HACCP導入は待ったなし
~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~

札幌
2018/07/10

2018年6月19日に札幌で開催しました「内田洋行ITフェア2018」イベントでの講演「HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~」についてレポートいたします。

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HACCP導入は待ったなし
~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~

【目次】
◆1.日本のHACCP沿革
◆2.HACCP制度化
◆3.効率的なHACCP構築

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▲ 日本HACCPトレーニングセンター
北海道エリアオフィサー
戸田 弘平 氏

 HACCPの制度化を盛り込んだ改正食品衛生法が、先月6月7日に衆議院本会議で可決されました。食品事業者の皆様におかれましては、制度化に伴って対応に迫られていることが山積されているかと存じます。

 当セミナーでは、食品にかかわるすべての事業者を対象にした日本の「HACCP制度化」に至るまでの沿革。そしてスムーズで効率的なHACCPプランの作成についてお話しいただきました。

1.日本のHACCP沿革

コーデックス委員会とは

 HACCP (ハサップ)はNASAと米軍、ピルスビリー・カンパニーが研究開発し、コーデックス委員会が発行した世界的に共通する食品衛生管理規格です。コーデックス委員会は消費者の健康保護、食品の公正な貿易の確保を目的として、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)によって設置され、国際食品基準の策定などを行っています。加盟国は2017年8月現在で187カ国。EUも加盟し、事務局はローマにあります。
 コーデックス規格は大きく分けて3つあります。1つ目はコーデック・スタンダードといわれる食品規格。2つ目は「勧告(推薦)食品衛生規範」など。3つ目はガイドラインで、この中にコーデックスのガイドラインがあります。

日本のHACCPの沿革

 1963年、コーデックス委員会がローマに設置されました。3年後の1966年、日本がコーデックス委員会に加盟しました。2013年、東京オリンピック開催が決まり、2018年、「GFSI世界食品安全会議」が東京で開催されました。同年、食品衛生法などの一部改正案が国会で可決され、HACCPに沿った衛生管理の制度化が始まろうとしています。

国内のHACCP認証制度

 国内のHACCP認証制度は大きく分けて4つあります。第1に日本で唯一、厚生労働大臣が承認する総合衛生管理製造過程承認制度、俗にいうマル総です。第2に都道府県や政令指定都市などの取り組み、いわゆる自治体HACCPです。北海道には北海道HACCPだけではなく、札幌HACCPもあります。第3に業界団体などにおける取り組みで、清涼飲料水組合や水産物関係などが発行している認証制度です。第4に大手小売業者などは独自のHACCPの概念を取り入れた衛生管理基準を持っています。取引先に、その基準に沿った管理を要求する場合もあります。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

総合衛生管理製造過程承認制度

 1996年、厚生労働省が立ち上げた承認制度の対象製品は乳、乳製品、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品、容器包装詰加圧熱殺菌食品(缶詰、レトルト食品など)の6品目です。

臨時措置法公布

 ところが、普及がなかなか進まない。1998年、政府は5年間の時限法として臨時措置法(通称はHACCP支援法)を公布しました。食品製造業全体にHACCPの導入を図るため、設備改善にかかる費用など財政面を支援する制度です。

臨時措置法を延長

 それでも普及が進まず、2003年、臨時措置法を5年間延長。さらに2008年、5年間延長し、2013年、10年間延長しました。

食品販売業者は仕入れ先のHACCP導入を考慮

 日本政策金融公庫は食品販売業者(小売・問屋・流通)511社を対象にアンケート調査を実施。契約の際、HACCP導入を参考にしているかどうかを聞いたところ、「HACCP導入が必要」1.6%、「HACCPの仕入先を優先」9.0%、「HACCPも検討材料」57.9%と約70%HACCPを評価していました。臨時措置法の延長を重ねたことで、企業がHACCPの導入に本腰を入れるようになったともいえます。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

JAPAN is BACK  日本再興戦略

 2013年、安倍総理はJAPAN is BACKという新たな成長戦略を策定、日本再興戦略について具体的に検討しました。HACCPは国際標準ですから、日本も普及に本腰を入れる必要があると、HACCP法制化を強力に推進することになりました。
 2020年、農林水産物・食品の輸出額を1兆円とする具体的な数値目標を設定、農林水産省、厚生労働省などはHACCP普及のために、さまざまな施策を打ち出しました。

東京オリンピックが決定

 決め手になったのは2013年9月の東京オリンピック開催の決定でした。食品業者とホテル関係者がHACCPの導入を決めるなど大きな動きになりました。

食費衛生法ガイドライン

 2014年5月、食品衛生法ガイドラインが改正されました。高度化基準整備とHACCP導入の2本立て。改正のポイントはグローバル化する食品流通を考慮し、HACCPの考え方をガイドラインの中に取り入れたことです。

HACCPチャレンジ事業を開始

 2015年、厚生労働省はHACCPチャレンジ事業を開始しました。HACCPを導入している企業をバックアップするため、導入企業を公開しました。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

