HACCP

外部専門家関与と根本原因分析―システムとしての是正(Codex 19.10);HACCP 2022最新版に準拠!!

外部専門家関与と根本原因分析―システムとしての是正(Codex 19.10);HACCP 2022最新版に準拠!!

はじめに

 HACCP12手順の10手順目、HACCP7原則「適用」の第5原則目である「是正措置の確立」について、Codexの「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版に基づいて、その「19.10 是正措置を確立する」(手順10 /原則 5)のではどのように記述されているのか、前々回および前回に続き、逐条解説(3段落目/全4段落)します。

 しつこいように感じられるかもしれませんがやはり「原則」編のレビュー(復習)は欠かせません。「是正措置」の定義である第39回、そして「逸脱」と「コントロール(動詞・名詞)」の第38回、加えて「“より注意が必要な一般衛生管理”での是正措置」についての第17回を再読したうえで下記を読み下していきましょう。

外部専門家による計画変更への関与

 許容限界の“逸脱”により、「コントロールが失われている状態である」ロットを対象として、前回は“短期的処置”について主に現場オペレーションであらかじめ立てられた計画に従い対応可能な“是正”を解説いたしました。

 しかしながら、頻繁に繰り返す逸脱はコントロール手段に誤りがあったかもしれないし、リコールや食中毒は許容限界の誤りの証拠かもしれません。加えて、ハザードそのものの新しい知見や規制値の変更もあるかもしれない。是正措置には、計画にあらかじめ決められた手順に従ってできる「安全性分析」を越えた、マネジメントレベルの判断を要する、システムの見直しから“再発防止”につなげる“改善”も要求事項に含まれます。

 例えば「低温殺菌」は通常、通常殺菌と違ってレア風の品質を目的とした、安全性と品質目標とのギリギリのせめぎあいです。外部専門家の知見によっては、原材料(配合の比率を含む)、加工や包装形態(たとえば含気か真空包装か)の方法、喫食までの期限、消費者の用途(誤用の可能性を含め)等の変更が、ハザードコントロールに変更が必要な場合について、何らかの示唆を与えられる場面が考えられます。

 次に「黄色ブドウ球菌エンテロトキシン」の存在可能性が上述の何らかの“変更”によって、通常考えて起こりうる場合、これは耐熱性毒素なので、いったん産生されてしまえば「煮ても焼いても食えない」となり、“後工程に加熱CCPがあるから”は成り立たず “全廃棄”するしかありません。しかしながら、黄色ブドウ球菌は毒素産生までに相当な菌数まで増殖する必要性があることから、当該ステップでのコントロール手段に止まらず前ステップのコントロール手段に対しても変更の必要性について外部専門家から指摘される可能性があります。

スライド

中長期的措置も‘97年版から国際的議論の遡上にあった

 今回解説する、この第3段落目は全文2020年版改定時に新たに設けられた推奨事項となります。ただし、Codexガイドラインのベースとして開発されていたNACMCF(食品微生物基準全米諮問委員会)の1997年版HACCPガイドラインではすでに、是正措置の4項目(①影響を受ける製品の隔離、②正しい処分を確実にするため安全性分析、③根本原因分析、④再発防止策)が挙げられていました。

 しかし当時のCodex食品衛生部会では時期尚早とそこまでの推奨事項が盛り込まれず、前回解説の“短期的処置”までの記述に止まっていたということになります。思い起こしていただきたいのは、令和では紅麹発酵健康食品のプペルル酸、平成では脱脂粉乳原料加工乳のエンテロトキシン食中毒です。どちらも初期被害やリコールの段階で被害を最小化する道を選択できませんでした。

 裏を返せば2020年版以降Codexは、この1997年版NACMCFのHACCPガイドラインにようやく追いついた、とも読み取れます。正しい歴史をご認知いただくことは身を守る盾にもなり得ます。

“根本原因”をどこまで定義する?

 逸脱と是正措置は科学ベースの食品安全コントロールが失われた場面での根幹となる措置です。上述したように、 是正措置が単なる“短期的処置”に止まらない場合には、HACCP7原則の適用をすべて総動員してシステムそのものを見直す事態にも発展する、結構な経営資源を消費するイベントとなり得ます。それでも、上述した失敗事例のように会社の存続を危うくする事態は避けなければなりません。

 このためにマネジメント層には必ず、根本原因分析(Root Course Analysis)の重要性をご自覚いただく必要があります。たとえ普段の是正措置が“短期的措置”に止まっていたとしても、その頻度があまりにも多くなる、あるいは普段から頻繁である場合、マネジメント層はシステム自体を見直すという職責への自覚をお持ちいただきたいのです。見直しは、CCPの性質によってケースバイケースで、モニタリングシステムが計測機器に依存するなら計測機器の不確実性、現場従事者に依存するなら人の力量の不確実性にリンクします。一方でもっと根本的な製品設計(原材料、加工や包装形態、期限、意図する用途等)から見直すとコントロール手段そのものが不適切である場合も実はよく見受けられます。

 オペレーショナルベースで根本原因を考えるには、第13回のオペレーションコントロール解説が役に立つでしょう。場合によっては、第46回のように前提条件の変化で逸脱頻度が高まるといった事態も想定されます。さらに踏み込むと、頻繁な“短期的処置”を現場に丸投げして根本原因分析をしない形骸的HACCPの根本原因は、第5回にあるマネジメント層の「食品安全文化」の欠如かもしれません。

 根本原因分析の“根本原因”(Root Course)は、現場ごとにずいぶん自由に定義可能な概念ですし、おそらくマネジメント層としてのあなたの“力量”を、もっとも発揮できる領域なのかもしれません。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007~2024年)
国際HACCP同盟認定 トレーナー・オブ・トレーナー
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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