Codex HACCP 2020最新版に準拠!! はじめに―そもそもHACCPとは(前編)

「法制化HACCP」はCodex最新版に準拠

 日本の食品衛生法一部改正(2018. 6.13公布)で求められることとなった制度化HACCPは、2020年6月1日に施行、2021年同日に完全施行となりました。法的要求事項となった“HACCPに沿った衛生管理”の具体的内容は「コーデックスの食品衛生に関する一般原則の内容を基本とする」としてその適用の詳細まで事細かに規定していません。そこで大事になるのがコーデックスの内容です。コーデックスとはWHO(世界保健機構)のSPS協定に基づくFAO(国際食糧機関)と合同の食品規格委員会でコーデックス(以下、Codex)はラテン語で法典を意味します。

 CodexではHACCPだけでなくその前提条件となる「一般原則」や、食品別、ハザード別、業種業態別の標準規格、食品製品を分類する定義を定める規範コード、各国間の貿易取引の根拠となるリスクの取り扱いなど幅広い、国際的に推奨される食品規格を定めており必要に応じて最新版にアップデートも行っています。

「食品衛生に関する一般原則」も例にもれず、1969年に成立後、1997年にHACCPガイドラインを附属し、2003年には小規模営業者等への弾力性概念を導入、そして直近では2020年にそれまで附属文書だったHACCPガイドラインを本文内(第2章)に格上げした最新版を発行しています。

HACCP システムは、科学に基づき系統的

 Codex 食品衛生の一般原則は、大きく第1章と第2章に分かれて前回までの解説は第1章「適正衛生規範」でした。特にセクション7「オペレーションのコントロール」は前回まで詳細に解説したところです。

 第2章「HACCPシステムおよびその適用のガイドライン」は、3つのセクションで構成されていて最初のセクションではHACCPシステムの7つの原則について説明します。セクション2ではHACCPシステムの適用に関する一般的なガイダンスを提供し、セクション3では適用の詳細が事業者の状況や組織能力に応じてさまざまであることを前提に12ステップでその適用を説明しています。まずはセクションに入る前の序文(はじめに)を通じて「そもそもHACCPとは何か」を3編に分けて見ていきましょう。

 HACCPシステムは、“科学に基づき系統的”です。「科学に基づく」とは再現性があると言い換えることができます。たとえば特定の病原性細菌を想定してみるとその細菌が一般に自然界のどこに存在していて、どのような原料において汚染の可能性があり、どのような環境中で増殖し(また増殖を抑制でき)、特定の食品で何度何分以上の加熱で殺滅できる(または生残する)のかは、科学的に妥当性が証明可能です。

「系統的」はシステマティックの訳語です。システム思考は日本人が比較的苦手とする考えかたともいわれますがもっともシンプルに言えば「一貫して紐づいている」という意味です。例を挙げると、特定の原材料であれば通常考えられる潜在的ハザードが特定でき、その潜在的ハザードの性質を考えて製造される製品とプロセスからコントロールの失敗が懸念されるステップが特定でき、そのステップではコントロールされている証拠を残すために例えば中心温度の何度何分以上の条件が必須であるならばそれを満たす測定手段を決めて、決められたとおりにモニターを実施し、逸脱製品が市場に流出しないよう措置を講じてそのすべてを記録して食品安全の証拠を残す。すなわちハザードの一つひとつに対して「起承転結」のストーリーが前後で矛盾なく一貫している。これがシステマティックアプローチです。

HACCP導入はこれまでのやり方変更を“前提としない”

 HACCPとは食品等事業を営む皆さまが、これまで消費者に美味しさや楽しさを提供してきた食品製造/調理オペレーションを否定するものではなく、むしろ科学的根拠で従来のやり方を肯定するものとお考えいただきたいところです。上述のように食品安全を確保するための、固有のハザードを特定してそのハザードに対するコントロール手段を特定する手法であり、そこではハザードの評価、農場から食卓までフードチェーンに沿った重大なハザードのコントロール手段に焦点が当てられています。HACCPはコントロールシステムを確立するためのツールであり、最終製品試験に依存しない考え方であると言い換えることもできます。ちなみに「コントロールシステム」の箇所は前の版まで「予防」の単語が充てられていましたがその変更理由は折に触れ解説したいと思います。

 HACCP システムは、装置設計、プロセスの手順、あるいは技術開発の進歩など、いかなる変化にも対応することができるはずであり、裏を返せばHACCP システムの開発は常に最新情報を踏まえた変更の必要性(たとえば、プロセスのパラメータ、プロセスのステップ、製造技術、最終製品の特性、流通方式、意図される用途または、適用される適正衛生規範)を特定することができる手法です。

 言い換えれば、「HACCPとはこれまでのやり方を“見える化”してその正当性を第三者に証明可能とするツールであり、またいつでもより効果的かつ効率的なやり方に改善しやすくすることができる」ということになります。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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コーデックス規格
基本選集 I 対訳

監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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