Codex2020最新版に準拠!!微生物学的汚染の予防・最小化システムとは -ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その④

はじめに

 ハザードと紐づけられるキーとなる側面として、CCP候補となり得る「7.2.1 時間と温度のコントロール」(前々前回)、「7.2.2 特定のプロセスステップ」(前々回)を解説し、加えて前回は、食品サプライチェーンで取引先間の最も活発なコミュニケーションでもある「7.2.3 微生物学的、物理的、化学的およびアレルゲンの仕様」について紹介しましたね。

微生物学的汚染とは

 今回のテーマである「7.2.4 微生物学的汚染」(Microbiological contamination)で触れられている内容は、多くの人々が食品衛生に対して抱くイメージそのもの、菌を「つけない」行為のことです。ただし、気を付けなければいけないのはここで言っているのは単なる“ばい菌”ではなくて、食べて健康危害を起こし得るハザードとしての“食中毒原因菌”のみを指していることです。

 このセクション7「オペレーションのコントロール」で書かれていることとはすなわち、セクション1「食品ハザードのコントロール」の内容を示したセクションでしたよね。したがって自分たちの製品とプロセスの記述から自覚される微生物学的なハザードを対象として、その食品への汚染を予防または最小化するためのシステムを整備していくということになります。

“何”が“どのように”汚染され得るか?

 微生物学的汚染は、汚染源(病原性微生物)と汚染対象(食品、特に製品)があって媒介者により汚染物の移行があって発生します。これを予防するためには、汚染がどのようなはたらきの仕組み(作用機序)で発生するかを理解しておくことが徹底的に大事です。

 Codexでは「①食品取扱い者による直接的・間接的な接触」「②表面との接触」「③クリーニング装置から」「④飛沫から」「⑤空気中の粒子により」を作用機序として挙げています。このうち2020年版で新たに追加になったのは③および④でした。一つひとつ見ていきましょう。

  1. 食品取扱い者による直接的・間接的な接触 ―

    ノロウイルスや病原性大腸菌は従事者自身が保菌者である場合、汚染を持ちこむ直接的な要因になり得る。加えて原料や環境などの汚染を間接的に製品へ移行させる伝達者としての役割がある。

  2. 表面との接触 ―

    施設・設備、容器、器具・備品の食品接触面は、汚染されたものと汚染されてはいけないものの間で共有された場合に汚染の伝達者となる。

  3. クリーニング装置から ―

    汚染を除去する役割を担うクリーニング装置(ブラシやモップ、クロスだけでなくエアーシャワーや食洗機などのクリーニング機械も含まれる)は洗浄・殺菌されていない場合、クリーニング装置自身が汚染の伝達者となり得る。

  4. 飛沫から ―

    施設がドライ床でない場合にウェットな床からの跳ね水が届く高さに食品や食品接触面がある場合、となり合う作業での距離が問題になり得る。洗浄用の流水も考慮するべきであろう。飛沫は①と重なるがヒト自身が分泌する唾や鼻水、または手撥ね水もあるかもしれない。

  5. 空気中の粒子により ―

    約38nmのノロウイルスほど極小だと乾燥下で空気中に浮遊する。細菌は約1~5μm、カビ胞子は約5μm以上の大きさだが、たとえば結露水、小麦粉等の粉体原料のような粒子にくっつけば空気中を自由に移動して汚染の原因になり得る。

  6. “なぜ”を前提にした衛生管理措置

     “何”が“どのように”汚染され得るかを知れば、汚染源と汚染対象を切り離す衛生管理措置が製造・調理のオペレーション上で適所に配置されているかどうか評価することも可能でしょう。たとえば、汚染源となる可能性のある、そのまま食べられると見なされない生の未加工食品は、製品と共有する食品接触面の効果的な中間洗浄、適切な場合には効果的な消毒により、物理的・時間的に、そのまま食べられる食品から分離されるべきです。

     特に肉、家きん類、魚など潜在的に高い微生物学的負荷を持つ原材料が取り扱われたり、処理されたりしている場合には、生の食品の取り扱い後には必ず表面、器具、装置、固定具および部品は徹底的にクリーニングし、必要に応じて消毒されることが大切です。

     実現可能な食品オペレーションでは、食品安全の目的のために、加工エリアへのアクセスを制限またはコントロールされている(たとえば清浄区を設ける)ことでしょう。その場合、製品汚染の可能性を考慮して加工エリアへのアクセスは、たとえば適正に設計された更衣施設を経由しなければいけないなどの動線管理をされているかと思います。エリアや動線管理は施設設計で考慮されていないのならばオペレーションにより物理的・時間的に分離する考え方が大切です。動線には原材料・製品の流れだけでなく、ヒトやモノの流れ、空気中の粒子を考える場合は空気の動線まで考慮が必要となります。

     従業員は自身が汚染源になり得ることを、最前線を守る者として自覚し、頭を覆うものやマスク(欧米ではひげマスクもあります)、履物を含む清潔な防護服(施設の他の部署で着用されているものと異なる色のものである可能性もある)を着用し、手を洗い、必要に応じて消毒しましょう。

    杉浦 嘉彦
     執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
    代表取締役社長
    杉浦 嘉彦 氏

    【 講師プロフィール 】
    株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
    一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
    月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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