食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

2019年5月22日に東京で開催しました「新緑ITフェア2019」イベントでの講演「食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)」についてレポートいたします。

樋口 武久 氏

▲ 有限会社テイク・アソシエ
代表取締役
樋口 武久 氏

 2000年のデパ地下ブームがあり、女性の社会進出やライフスタイルの変化などによって、贈答品から日常品へとニーズが変わり、品ぞろえの多様化、スイーツ・惣菜マーケットの拡大など、食料品マーケットは大きく様変わりしました。また、2005年にはエキナカ1号店ができ約10年間で食料品マーケットは成長をとげた一方で昨今では飽和状態になっております。

 本セミナーでは、13年間のコンサルティング経験を踏まえ、売り場づくりや商品ブランディングの成功事例を解説致します。

1.商業施設における新しい時代のスイーツトレンド

改革迫られる「平成時代に生まれた食文化」

 平成時代、女性の社会進出・男女共稼ぎによるライフスタイルの変化でデパ地下、エキナカといった食物販マーケットが生まれました。惣菜・スイーツを中心とした中食による食文化も完全に定着。この20年間の主役は間違いなく、お惣菜、中食であり、スイーツでした。

 ただ、お惣菜とスイーツは郊外型駅ビル、SC、GMSなどへと広く波及し、各施設の専門性の向上、グルメ化などにより、マーケット全体は同質化による飽和状態が続いています。専門性、嗜好性、付加価値(価格面、ハレの日需要など)を生かし、次の時代に向けた改革が迫られているわけです。

改革迫られる「平成時代に生まれた食文化」

食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

商業施設における新しい時代のスイーツトレンド

 ひと言でスイーツといっても、焼き菓子を売っている店があったり、和菓子屋があったり、いろいろなジャンルがあります。生ケーキは「デパ地下時代」の牽引役でしたが、近年は市場が縮小・衰退しつつあります。明らかに自家需要よりプチギフト、手土産(日常のギフト)需要のほうが大きい。逆にいえば、生ケーキも生き残りを図るなら、そうしたトレンドの変化に応える必要があります。

商業施設における新しい時代のスイーツトレンド

食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

カットケーキのアソートは見栄えのおしゃれ感に欠ける

 最近、いろいろなところで「生ケーキは売れない」という話を聞きます。生ケーキは見栄えのおしゃれ感に欠け、ギフト性に乏しい。日持ちがしませんから、残れば全部ロスになるリスクもあります。非常に繁盛しているお店でも品揃えが少ないことがあります。

従来のおやつがギフト化している例

参考:食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

生ケーキが厳しくなった理由

 デパ地下やエキナカ時代の象徴でもある生ケーキが売れなくなった理由は何でしょうか。それはギフトにならないからです。家庭や親戚、気のおけない友人に買っていくのであれば何の問題もないのですが、そのマーケットは、たかが知れています。残念ながら、この体裁では他人にあげる手土産にはなりません。

従来のおやつがギフト化している事例

 最近はチーズタルトやリンゴパイなど、本来は、おやつとして売られていたものが、お土産、ギフトとして購入されるようになりました。特に女性が持参する場合、こじゃれており、味はよく、気軽に食べられるものでなければなりません。おやつとして売りながら、手土産としても重宝する。そうしたものがヒットしています。

テーマ性と統一感が高い生菓子

 日本橋高島屋のオードリーという、イチゴをテーマにしたデザートとギフトの繁盛店では、生ケーキもありますが、統一性があり、自家需要はもちろん、ギフトシーンにも適しています。こうした統一性の高いものを個数限定で買う消費行動が増えています。

季節感と限定感が強い生菓子

 同じ会社のファウンドリーというブランドでは季節の一番果実に焦点をしぼっています。イチゴからメロン、メロンからビワへ。旬の果物を取り上げ、統一感を持って、商品の幅を余り広げず、自家消費と、ちょっとした手土産ギフトを両立させています。

均一感・デザイン性・シンプルテイストを備えたトレンド生菓子

参考:食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

均一感・デザイン性・シンプルテイストを備えたトレンド生菓子1

 日本橋高島屋新館のPARIYAは私がデパ地下時代に初めて入っていただいた店です。若々しいお客さまをターゲットに、デザート・ケーキも店内で調整、イートインを取り入れるとともに、テイクアウト用に販売しています。

