海外決済手続きについて

海外取引における決済方法

 海外との取引は外国の取引相手なので与信の問題、また外貨で決済する場合もあり国内決済よりもリスクが高いことは否めません。海外への売込みに成功して大きな成約案件が実現しても、最終的に代金を100%回収できなければビジネスは成功したとは言えません。海外決済は国内決済にはない仕組みもあります。

長い歴史を持った伝統的な決済方法だけでなく、最近はAI技術を応用した銀行を介在しないオンライン決済も出現しています。取引金額が少ない場合、例えば、クレジットカード支払いに近い「ノリ」かもしれませんが、為替手数料・送金手数料等を節約する為、TransferWise(トランスファーワイズ)、WorldRemit(ワールドレミット)、 PayPal( ペイパル) などが使われるケースも出て来ています。実際に送金を行うことなく、銀行を通さずに国際間の資金勘定持高調整(付替)だけで済ますことで、手数料削減を実現していると言われています。どういう決済手段を選択するかは、取引形態、決済金額、手数料等によって使い分ける必要があります。

送金決済

 電信送金(Telegraphic Transfer)は簡易で国内送金と同じような手続きで取引先の銀行口座へ振り込む方法です。国内送金と大きく違うところは外国通貨を使う場合もあることです。

取引決済にドルやユーロなど外貨を使用した場合は日本側が為替リスクを負います。外貨と日本円の交換レートは毎日変動しています。支払い・入金のタイミングにより決済時点で円安傾向の場合は決済金額がより大きくなります。すなわち円安、円高により送金額が異なることを為替リスクと呼びます。これを避けるためには日本円で決済すればいいわけです。この場合、外貨リスクは外国の取引相手が負うことになります。

信頼度が高まりハードカレンシー(国際決済通貨)の仲間入りした日本円も海外決済に普通に使われるようになりました。売買契約交渉のときに日本円決済にすることを提案してみてはいかでしょうか。

 送金決済は銀行手数料も比較的安く手続きも簡単なことから、頻繁に行われ、金額が大きくない小口取引などによく使われています。デメリットとしては前払い、後払いとなるので売主、買主のどちらかに不安感の偏りがあることです。送金決済と船積はそれぞれ独立した動きになってしまいますが、本支店やグループ会社間など信頼関係があれば使いやすい手段です。一般的な取引で言いますと、国内売では後払いが多いですが、海外売の場合は前払いが基本です。初めて海外取引をして失敗する代表例としましては後払いを受ける予定が結果として不払いになってしまい代金を回収できないというトラブルに巻き込まれるケースなどがあります。

信用状無し荷為替手形決済

 国内で一般的に使われる約束手形は、支払人が受取人に発行し支払いの約束文言を入れた手形であり、いわば支払確約書です。海外決済では国内取引にはない為替手形を使用します。これは約束手形と逆の役割をする手形です。つまり、受取人が支払人に発行し期日まで金額を支払うよう要請する文言が入っています。請求書のような役割をするのが為替手形なのです。為替手形が一覧払の場合はD/P決済(Documentsagainst Payment)、為替手形が期限付の場合はD/A決済(Documents against Acceptance)と呼ばれますが、原則として売主はこの手形を銀行経由の取立によって代わり金の入金を受けます。手形に(銀行)保証などがついていないので銀行が手形の買取に応じてくれないこともあるからです。

 売主は船積出荷後に船会社より船荷証券(B/L Bill of Lading)を受領します。この書類は権利証券であり貨物引換券のようなものです。船荷証券は最終的に買主が入手し貨物が港に到着した頃に船会社に原本を提示すると貨物を引き取れます。従って担保能力のある有価証券でもあるわけです。この性質を利用して決済に利用されます。

荷(船荷証券)+ 為替手形(請求書)=荷為替手形

 売主はこの荷為替手形に船積書類を添付して取引銀行に取立を依頼します。船積書類とは主に通関手続きに必要な書類でインボイス、パッキングリスト、海上貨物保険証、原産地証明書などが含まれます。荷為替手形は買主の取引銀行に回送され、支払人である買主に提示されます。買主は代金を支払いと引き換えに荷為替手形を受け取ります。そして書類の中から船荷証券を取り出し船会社に提出すると貨物を引き渡してもらえます。支払われた代金は逆の経路で最終的には為替手形を発行した売主が受領します。