HACCP法制化を発表

 2016年、厚生労働省はHACCP法制化を発表しました。「食の安全に国際標準を」と食品関連企業に対してHACCPを段階的に義務化しました。厚生労働省は2016年1月から全国で説明会を開きましたが、義務化開始の時期は明言しませんでした。

マル総の廃止を表明

 2016年、厚生労働省はHACCP法制化の場合には、その役割を終えることから、従来の6品目を対象にしたマル総の廃止を表明しました。確かに、すべての食品事業者にHACCPが義務化されるとマル総は必要なくなります。ただし、食衛法第11条第1項の規格基準によらない製造加工工程に対する承認は継続するということです。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

厚生労働省、民間認証の活用を提言

 あわせて厚生労働省は民間認証の活用を提言しました。ISO22000、FSSC22000、JFSMのB規格やC規格などで要求されるHACCP要件はコーデックスHACCPと同様の要件ですから、取得すると有利です。保健所などが点検に入るとき、こうした認証を取得している事業所は考慮されると説明されました。

なぜ食品安全や持続可能性が重要視されるのか?

 日本は食品を輸入し、工業製品を輸出してきましたが、今後は食品も輸出に頼ることになります。人口がどんどん減少し、今までと同じ量をつくると余ってしまう。今の事業規模を維持しようと思うなら、海外輸出しかありません。世界では人口が増加し、食料が不足しています。世界の食糧需要量は2000年の45億トンが2050年には69億トンになります。世界で食糧確保の不安が広がっているのです。

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輸出額上位15カ国の相当数がHACCPを導入

 農林水産物・食品の輸出額上位15カ国の相当数がHACCPを導入しています。

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海外の食品市場

 国家間のルールでは自国で行っていないことを相手国に強要してはいけません。日本は、どの国からでも食品を輸入できますが、HACCP導入国へ輸出しようとすると「待った」がかかります。海外はHACCPありきです。食品の国際取引の場合、求められるのはHACCPです。日本の食品安全ランキングは世界ベスト10内にも入っていません。世界中が食の安全を求めている時代に日本がHACCPを導入していないのは大きなマイナスです。

食品市場の現状

 小売り業者は取引先が多くなり、取引先の監査にかかる経費が増大しています。特にグローバルに展開している企業は監査員の派遣などで膨大な経費がかかっています。そこで経費を抑えるため、取引先に食品安全の認証取得を求めています。
 要求も高くなってきています。「品物が良く、美味しいからぜひ輸入したい」と海外から視察団が来ましたが、現地の加工場を見て「このような衛生管理のところとは取引できない」と断われた話を行政機関の方から聞かされました。それだけ衛生管理に対する要求は厳しくなってきています。

報道から見る大手流通業界の事情

 大手流通は食品製造会社に食品安全強化を要請しています。2010年には日本コカ・コーラが取引先170社に、GFSI承認規格「FSSC22000」の認証取得を期限つきで要請しました。
 イオンは2011年、PB食品の製造先にGFSI承認規格の認証取得を要請しました。認証を取得すると監査頻度を低減するなどのメリットがあります。
 ウォルマート西友は2015年、PB食品の製造先にGFSI承認規格の取得を要請しました。今後、こうした動きは、さらに活発になることでしょう。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

食品安全マネジメント協会の設立

 2016年1月、食品安全マネジメント協会(JFSM)が設立されました。目的は、いろいろありますが、最も注目すべきは日本発の食品安全規格である「JFSM規格」をつくったことです。日本語で日本の文化に合わせてつくられたので、言葉の壁がなく、規格の要求内容が理解し易いです。詳細な解説がインターネットに公開もされています。

食品安全マネジメント協会の設立企業

 設立企業は下記の通り。法人会員は、どんどん増えています。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

JFSM規格

 一般衛生管理を中心としてHACCP7原則の入っていないA規格、一般衛生管理とHACCP7原則12手順を含むB規格、C規格にはB規格にマネジメントシステム要求が加わっています。

JFMS規格の改定

 ただし、HACCP法制化に向けて、A規格にもHACCP7原則を加える改定作業が進められています。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

GFSI世界食品安全会議を開催

 2018年3月、GFSI世界食品安全会議が東京で開催されました。GFSIは各国の行政機関との連携を強化しています。

グローバルな関心事―食品不正

 各国とも、なぜ食の安全・安心に関心が高いのかというと、食品の不正や食品テロに対して危機感を強めているからです。海外では食品偽装は組織的な犯罪と認識されています。日本では検査の不正や偽装が発覚すると謝罪会見する程度ですが、海外は違います。場合によっては経営陣や責任者が逮捕されます。

