Codex2020最新版に準拠!! 「文書化および記録付け」の範囲とは

Codex2020最新版に準拠!! 「文書化および記録付け」の範囲とは

はじめに

 食品衛生法改正で明確に求められることとなった国際的な食品規格Codexの「食品衛生の一般原則」の解説も、2020年2月掲載から次回で2年半もの長きにわたり続くことになりました。第1~5回で知っておいてほしいよくある誤解や、よく使用する単語の理解、小規模営業者等への適用についてお話をして、第6~12回ではより具体的な一般衛生管理項目について解説してきました。前号でもお伝えした通り第13回からはハザードコントロールに関わる要求事項、Codex2020年版のセクション7「オペレーションのコントロール」について次回(第31回)までかなりの回数をかけて、解説を進めてきました。

 詳細に入っていくにしたがって話は具体的になってきましたが一方で最初の目的を見失い、「木を見て森を見ず」になってはいけません。最初の目的とは、厚生労働省が改正食品衛生法で義務的要求事項として求めている食品の「衛生管理計画」で一般衛生管理をどこからどこまで文書化すればよいのか、それは自身の施設ではどれとどれなのか、というシンプルな質問に回答することです。HACCP法制化が本格施行となって1年でよく聞くお悩みが「手引書通りやってもしっくりこない」「何のためにやっているかわからない」「自社オペレーションとあわない」といったものです。手引書がフィットすればそれで万事OKですがそのような施設ばかりではない、ということでしょう。記録づけがやたらと増えて大事なオペレーションがまわらなくなるのでは本末転倒ではないかというご意見もあろうかと思うのです。

 そこで大事なのが今回解説する「7.4 文書化と記録づけ」です。今後解説する予定の「HACCP原則に基づく衛生管理」はそのHACCPの7原則すべてに文書化と記録づけが義務的に要求されますが、一般衛生管理の「文書化と記録づけ」は簡潔に申し上げる(若干の留意事項はあるものの)とこのセクション7.4に集約されるのです。つまりはセクション7を正確に理解しさえすれば、自施設で一般衛生管理について、「どこからどこまで文書化すればよいのか、それは自身の施設ではどれとどれなのか」というシンプルな質問に自ら回答を導き出し、保健所の衛生監視員や、取引先バイヤーの指摘にも説得力のある説明ができる力量を得られる、ひいては自施設の有効性や保証をシンプルに第三者に示すことができることで新しいビジネスチャンスや高評価を得られる可能性も出てくるということです。

文書化と記録づけの要求事項

 最初に、Codexが求めている文書化および記録付けの要求事項がどこに掲載されているのか確認しましょう。上述したようにHACCPの7原則はすべてに「文書化と記録づけ」が義務付けられます。一方、一般衛生管理については今回の「7.4 文書化と記録づけ」以外で留意すべき項目を挙げると、まず「文書化」について、一般原則6において「コントロール手段」への文書化に言及、これは正にここまで詳細に解説してきたセクション7「オペレーションのコントロール」のことです。次に、「5.1.2 クリーニングおよび消毒の方法と手順」であり、これはいわゆるSSOP(サニテーション標準作業手順)の文書化であります。これについては「5.1.3 有効性のモニタリング」でも再び記述しておりサニテーションの重要性を理解するたすけになります。

 「記録づけ」については「2.2 第一次での衛生的な生産」の動物用医薬品および害虫駆除剤の休薬期間の記録づけ、「3.2.1 排水および廃棄物の処理設備」でのトレーニングされた従事者による廃棄記録づけ、「4.4 再トレーニング」でのトレーニング活動の記録づけが挙げられるのみです。

codex

要求事項をしっかり読み解く

 本題に戻ると、この「7.4 文書化と記録付け」でのCodexの要求は、セクション7のこれ以外の要求事項と比べても極めてシンプルで「食品等事業者のための適切な記録は、製品の賞味期限を超える期間、または所轄官庁が決定した期間、保持されるべきである」の一文が書かれているのみです。Codexが2003年版から2020年版に更新する際に新たに加えたのは「食品事業者等のための」と「または所轄官庁が決定した期間」の2点だけです。逆に、2003年版から消えてしまったのは「文書化は食品安全コントロールシステムの信頼性と効果を高めることができる」の一文です。文書化の効果について記述が無くなったのは少し残念です。

 そこで前後の文脈から書き足すとこうなります。「食品等事業者の食品安全と適切性の証拠として残すべき記録は、ハザードのコントロール手段でありその内容はセクション『7 オペレーションのコントロール』 に示されている。記録の適切な範囲は『7.1 製品/プロセスの記述』を考慮した上で食品の安全性と適切性に対処するのに十分であるかどうか、または一部のなんらかの衛生規範がより大きな注意を必要としているか判断することで導かれる。コントロール手段の例は『7.2 適正衛生規範のキーとなる側面』に列挙されていて、それとは独立して「7.3 水」「7.5 リコール手順‐ 安全でない食品の市場撤去」の記録ルールを定めなければいけない。その記録の保管期間は最低でも期限表示まで、あるいは厚生労働省が定める範囲までとなる」と理解してください。なお、厚生労働省は衛生管理計画の実施記録についていくつかの手引書(ガイダンス)で「1年の保管」を示しています。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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