Codex HACCP 2020最新版に準拠!! セクション1. HACCP原則編1:ハザード分析とコントロール手段

Codex HACCP 2020最新版に準拠!!  セクション1. HACCP原則編1:ハザード分析とコントロール手段

はじめに

 前回、全体像をお示ししたCodexのHACCP 7原則は、「食品衛生の一般原則」で使用される数々の専門用語で構成されています。専門用語は一つひとつ明確に「定義」されていて、この理解なしに原則の正確な理解はかないません。HACCPシステムを現場にどう適用するかを解説する前に、この原則で使用される専門用語の意味をできるだけていねいにご説明いたしましょう。

 ここからは、改正食品衛生法ですべての食品等事業者に求められる「HACCPに沿った衛生管理」のうち「HACCP原則に基づいた衛生管理」では、本回から数回にわたり解説する7原則すべてが必須の要求事項として適用されなければならないことを念頭に読み進めてください。まずは「原則1 ハザード分析を実施し、コントロール手段を特定する」から理解を進めていきましょう。

ハザードなどHACCP訳語の不統一があること

“ハザード”(危害要因)の語は“出たとこ勝負のサイコロの目”に由来していて、食品安全のみ(すなわち、健康に悪影響を及ぼす)に限定した用語であることを第4回で解説しましたね。この“ハザード”(hazard)の訳語にここでは「危害要因」の日本語を充てていますが、厚生省令用語(1995年制定)では「危害」の語が充てられていました。【定義】をご覧いただいてわかる通りあくまでも「危害(健康悪影響;adverse health effect)を及ぼす要因(agent)」の意であり、2003年に設立された食品安全委員会も食品安全用語集で「危害要因」を訳語に充てることとなり、その後は厚生労働省も省令用語にこだわらず“ハザード”の訳語に「危害要因」を使用しています。本連載では必要に応じて、厚生省令用語を併記しつつも法規制HACCPと民間認証HACCP、海外輸出での食品安全規制との整合化に配慮した解説を努めますことご理解を賜りたく存じます。

 厚生労働省としても2013年から実施された「食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会」(HACCP普及検討会)において省令用語よりもCodex定義の理解を醸成することが大切であるとしております。

原材料、環境、プロセス、製品の仕様に特有のハザードを特定すること

“ハザード”(危害要因)はざっくり、“生物学的”“化学的”“物理的”な要因に大別されます。国によってはこれに“放射線学的”ハザードを加える(例えば、米国)場合があります。“生物学的”ハザードはさらに、細菌(HACCPのメインターゲット)、ウイルス、寄生虫、原虫に大別されます。“化学的”ハザードは、天然毒素、残留農薬・抗生物質、重金属等の環境汚染物質、製造・調理現場での洗剤等薬剤、非食品グレードの包材・潤滑油等及びアレルゲンが挙げられます。“物理的”では金属片、ガラス片、骨片、木片等の口中を切ったり歯欠けしたりなど原因となる“硬質異物”と、お餅やこんにゃくゼリー、飴玉等で被害者の絶えない“窒息ハザード”に大別されます。

 これらハザードは、原材料、環境、プロセス、製品の仕様に特有な場合が多くあります。裏を返せばすべての食品ですべてのハザードに対処しなければならないということはなく、特有のハザードにのみ“知識と経験を結集”できるのがHACCPの利点であると前回、解説したところでしたね。

HACCPで対応しない品質ハザード、そして意図的混入

 機会があれば改めて解説しますが食品安全の保証をトータルで考えた時に、品質上の適切性や、犯罪者から意図的な混入の攻撃を受ける脆弱性は、食品安全とまったく無関係とは言い切れません。しかし、この両者ともHACCPで取扱わないのはなぜか、理解しておく必要があります。

 まず品質ですがこれは、原材料、環境、プロセス、製品の仕様ではなく、「顧客の要求事項」に特有と捉えることができます。したがってCodexの目指す国際取引の基準ではなく、ターゲット顧客に認められる企業努力の範囲と考えることができます。

 また意図的混入は、攻撃者の意図により例えばサリン、サルモネラ菌、炭そ菌、VXガス、農薬剤など、そもそもハザードを特定できません。そこで攻撃者のアクセスのしやすさや、攻撃による効果の高さをリスクとして特定する必要があり食品防御というHACCPとは違う“リスクの物差し”で捉える必要があります。

重大なハザードとコントロール手段

 ハザード分析によって「通常考えて起こり得る」程度にリスクが高いとした潜在的ハザードを「重大なハザード」と呼称します。この特定された重大なハザードは必ずコントロール手段を有していることが必須の要求事項となります。

 コントロール手段には、予防(重大なハザードをそもそもインプットしない)、排除(重大なハザードを完全除去する)、許容可能レベルまで低減する(排除できないまでも出荷後の取扱いや意図する用途を考慮して誤用の可能性も含めて)に大別されます。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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