2.HACCP制度化

HACCP制度化

 2018年4月13日、HACCPに沿った衛生管理の制度化を含む「食品衛生法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決されました。6月6日、衆議院厚生労働委員会で審議・可決され、6月7日、衆議院本会議で可決されました。今後、改正法が公布され、その後、政令、省令などが公布されることになります。改正の概要を見ると、全部で7項目あり、そのひとつにHACCPに沿った衛生管理の制度化があります。

HACCP制度化

 求められているのは「HACCPに基づく衛生管理」で、コーデックスのガイドラインで示されているHACCPの7原則です。それともう一つ、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」というものがあります。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(1)

 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は小規模事業者を対象にしたもので、コーデックスHACCPの弾力的な運用を可能とした衛生管理といえます。要求事項は危害要因分析、重要管理点の決定、モニタリング方法の設定、記録と保存の設定です。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(2)

 ただし、どのような事業者であれ、最終製品はHACCPの7原則と同等の安全性を担保した商品を提供してくださいということです。家族経営のソバ屋、三人でやっているラーメン屋でも同じです。零細企業や中小企業だからといって、食品安全の担保レベルを下げていいわけではありません。

HACCP制度化とは

 HACCP制度化は認証取得を求めてはいません。求めているのはHACCPに基づく衛生管理で、HACCPの導入です。

3.効率的なHACCP構築

効率的なHACCP構築1

 HACCPを自社で導入する際、経営層が介入しない企業は、いいシステムができません。従業員に任せっきりでは、せっかく苦労して構築するHACCPが台なしになります。何のためにHACCPを導入するかというと、組織の事業を継続させるためです。HACCPというシステムで組織を守らなければなりません。
 HACCPシステムの構築は製造現場を巻き込むやり方でなければ、書類を作成しただけになりかねません。HACCPチームには、いろいろな部署から人を集めてください。そして経営者がリーダーシップを発揮して、「会社の総力を挙げて構築・運用していく」ことを、従業員の前で宣言してください。そうすることで、構築する従業員の士気が上がり、いいシステムが出来上がります。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

効率的なHACCP構築2

 経営者はHACCPチームに必要な権限を与えるなど、細かい配慮をお願いします。通常の会社であれば今の仕事の方法を変える必要はありません。今の仕事の技術などを文書化し、整理してまとめたものがHACCPシステムと考えましょう。
 一般衛生管理が、どのようになっているかを一度整理し、ハザード分析のための準備段階の手順1から取り組みます。できるところから行うと、文書類が重複したり、後になって辻褄の合わない点が出てきたりします。基本は7原則12手順に基づくことです。

効率的なHACCP構築3

 最初にしてほしいのは文書管理のルールを決めることです。文書の様式を決め、文書は誰が作成して、誰がその文書を承認するのかなどを決めます。改定や廃棄の手順、最新版の管理の仕組みも決めておきましょう。
 時間のかかることもあります。原料、原材料・資材のサプライヤー情報の入手です。検査合格証明書や出荷検査書などを発行していない企業と取引していた場合、依頼してから発行してもらうまでに、何か月も掛かったというケースがあります。
「何年も信用取引きしてきたのに、今さら検査証明書を提出してといわれても、、、」と言われるケースもあります。その辺のやり取りにも時間が掛かりますから、早い段階から準備を進める必要があります。

効率的なHACCP構築4

 ともかく手順どおりに進めてください。手順どおりに進めると、これは何のために行うのか、これがないとこれができないということが何となくわかり、一つひとつ納得して進めることができます。
 ただし、手順12の文書化で、文書・記録の様式は最初に決めた方がいいです。一般的な手順書や文書、記録文書などの基本的なフォームを最初に決めます。そうすると文書作成に複数の人で取り掛かることができるので効率的ですし、整理しながら作っていくことができます。

HACCP導入は国際的な共通認識

 HACCPシステムを構築するには手間と時間がかかる覚悟をしてください。HACCPの内容は、あたりまえのことばかりです。理論上、すべての工程でリスクが顕在化することは十分あり得ます。危害要因を、すべて洗い出し、その危害について対策を講ずることは、あたりまえのことです。それをしないで食品を扱うことなど出来ない筈です。
 重要な管理ができていることを保証する管理基準を決定します。製品を作るときに管理基準をつくることも、あたりまえのことです。検査した証拠の記録を残しておくことも必要です。それが、HACCP7原則12手順という、耳慣れない言葉になっているだけです。

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講演資料:HACCP導入は待ったなし~HACCP沿革、HACCP制度化、効率的なHACCP構築~より

120万事業者が、いっせいにHACCPを導入

 日本では、どのぐらいの事業者がHACCP法制化の対象になるかというと、厚生労働省は「食品製造業、食品卸業、小売業、飲食業と、業のつくところは全部行います」といっていますので、食品冷蔵冷凍倉庫業と食品輸送業なども含めると、120万事業者がHACCP法制化の対象となります。
 HACCPシステムの構築には手間と時間がかかります。HACCP法制化は決まっているのですから、1日も早くHACCPシステム構築に着手しましょう。

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