Codex2020最新版に準拠!!“より注意が必要な一般衛生管理”をモニターする -食品安全ハザードを自覚する その④

はじめに

 「ハザード」の予防のために正しい手順を定めて、それに従っていることでハザード予防のための基準が満たされている状態を保つ必要のある“より注意が必要な一般衛生管理”は「製品の記述」と「プロセスの記述」の有効性をよく考えて評価してリストアップするというお話を前回はいたしました。

なぜモニターと是正措置が必要なの?

 今回はそのリストアップされた“より注意が必要な一般衛生管理”に対して求められる、モニタリングと是正措置についてお話しします。“より注意が必要な一般衛生管理”はハザードを予防、排除、または許容可能レベルまで低減するために採られる措置・活動です。これが正しく実施されていない場合、食品安全上の前提条件が崩れてしまっていることになります。ハザードコントロールのために適用される正しい衛生手順や規範を遵守しているか否かを評価するために、計画された一連のコントロールパラメータを、観察する、あるいは測定するモニターを行う必要があります。

 さらには正しい手順や規範に従っていない状態(これを逸脱といいます)が発生したときには、食品安全上の前提条件が崩れたままではいけませんから、コントロールを再確立する必要があります。影響を受けた製品がある場合にはそれが出荷されることの無いように対策を採らないといけません。

モニタリングの要求事項と実施

 モニタリング方法として決めなければいけないのは責任者、頻度、および該当する場合はサンプリング体制です。たとえば、加熱後包装するまでの“そのまま食べられる食品”を取り扱う食品接触面に対する予防的サニテーションの場合を想定してみます。ハザードは環境病原体、および該当する場合はアレルゲン交差接触が考えられるでしょう。定められているサニテーション標準作業手順を正しく実施できるサニテーション実施者は誰なのか明確にしていただき、サニテーションの頻度を明確化します。頻度はたとえば、クリーニングを昼食休憩時、異なるアレルゲン使用製品の製造後、当日製造終了時に実施とし、さらに消毒を製造開始前、昼食休憩時、異なるアレルゲン使用製品の製造後、当日製造終了時に実施とする。モニタリングでは台上の残渣汚れ、清潔性を点検。また実施前に薬液濃度の測定に試験紙を使用する、といった具合です。この頻度でクリーニング・消毒実施する都度、サニテーション日報に記録を残します。実施者は記録にサインまたはイニシャルを記入するほか、記録の確認をする管理者のサイン(またはイニシャル)も必要です。

是正措置の要求事項と実施

 モニタリングの結果、逸脱が示された場合には是正措置を採ることになります。先述の予防的サニテーションの場合を想定してみます。モニターで食品接触面に残渣汚れが観察された時、ほとんどの場合は食品製造を再開する前に再クリーニング、消毒するだけで済むでしょうし、薬液が正しくない濃度であった時は再度新しい溶液をつくりなおすだけで済みと思われます。これは逸脱ではなく記録を取る必要はありません。こうした逸脱に至る前の対応を「修正」と呼んで「是正措置」とは区別して考えます。

 ところがモニタリングが正しく行われていなかったり、モニタリングの結果、薬液が正しくない濃度であったにもかかわらず製造が再開されてしまい、もしくは検証のための環境調査で実際に環境病原体や指標菌が検出された場合など、出荷前にそのような逸脱が見つかったりした場合、これは食品安全上の前提条件が崩れてしまっていて、出荷する製品の安全性を保証できない状態ですから是正措置が必要となります。

 たとえば、該当するロットの製品出荷を差し止め、記録を見直し、モニター担当者に聞き取りをして安全性/適切性を評価、そのまま流通させて良いのか、それとも廃棄するのか、リワークするのかなど留め置いたロット製品の正しい取り扱いを決定します。ここまでは取り急ぎの短期的な措置です。次に記録の見直しやモニター担当者への聞き取りで、たとえば不適切な従事者がサニテーションを実施していた、モニター担当者がうっかりミスをしてしまった、サニテーション作業への理解不足がみつかった、といった場合には再トレーニングを実施したり、不適切な従事者が業務につかないよう業務ルールの徹底を通知したり、再発防止策を講じることとなります。

 是正措置は、プロセスをコントロール状態に戻し、影響を受けた製品を隔離し、安全性・適切性を評価し、該当ロット製品の正しい処分を決定し、逸脱の原因を特定し、再発予防策を講じるまで一気通貫で責任のある管理者が行い、是正措置記録を取ります。記録にはたとえば記入した日、逸脱した日(できるなら時間も)、対象ロット番号、逸脱の記述、プロセスの正常復帰に採られた行動、行動を取った担当者(サインまたはイニシャル)、逸脱した製品の量、逸脱した製品の評価、製品の最終処分まで記録に残します。またモニタリング記録と同じく、記録の確認をする管理者のサイン(またはイニシャル)も必要です。

検証と記録

 モニタリングも是正措置も、その担当者が正しく実施していなければ食品安全の仕組みは機能できません。うっかりや間違いは誰しもやってしまうことがあり得るし、それがないことまで“見える化”をしないと第三者に証明できません。モニタリングや是正措置が正しく行われたかの“検証”はとても大事な役割を担っており、そのために“記録”は必須です。検証と記録は次回お話しします。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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