食品施設の設計デザインや設備も国際化対応へ

食品施設の設計デザインや設備も国際化対応へ

はじめに

 前回は食品衛生法改正の柱の1つ、営業許可制度改正のための“新施設基準”についてCodex「食品衛生の一般原則」に準拠した“なぜ”を基本としたリスクベースの基準改正、また施設基準とHACCP制度化はわけて考える必要があり、むしろ現状の施設・設備の問題をオペレーションの工夫により解決可能であることを具体例でお示ししました。すなわち施設とオペレーションは車の両輪なわけです。

立地の潜在的な汚染源を考えよう

 とはいえ施設基準の国際的な準拠はHACCPに沿った衛生管理を容易にします。施設設備に投資する、増設や改変、もしくは新規施設の建設にあってあらかじめ国際標準を知っておくことは導入後に新たなオペレーション上のコスト負担を発生させない意味で“賢い選択”となるでしょう。ではCodexの一般原則から新設備基準の考え方を紐解きましょう。

 Codexではそもそも立地の段階から、潜在的な汚染源を考慮した場合に、保護手段を取った場合でも食品安全性及び適切性に脅威のある場所に食品施設を設置しないこと。及び、機器は適正衛生規範の実施を容易にする立地を考慮することを要求しています。

 機器も同様で食品を保護するために十分なメインテナンスやクリーニングができるスペースの確保と、機器の用途を考慮した場所や空間を設計段階から考えていただきたいところです。

ヒト・モノ・空気は汚染の伝達者

 施設内部の設計及びレイアウトについては、交差汚染からの保護も含めた適正衛生規範の実施可能性、内部構造の耐久性、クリーニングの容易さ、埃や結露水、ペスト、薬品耐性等への考慮が求められます。新規の設備投資では可能な限りこうした問題を解決していただく、その理由は汚染の伝達者を制御することにあります。

 食品はワンウェイで原材料から製品への2次汚染が起こらない設計であることが理想ですし、床の水撥ねが食品を汚染させないように十分な高さまで不浸透性材料であったり、またはそもそもドライ設計であったりすること、食品製造に対して十分な排気(静圧まで考慮した)が可能でそもそも結露可能性を下げていたり、ペストが入りにくい設計や薬品の専用保管庫などが必要となります。これらは汚染を運ぶ要因を一つひとつ考慮したものです。

 お祭りの屋台や最近流行りのキッチンカー、もしくは調理型の自動販売機、さらにはジビエのと畜車両でも交差汚染の予防は同様に要求されますが排水設備や床・壁面の不浸透性などいくつかの適用除外もあります。

装置サニタリー設計は日本の課題

 欧米のHACCP義務化されている諸国では、製造・調理機器のサニタリー設計が進んでいます。日本の食品製造・調理機器においても今後はクリーニングしやすい、または複雑な構造の機器であれば分解洗浄しやすい、また必要に応じて移動可能である、耐久性がある、分解するなどしてペストの調査がしやすい等が求められてくるでしょう。

 こうした一般的な要求事項に加えて、食品の調理や加熱処理、冷却、保管、冷凍等の温度コントロールにかかわる機器では、必要な食品温度が可能な限り迅速に達成され、効果的に維持できるよう設計されるべきで、そうした機器では温度モニターができコントロール可能なよう設計されるべきです。また湿度や空気の流れ、その他の食品安全性・適切性に影響し得る特性も配慮が必要です。

 廃棄物や副産物、あるいは薬品等の不可触物質の保管については明確に区別され、漏れ出ることのない構造であること。食品の故意または偶発的な汚染を予防するために適切な場合には施錠可能であることが求められます。

設備の要求事項について

水の供給

食品製造用水(いわゆる飲用適水)の適格な供給、飲用不適水との分別、分離、逆流防止。

排水及び廃棄物

食品・飲用水を汚染するリスクを避けられるよう設計・構築された適格なシステム及び設備。

クリーニング

食品や器具・装置のクリーニング目的に適する設計の適格な設備。適切な場合には適温水(熱水または冷水)の供給が可能な設備。

従事者衛生

個人衛生を適切な範囲で維持管理できる、食品への汚染を確実に避ける衛生設備。適切な場合には手洗い用の適温水や乾燥手段の供給、適切かつ衛生的設計のトイレ、適格な従事者の更衣設備

温度コントロール

食品オペレーションの性質により食品温度コントロールのためのモニタリング利用可能、また必要な場合には食品の安全性・適切性を確実にする周辺温度コントロールの適格設備。

空調

エアロゾルや結露水による食品汚染を最小化する、周辺温度コントロール、食品の適切性に影響するニオイのコントロール、食品安全性・適切性を確実にするに必要な湿度コントロール、以上のために適格な換気手段。清浄エリアを設定した場合の空気の動線管理(メインテナンス及びクリーニング可能であること)。

照明

衛生的オペレーションが可能な照度。色調を誤るような設備は不可。適切な場合には照明固定具の食品汚染からの保護。

保管

必要性に応じた、食品や原材料及び非食用化学品の適格な設備。食品保管設備はメインテナンス及びクリーニング可能、ペストの侵入及び住みかを避けられる、保管時の汚染を防ぐ効果的手段が採れる、食品の劣化を防ぐ、以上を適切さに応じて設計・構築するべき。保管設備の種類は食品の性質に依存することに留意。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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