能性、本格感、冷感商品の4つです。

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トレンド① 簡便・調理負担軽減

 日清製粉ウエルナの「マ・マー もちもち生パスタ」は、常温保存でき、レンジで2分加熱するだけの商品、エバラ食品工業の「プチっと中華」は、1人用の調味だれ、理研ビタミンの「パッとジュット」は、肉をこの調味だれに入れ冷凍保存し、そのまま焼いて食べられるなど、利便性の高い商品です。

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トレンド② 健康・機能性

 ポッカサッポロの「キレートレモンクエン酸」は、クエン酸を配合して疲労感軽減に効果があること、ゼリータイプで小腹満たしになることなどがヒットの要因となりました。

 スジャータの「のむアサイーボウル」は、アサイー人気が高まる中で商品化し、オーツ麦やさまざまなフルーツを入れるという特徴があります。

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トレンド③ 濃厚・本格・ご褒美

 エスビー食品の「濃いカレー」は、なじみのある濃いシリーズでの安心感、本格的な味づくり、日清食品の「カップヌードル魚豚」はくせのあるうまさ、魚粉のざらざら感などの特徴があります。ハウス食品のホワイト・ブラック・レッドカレーは、日常的なカレーに特別感を与え、この3つの色がSNS映えするとヒットしました。

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 嗜好品として、ハーゲンダッツの「悪魔のささやき」「天使のおさそい」は、悪魔と天使の対比構造に特別感があったこと、守山乳業の「喫茶店の味ココア」は、情緒的価値の訴求につながり、ワンランク上げてくれる商品が消費者に刺さりました。

 お酒は、キリンビールの「グッドエール」、アサヒビールの「THE BITTER-IST」、サントリーの「THE PEEL」などは日常価格での本格的な味わいが特徴です。

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トレンド④ 猛暑・冷感・リフレッシュ

 キリンビバレッジの「午後の紅茶FRUITS&ICE TEA」は、果汁が主役のアイスティ-、ネスレ日本の「ネスカフェアイスブレンド」は水にさっと溶ける商品で、すっきり、軽やかな味わいが夏の長期化に合致しました。

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新技術・食品開発賞に見る、素材起点の新市場創造

 素材起点として、あじかんの「GOVOCE」は、ごぼうを使ったチョコレート風の商品、技術起点として、三幸製菓の「もちきゅあ」は米粉を使った和グミ、製法起点として、明治の「生のとき」は、チョコレートのカテゴリで柔らかい食感を出した商品、これらは新たな価値創出を生み出しています。

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“知っているブランド”を今の文脈で売る

 発売から100年を迎えた「ボンタンアメ」は尿意を抑えると話題になり、ギンビスの「たべっ子どうぶつ」は、キャラクターがIPとして映画やグッズなどの領域に進出しました。IPの活用は、カルビーが「かるれっと」というプラットフォームの実証実験を行ったり、クラシエの「ねるねるねるね」から児童書が発売されるなどがあります。また、雪印メグミルクのなじみのある「牧場の朝」がチーズのカテゴリで商品化されました。

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2025~2026年の食トレンド4象限

 非日常で背徳感がある商品として麻辣湯やガチ中華がはやった一方、健康的なせいろ蒸し料理もはやっています。またアサイー関連、グリークヨーグルトなど海外の食文化に近いものが人気になり、生ドーナツは食感、SNS映えなど話題性がありました。

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食品スーパー

 食品スーパーの売り上げは、前年比全店ベースで103.9%、既存店ベースでは102.8%と伸びています。そのうち惣菜のカテゴリが伸びており、店舗で調理することで差別化を強化しています。来客数では伸び悩みが続いています。

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CVS大手3社

 コンビニエンスストアの客単価の上昇により売り上げは伸びていますが、来客数は減少しています。

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 セブン・イレブンは、レジ横に「Live-Meal」という新しいブランド、また「金のハンバーグ」のリニューアル、ワンプレートの商品、パンの見直しなどで商品力の強化を行っています。

 ローソンは、まちかど厨房で店内調理を差別化の柱としており、デリバリー専用商品の拡充も進めています。首都圏では「Lミニマート」という新業態を開始するとしています。

 ファミリーマートは、定番性の高いカテゴリの商品力強化として、新しいおにぎりやシュークリームのリニューアルなどを行っています。

 ファミリーマートは、韓国の巻きずしの「キンパ」がヘルシー、タイパの良さなどでヒットしています。

講演資料:「食品業界の現状と2026年におさえるべきトレンド」より

まとめ:2025年度の食品市場と2026年度の方向性

 売上高は拡大しましたが、販売数量は伸び悩んでおり、商品力による企業間の利益格差が広がりました。2026年は食品業界の不透明感が強いため、価格に見合う価値提案が重要になります。

 消費者のニーズは、納得価格、簡便性、満足感で、冷凍食品、レトルト・インスタント、ワンプレート、外食代替商品が支持されます。健康志向のため、ベネフィットの訴求、取り入れやすい商品が必要な要素になります。

 プチ贅沢、本格感、SNS映え、わくわく感などが得られる商品の需要も残ります。安さだけでなく、簡便性、健康感、満足感、話題性、ブランド力で、“物価高でも買う理由”を明確にすることが求められます。

講演資料:「食品業界の現状と2026年におさえるべきトレンド」より

大篭 麻奈氏
 講師ご紹介 
株式会社矢野経済研究所
フード&ライフサイエンスユニット
フードグループ
大篭 麻奈 氏

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