均一感・デザイン性・シンプルテイストを備えたトレンド生菓子2

 手土産市場も上手に捉えており、実際にスタッフに買ってもらったところ、バラバラ感がなく、統一されていました。手もかかっており、手土産として重宝されています。1個用の箱も用意しており、1人に差し上げるシーンにも対応しています。

 同一の商品が利用シーンで使い分けられる。これが最近の傾向です。従来、ケーキは自家用、フィナンシェやマドレーヌがギフト用とアイテム自体が分かれていましたが、最近は境目がなくなってきました。

新しい東京みやげ

 最近、気になっているのがプレスバターサンドとベイクサンドです。プレスバターサンドは東京駅構内に1号店、池袋駅の中央通路に2号店を出店、いつも長い行列があります。ニューヨークパーフェクトチーズも東京駅の改札内でスタートし、京王百貨店新宿店に出店、ここも欠品が相次ぐ人気店です。

 かつて土産ものは「東京〇〇」と名づけられることが多かった。ところが、新しい東京みやげは「東京」がつきません。東京というブランドではなく、クオリティやファッション性の高さが支持されています。先日も東京駅地下に「東京」がつかないギフトショップが2店出店しました。

2.惣菜売り場の日常(平日)の利用シーンを重視する

惣菜売り場の日常(平日)の利用シーンを重視する

 ターミナルの百貨店、駅ビル、エキナカなどで、お持ち帰りの惣菜が非常に高い売上効率を上げています。惣菜専門店の強みの1つ目は「出来立て」であることです。店内の厨房・キッチンで調理されたものをタイムリーに提供する。18~19時のお勤め帰りに、お惣菜を買う層をターゲットとしています。ピーク時に合わせた限定商品などの仕掛けもしやすいというメリットもあります。

 2つ目は豊かな献立です。忙しいから何でもいいというわけではなく、栄養のバランスや好き嫌い、値段などを考慮に入れながら購入する。家庭ではつくれない、ひと手間かかっているものを選ぶ傾向があります。

 3つ目はバラエティーに富んでいることです。コロッケだけ、サラダだけでおしまいとはならない。お客さまは組み合わせやチョイス、ペアリングなどを重視します。そのためには、いろいろな選択肢を用意する必要があります。

惣菜売り場の日常(平日)の利用シーンを重視する

食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

からあげのボリューム&バリュー販売

 からあげなどの惣菜は付加価値をつけて売ってきましたが、今やボリュームとバリュー感で勝負するお店も少なくありません。ボリュームとバリュー感を出していかないと、競争に勝ち残れないという側面もあります。

仕掛けの早いボリューム陳列

 平日の午後2時にボリューム陳列するお店もあります。この時間、お客さまは多くはないので、1~2時間で売り切れることはありません。それでも出しているのはパートが午後5時には帰ってしまうからです。どうしても、つくりおきせざるを得ません。「出来立てのものがある」という消費者の期待感からはズレています。

仕掛けの早いボリューム陳列

参考:食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

デパ地下専門店でのピークタイムでの見切り販売

 都心一等地のデパ地下でも、ピークタイムで200円引きという、バリューのマーケットのような光景が見られるようになりました。「出来立て」「豊かな献立」「バラエティー豊か」という根本が揺らいでいます。

ヤオコー:デパ地下惣菜を意識したスーパー

 惣菜に力を入れているスーパーの台頭も脅威です。最近、話題になっているのは2018年9月にオープンした新浦安のヤオコーです。主役として力を入れているのは惣菜。盛り付けやメニュー、ビジュアルが専門店に非常に近づいてきました。

ヤオコー:「サラダのごはん」シリーズと「食べるスープ」シリーズ

 サラダやスープなども含めて品揃えが多彩です。糖質カットなども工夫し、「しらたき入りごはん」をローストビーフ丼や野菜寿司に使用しています。

東急ストア:グローサラント型新業態

 2018年、渋谷のストリーム2階にコンパクトな東急ストアが出店しました。都市型のスーパーで、40坪程度しかありません、面積の半分以上がお惣菜売り場です。お勤め帰りをターゲットにしています。今後、出店する小型のスーパーの主役は惣菜です。ますます競争が激しくなると感じています。

参考事例1 日常的な家庭惣菜をきめ細かに品揃え

 パルコ調布店にある和惣菜のお店です。値段もこなれており、煮物や和え物、きんぴら、ひじきなどの家庭の味を提供しています。

参考事例2 イートインとキッチンが連動

 韓国料理のお店で、イートインを併設しています。その場でタイムリーに食べられるので、つくりだめを、ある程度防ぐことができます。

参考事例3 パッケージ販売による品揃えと専門性の充実

 デパ地下の専門店でも、オールパッケージングの店が増えています。従来は量り売りだったり、お客様のオーダーを受けてから売ったりが主でしたが、オールパッケージングの商品が増えてきました。

