コラム

Codex HACCP 2020最新版に準拠!! はじめに―そもそもHACCPとは(中編)

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農場HACCPは認められる?、GAPとの関係性は?

 日本の食品衛生法一部改正(2018. 6.13公布)で求められることとなった制度化HACCPは、WHO/FAO合同の食品規格委員会Codexが定める「食品衛生の一般原則」が基本となります。その最新2020年版では第2章にHACCPガイドラインが収載されています。前回に引き続きその序文から、そもそもHACCPとはどういうものかを見ていきましょう。

 HACCP 原則は、第一次生産から最終消費までのいわゆる「フードチェーン」全体のどこでも検討することが可能です。前回も説明した通りHACCPの実施はヒトの健康に対するリスクの科学的な証拠によって導かれるものですから、生き物を取扱う第一次生産の現場では、HACCP を適用することが常に実行可能であるとは限りません。

 しかし、第一次生産においてもいくつかの原則を適用することは可能(第12回を参照)であり、適正規範プログラム(たとえば、適正農業規範(GAP)など)に組込み得ることが一般的に知られています。なお、GAPは食品安全と適切性の実現だけでなく、環境への持続性、労働安全、動物福祉(健康を含む)をも主目的の範囲としています。WHOでは農水畜産物の持続性と食品安全性の実現には相関関係があり、これらをワンセットで実現する“ワンヘルスアプローチ”の大切さを強調しています。また、日本では畜産で適用される「農場HACCP」が推奨されており、これは食品安全と適切性に加え、動物健康が主目的とされています。

HACCP導入への抵抗感と現実の弾力性

 たとえば規模や業態など、ビジネス側の見解として、HACCP実施への困難さを認識されている場面があることは国際的にも知られています。しかしながら一方で、HACCP 原則は個々のオペレーションに弾力的に適用することができることも専門家側の見解として以前から指摘されています。

 このHACCPを特定の現場の状況に合わせて適応させたりするアプローチについては、ビジネス側の困難だとする認識と、専門家側の弾力的に適用できるとする認識をお互いにどこで目線合わせをするのか歴史的には長い議論が続いています。

 通常はおそらく、事業者が外部リソース(コンサルタントなど)を利用することにより解決されることが多いと思われますが、各国の管轄当局が旗を振り、学術機関およびその他権限ある機関(貿易または業界団体など)と協働で、技術検討会を設置して合意形成により定めた一般的なHACCP計画(あるいは衛生管理計画)のモデルあるいは事例を提供するなどが国際的には実施されています。日本でもこのCodexアプローチに従い「手引書」等の業種・業態別ガイドラインの開発が積極的に進められているのは周知のとおりです。

 なおやはり、「手引書」のような“標準モデル”は利便性に相反して、すべてのオペレーションにはフィットしない場合における不適合性もあり、国際的にもよく問題視されてきた歴史があります。あくまでもHACCP 原則は個々のオペレーレョンが自発的に導入することで弾力的に適用可能となることに着目が必要です。

HACCP導入の効果―信頼性確保と商取引機会の増大

 HACCP 実施の効果として、食品安全性を高める結果につながることに同意しない人々はおそらくほとんど存在しませんが、上述したビジネス側でのHACCP実施への困難さから、HACCP導入の効果を明確化してほしい声が国際的にもありCodex食品衛生の一般原則2020年最新版では、ここが丸ごと追記項目となりました。

 すなわち、組織能力の徹底的な分析に基づくより効率的なプロセス、必須エリアに焦点を当てた資源のより効果的な使用、製品リリース前の問題特定によるリコール減少など、その他の経営的に重大な利益をもたらすことが可能であるという一節です。想像してください。たとえば従来の総花的な全方位型の対策と、ハザードやそのリスク対処という明確な目的にクリティカルな戦略と、どちらが効率的かつ効果的であるのか、これは想像に難くないのではないでしょうか。

 実際に、HACCP導入後の経営者の感想は大きく二分されます。「焦点が明確になり効率化が図れた」とするか、「総花的なルールがはびこり不効率が常態化された」という対照的なこの経営者の感想は実のところ、どちらが国際的に通用するHACCP導入を達成できたと言えるのでしょうか。

 HACCP システムの適用は管轄当局(たとえば保健所や生活衛生課など)にとってもレビューを扶け、食品安全性への信頼増加により国際貿易を促進可能であることが付言されています。

 この文節で「レビュー」の語は、前版では「インスペクション」が充てられていました。ここには、自主衛生管理手法HACCPを義務化する時代に「指導から助言へ」という管轄当局の大きな方針転換が背景にあります。保健所も事業者側もまだ認識が薄いのですが、この自主衛生管理の基本姿勢を明確に理解していただくこととHACCPへの理解は不可分なのです。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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