Codex2020最新版に準拠!! アレルゲン管理システムとは ―ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その⑦

Codex2020最新版に準拠!! アレルゲン管理システムとは -ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その⑦

はじめに

 ここまで汚染シリーズ3連続で「7.2.4 微生物学的汚染」、「7.2.5 物理的汚染」、「7.2.6 化学的汚染」を解説してきましたが、今回は似たような作用機序であるものの「汚染」という言葉を使用しない「7.2.7 アレルゲン管理」について解説します。

アレルゲン管理は“汚染”ではない

 食物アレルギーは、世界的に増大している食品安全問題であり、人口の比較的小さな割合に影響を与える可能性がある一方で、そのアレルギー反応は重篤または潜在的に致命的である可能性があり重大です。アレルギー原因物質をアレルゲンといって、それぞれ取扱う食品のアレルゲン性を考慮したシステムの整備の重要性は、食品を取り扱うあらゆる分野で年々、高まっています。

 アレルゲンの場合、これまで解説した微生物学的/物理的/化学的汚染と違い、ある人には健康危害を引き起こすハザードとなるものの、多くの人々にとっては単なる食品でしかなく「汚染」という言い方はなじみません。そのため他のハザード混入と違い、交差汚染という用語もここでは使われず、原材料リストに含まれない別製品のアレルゲンが混入することを「交差接触」といいます。

 アレルゲンは、日本では食品表示基準の別表第14に掲げられた表示義務のある「特定原材料」と、通知「食品表示基準について(別添「アレルゲンを含む食品に関する表示」)」で表示を推奨する「特定原材料に準ずるもの」とに分類して規制されています。この義務・推奨表示される食品分類は、国内の健康被害の状況や頻度を考慮して適宜見直されるため常に最新の法律の確認が必須であり、さらに海外に輸出される食品は輸出先国の法律を順守する必要があるため事前確認が欠かせません。

 たとえば米国では表示義務のあるアレルゲンをビッグ・エイトといって「乳・卵・ピーナッツ・木の実・魚類・甲殻類・小麦・大豆」が規制対象とされており、品目を見るだけでも日本の規制とは若干定義と範囲が違うことがわかるでしょう。

アレルゲン管理システムとは

 消費地(国内・海外特定国)により、特定されたアレルゲンに対処するためのアレルゲン管理システムが、受入れ、加工、保管の各ステップで整備されている必要があります。この管理システムには、ラベル表示されていない食品中のアレルゲンの存在(交差接触)を予防するコントロールが含まれます。アレルゲンの交差接触が起こり得るステップを特定し、予防するために例えば、 物理的・時間的に分離する(すなわち異なるアレルゲンプロファイルを有する食品を取り扱う間に効果的な洗浄)手段が採られます。この洗浄は製造終了後においては微生物学的汚染(7.2.4)の予防・最小化システムと同一でしょうが商品切り替え時にも必要なことに注意してください。

Codex 一般原則(2020年版)で推奨される文書化 7.2.7アレルゲン管理

 加えて、ラインを分別したり、製造スケジュールを定めたりすることで交差接触予防のための洗浄頻度を最小化するシステムを考慮されるとより効果的でしょう。つまり多品目製造で異なるアレルゲン原材料がある場合に、なるべくアレルゲン原材料の無いものから、共通のアレルゲン原材料の多いもの、と製造スケジュールを設定し最後に単品にしか使用しないアレルゲン原材料を製造するとアレルゲンクリーニングの頻度を最小化できるというわけです。

 小麦粉、そば粉や紛卵など粉末状のアレルゲンは空気中に舞い、空調を介して別エリアまで移行し得るアレルゲンのため空間的な切り離しにさらなる注意が必要です。

法的に認められない「入っているかもしれない」表記

 自施設のオペレーションの限界で交差接触が予防できないのであれば、その旨は消費者に通知されるべきですが、「同じ施設で○○が製造されている」旨の注意喚起表示は、表示法の義務違反を責任回避できる措置ではないので注意してください。ちなみに米国では日本と違い「入っているかもしれない」(may contain)表示が法的に認められていますが推奨できないと注意しています。まずは交差接触の管理システムを考慮しましょう。

 なお、外食でアレルゲン表示が義務化されていないのは、正にこのオペレーションの限界が想定されるからです。消費者保護のためにはアレルゲン管理システムを確立できない外食店舗が中途半端にアレルゲン表示するほうが公衆衛生上危険であるという判断です。厨房現場ではまず、蕎麦とうどんを同じ釜で煮る、多品目のためカッティング刃物やまな板など厳格に使い分けできないなど、現場で使用される原材料のアレルゲン、交差接触の可能性を自覚することが大切です。アレルゲンと食品の製造/加工方法との関連性を理解し、消費者リスク低減のための予防手段を正しく実施するためのトレーニングを実施しましょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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