Codex HACCP 2020最新版に準拠!! セクション1. HACCP原則編2:必須管理点(CCP)の決定

はじめに

 前回、CodexのHACCP原則1につきましてCodex 「食品衛生の一般原則」に示されている専門用語の定義に照らして、「ハザード(危害要因)」「ハザード分析」「重大なハザード」「コントロール手段」とは何かについて概説しました。これらを踏まえて今回は「CCP(必須管理点)」とその定義で使用されている専門用語について正しく理解しましょう。

CCPは単なる「重要な管理点」ではない

 CCP(Critical Control Point)の訳語は、厚生省令用語では重要管理点の訳語を充てています(「critical」を重要と訳している)。Codex 定義では「HACCP システムに適用される、重大なハザードをコントロールするために必須(essential)な、1つまたは複数の、コントロール手段となるステップ」としております。必須とは「欠くべからざる」という意味で単なる「重要な」でないことは容易に理解できます。逆に「重要な」と誤解してしまうと“あれもこれも重要だ”となりキリがなくなる恐れがあるので重要管理点の訳語を使う場合には特に気をつけましょう。

 なお、一般原則では「すべてのGHPs(適正衛生規範)は重要(important)である」と序文に記述しており、criticalも重要と訳してしまうと「すべてのGHPsは重要で、それで管理できない場合は重要な管理点を設定する」という意味不明な訳文となってしまいます。

「重大なハザード」⊇「HACCPで取扱う必要があるハザード」

 ハザード分析によって「通常考えて起こり得る」程度にリスクが高いハザードを「重大なハザード」と呼称することと前回は説明しました。今回は「CCP」「HACCP計画」の定義で「重大なハザードのコントロール」という表記が確認できますね。つまりCCP、その実施計画であるHACCP計画で示されるコントロール手段は「重大なハザードのコントロール」のみに限定された管理点であり計画である、と読めます。

 大切なポイントですが、Codexの以前の版(2003年版)まで実は、「重大なハザード」=「HACCPで取扱う必要があるハザード」でした。それは「コントロールする」(動詞)の定義が2020年版で「確立された基準や手順の順守」としている箇所が、旧2003年版では「HACCP計画において確立した基準の遵守」として、“HACCP計画のみに限定”していたためです。ずいぶん鯱張った(しゃちほこばった)理屈っぽい言いかたをするなとお思いでしょうが、実際HACCPはとても理屈(もしくはロジック)っぽいのです。これが2020年版では「適正衛生規範のキーとなる側面」でも説明しているとおり「重大なハザード」=「HACCPで取扱う必要があるハザード」+「より大きな注意が必要な衛生管理が求められるハザード」となりました。大事なところなので以降、折に触れて繰り返し説明します。

HACCP計画(インプット)とシステム(そのアウトプット)

 ここで計画とシステムの関係をおさえておきます。上述の通り「HACCP計画」はCCPとしたコントロール手段(すなわち重大なハザードのコントロールのみに限定された)の計画を文書化したものです。HACCP原則に従いますから次回以降の各原則(3~7)を正しくご理解いただくことが基本となります。

 そして「HACCPシステム」の定義ですがこれは2020年版で新規追加となった用語です。とはいえ、2003年版以前も「HACCPシステム」の単語は使用されていました。改めて定義を明確化しておくべきと考えられたのでしょう。「system」という単語は「組み立てた物」を意味する古代ギリシア語σύστημα(スュステーマ)を語源とします。ぴったりくる訳語がなく用途によって、組織系統、機構、制度、支配体制、(学問・思想など)体系、通信・輸送網、系統、器官などと訳されます。「複雑な要素から構成されながら一つなぎの系統的な統一体を作っている状態」とでも言えば良いでしょうか。

 HACCPシステムには、「HACCP 計画の開発」と「HACCP計画に従った手順の実施」の2側面があります。開発し、実施するというマネジメント行為の総体、いってみればインプット⇔アウトプットの状態をHACCPシステムと呼んでいるわけです。

プロセス(工程)のステップ(段階)を定義する

 CCP定義にある「ステップ」にも定義があります。ステップは一次生産から最終消費までフードチェーン全体を対象としていますが実際にコントロールすることができるのは自施設のステップとなります。ステップの範囲は小さいものから順にポイント、手順、オペレーションまたはステージと並べられ、一次生産などでは生体を取り扱うためたとえば栽培→収穫→農産物取扱いといったふうに生産農場でのプロセスを大きくステージで捉える場合が多いでしょう。ステップの範囲は施設ごと適切なレベルで定義するべきであり、あまり細かいポイントをステップとすれば全体のフローが見えなくなる恐れがある一方であまり大まかなオペレーションのくくりにしてしまうと、今度は外してはいけないハザードやコントロールを見逃すので注意が必要です。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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