 お惣菜に関しては専門店が、いろいろな付加価値をつけることで圧倒的に支持されてきました。今後はサービスや販売員の配置の仕方、製造時間など、いろいろ考えていかないと、世の中の構造や消費行動が大きく変化したときに取り残される危険性があります。

3.衣食住「ライフスタイル型食品編集」とは

衣食住「ライフスタイル型食品編集」とは

 最近、ライフスタイル型というか、衣食住を一つの編集にした売り場・業態が多く登場しています。その背景の1つは働き方改革です。時間が多様化し、人が集まりにくくなりました。2つは平成時代のデパ地下は非日常・ハレの空間で、スイーツも非日常的なハレのメニューが売れましたが、今はシンプルでスマートなものに対する支持が強くなってきました。3つは食生活が広がり、生活観・価値観も大きく変化しています。

衣食住「ライフスタイル型食品編集」とは

食物販マーケッターによる ”売れる”商品・売り場作り実践事例 (惣菜、スイーツ)

パルコ錦糸町店:1階に雑貨、アパレル、食を編集

 錦糸町のパルコでは1階に雑貨、アパレル、食を編集しています。ファッション業界の事情だけでなく、食のライフスタイルの変化を見据え、食を巻き込みながら、お客様を、どのように活性化させるかを考えているのではないかと思います。

無印良品の世界旗艦店・銀座店

 今、非常に注目しているのは無印良品銀座店です。最近は衣食住の中でも特に食にも力を入れているブランドだと認識しています。1階は全部、食です。ベーカリーの焼き立てパンやデイリーな野菜を置いています。

無印良品銀座店:弁当コーナーも充実

 お惣菜、弁当にも力を入れ、弁当コーナーでは日替わり弁当を豊富に用意しています。

無印良品銀座店:フレッシュジュース・ソフトクリームコーナー

 ジューススタンドはオーダーを受けてから絞っています。つくりおきではありません。飲食・ファッション・テイクアウト関係者にとって、今現在の無印良品の「編集」は非常に興味深い。目を離せません。

AKOMEYA TOKYO in Lakagu

 神楽坂にあるAKOMEYAの旗艦店です。お米を中心としたセレクトのクロサリーで、ちょっとしたギフトとして重宝に使われています。米の量り売りをしているほか、キッチン雑貨、食器類、調味料類も扱っています。

AKOMEYA TOKYO in Lakagu:カフェ

 カフェもあり、スイーツを食し、お茶を飲みながら、時間滞留ができるライフスタイル型の施設です。九州の白玉屋とコラボし、和の甘味屋も併設しています。

AKOMEYA TOKYO 丸ビル店

 その一方、2019年3月、丸ビルに出店しました。オフィスビルですから、惣菜、お弁当に力を入れながら、食関連の雑貨、ギフトを中心に品揃えしています。

衣食住を巻き込んだ編集

 最近開業した銀座ロフトやODAKYU湘南GATEといった専門店も衣食住を巻き込んだ編集を行っています。今後も衣食住のライフスタイルで売り場全体を組み立てるライフステイル編集型の事例も、もっとたくさん出てくるのではないでしょうか。

 講師ご紹介 

有限会社テイク・アソシエ 代表取締役
樋口 武久 氏

樋口 武久 氏

【 講師プロフィール 】
1978年東急百貨店入社。
食料品売り場の現場一筋で25年間キャリアを磨く。2000年4月に渋谷東横店「東急フードショー」を開業。デパ地下仕掛け人・全国的ブームの火付け役として食物販マーケットの活性化に努めた。
「東急フードショー」統括マネージャー、「東横のれん街」改装計画プロジェクトリーダーの経験を積み上げ、2003年6月東急百貨店を退職。
同年10月有限会社テイク・アソシエを設立。
同年10月JR東日本ステーションリテイリングによる「エキナカ開発プロジェクト」の外部スタッフとして、エキュート大宮、エキュート品川、エキュート立川、エキュート東京の開発に参加。
さまざまな大手デベロッパーによる都市型商業施設開発のプロジェクト計画や、デパ地下改装、惣菜・菓子メーカーを中心としたブランド支援・現場支援活動を数多く手掛ける。

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