信用状決済

 信用状付荷為替手形は、国内取引にはない伝統的な海外決済方法で売主、買主の両者に最も安全度が高いと言われています。荷為替手形は船荷証券を含む船積書類と引き換えなので送金決済よりは安全です。しかし信用状無しの場合は上記の通り通常は取立なので売主にとっては、代金回収までに時間が掛かる、また荷為替手形買取を拒絶された場合には売主に手形は返却されるが貨物は既に出荷済みというリスクがあります。

 そこで銀行が仲介して売主、買主が安心して代金決済ができる決済方法が信用状決済です。

信用状とは「買主の取引銀行による売主への支払い保証書」です。すなわち買主の取引銀行が売主に信用状に記載された条件通りの書類を提示することにより買主に代わって代金支払いを保証する確約書です。正式には荷為替信用状Documentary Letter of Creditと呼びますが荷為替手形を利用します。荷為替手形+信用状というイメージです。売主は船積後に荷為替手形を作成して信用状を添付して買取銀行Negotiating Bankへ持ち込みます。前述の通り、信用状のついていない荷為替手形の場合は取立なので入金までに時間差がありました。信用状付きの場合は買取銀行が書類に問題がなければ買い取ってくれます。

 信用状発行銀行Issuing Bankは買主の依頼に基づき信用状を開設するのでOpening Bankとも呼ばれます。信用状に記載された条件を満たした書類が売主から提出されさえすれば、売主に対して代金の支払いを保証します、これを「条件付確約」と言います。
信用状決済のメリットは売主、買主の双方にあります。

売主:銀行が支払いを保証しているので代金回収の不安がなくなる。代金の回収が早い。
買主:代金を払うのは出荷後でよい。契約通りの船積を実行させることができる。

 信用状はその性格上、いったん開設されると取り消し不能になります。内容の変更もできません。例外として利害当事者全員、すなわち売主、買主、発行銀行の全員の同意があれば取消、修正も可能です。

 信用状は発行銀行から通知銀行Advising Bankへ送られます。売主は信用状到着の通知を受けてから、条件付確約の指示通りの船積手配を実行します。条件は非常に厳格で、例えば、遅船のため船荷証券の日付が1日ずれただけでも代金不払い(Unpaid)になります。これが厳格一致の原則と言われるもので書類に不一致(ディスクレ)があると買取ではなく取立扱いになる場合もあります。但し、手形の取立ではなく買取になるということは、国内取引でも手形割引の場合は金利分が差し引かれるのと同じでその分入金額が少なくなります。従って、金利分は差し引かれないように、しかも取立の場合よりは少しよりは入金が早くなるようにということでP.P.ネゴ扱い(PostPayment Negotitaion)等が利用されたりもします。いずれにしろ信用状取引は手数料が多くかかるという難点もあります。

 ただ、売主は代金を前払いでもなく、後払いでもなく貨物の出荷後にすぐ回収できます。買手は条件付確約を付けて、厳しく契約条件通りの船積を実行させることができます。信用状決済は他の決済方法よりも複雑で、発行を依頼する買主は発行銀行に対する与信枠も十分必要になってきます。また、繰り返しになりますが手数料も多くかかるので、比較的金額の大きい取引に使用されます。

信用状決済(買主のアクション)

信用状決済(売主のアクション)


千田昌明氏 執筆者 

株式会社トレードタックスウェストジャパン
代表取締役
千田 昌明 氏

【経歴】
三菱銀行(外為・法人新規など)を皮切りにアパレルメーカー(取締役)と機械メーカー(買収した米国会社のCFOなど)の合計3社でサラリーマンを経験
独立して米国やタイを中心に国際税務・税関のコンプライアンスを中心に活動
貿易を通じてアフリカの経済的自立を持続的にサポートするため一般社団法人JETICを設立、理事に就任
【資格など】
米国公認会計士 (USCPA)、米国税理士(EA)、AIBA(貿易アドバイザー協会)認定貿易アドバイザー、JUSCPA西日本部会長、通関士有資格者、輸入食品衛生管理者、日本拳法 三段、英語落語(芸名 Doraku)

弓場俊也氏 執筆者 

弓場 俊也 氏

総合商社のイタリア駐在を経て独立、貿易コンサルタントとして海外取引先との交渉及び業務連絡、輸出入手続(通関士資格保有)、海外見本市出展準備、海外買付業務、国際契約の交渉から締結まで、国内外企業の顧問、貿易部門の立ち上げ、社内研修、ビジネス通訳・翻訳(日本語⇔英語・イタリア語)、貿易実務等を業務とする。大阪市立大学非常勤講師、JETRO神戸貿易アドバイザー

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