Codex2020最新版に準拠!! リコール手順‐ 安全でない食品の市場撤去

はじめに

 国際的に文書化が要求される一般衛生管理項目もついに最後の項目となりました。文書化と記録づけが要求されるセクション7:オペレーションのコントロールの中でも、この「7.5 リコール手順‐ 安全でない食品の市場撤去」は性質を異にしています。どう違うのかというとここまで、「7.1 製品/プロセスの記述」を背景情報としてハザードを自覚し、そのハザードと紐づけられるようなコントロール手段の「7.2 適正衛生規範のキーとなる側面」を考慮し、HACCP及び/又は大きな注意が必要な適正衛生規範によって予防すること。加えて根本的にハザードと直結する食用適である“包装”と“”を確保することで予防手段を確固たるものにしてきました。つまりここまでの要求事項はすべて「予防」に焦点をあてていたわけですが、明らかに今回のテーマである「リコール手順」はその“予防の失敗”に反応する手段であり、予防の失敗にいち早く対処し可能な限り被害を最小限に低減させることに焦点が置かれています。

 この“予防の失敗”には2つの側面があります。一つは、衛生管理計画に定めたコントロール手段が正しく実施されず、その非遵守を検証で見つけることができず、図らずも出荷してしまった場合、もう一つは衛生管理計画自体がそれだけでは食品安全性の確保に不十分であり、出荷後にその計画の問題性が発覚してしまった場合です。

リコール手順の要求事項

 上記のような“予防の失敗”は万事うまく行っていれば起きないことなのですが、現実社会ではたびたび惹き起こされます。そのような事態を想定してやはり、リコール手順まで「予防的手段」として食品衛生システムの文書化要求事項に包括するべきということになっているのです。

 リコールには食品危害の要因(つまり、ハザード)に直結する場合と、そうでない場合があります。直接ハザードに結びつかないまでも不衛生などの適切性(ヒトの消費に許容可能であるか)の事由からリコールに至る場合もあるでしょう。一方で安全性や適切性に影響しないものの法令遵守には違反する(添加物の使用基準や農薬等薬物の残留基準)ものもあります。これらをクラス分類して上からClassⅠ、ClassⅡ、ClassⅢとしています。

 リコールしなければならない逸脱が見つかった際にはまず、この逸脱の食品安全性/適切性への影響について評価する必要があります。逸脱があったロットをいち早く回収していくために手順には、公衆衛生リスクをもたらす可能性のある食品を、包括的・迅速に・効果的に特定し、関係する食品等事業者や、必要ならば消費者にも伝達し市場からの撤去、消費者からの返品が実施可能なよう、手順をあらかじめ組んでおく必要があります。

 特に、差し迫った健康リスクを示すハザードが存在する可能性が高いリコールでは、逸脱が見つかったロット以外にも同様の条件で製造されている可能性など、公衆衛生上ハザードをもたらす可能性があるその他の製品の安全性までをも評価するルールを設けておき、必要ならばさらなるリコールの可能性も考えられるようにしておきましょう。製品がすでに消費者にまで到達した可能性のある場合は、その場所、および製品の返品や市場撤去が適切な手段と判断されるならば、関連する管轄当局への報告が義務的に要求され、公的警報も考慮されるべきでしょう。

 上記の要求事項を満たすためリコール手順は文書化され、維持されなければなりません。さらには、定期的な実地試験を行いその結果に基づき必要な場合には修正されるべきです。

 なお、回収/返品された製品の取り扱いについて、廃棄、またはヒトの消費以外の目的で使用されるまで、あるいはヒトの消費に安全であると判断されるまで安全な状態で保管されるよう規定しておくのは当然のことでしょう。場合によっては、管轄当局により認可されている場合はハザードを許容可能レベルまで低減させる仕方で再処理される場面も、国際的には存在しているようです。

 リコールを実施した場合は必ず記録(文書化された情報)を残しておきましょう。これには、逸脱の原因とリコールの範囲、および採られた是正措置が含まれます。

要求事項をしっかり読み解く

 リコール計画は、国際的に要求される文書化要求事項であるオペレーションのコントロールの中でも、「ハザードと紐づけされるキーとなる側面」での逸脱が見つかった場合(ClassⅠ)だけでなくもう少し広い場面が想定されるため衛生管理計画とは別途、文書化される食品等事業者が多く担当する部署も違っている場合が多かろうと思われます。ただし、リコールの第一義的な目的はやはりハザード“予防の失敗”に反応する手段であり、予防の失敗にいち早く対処し可能な限り被害を最小限に低減させることです。したがって衛生管理計画のコントロール手段とそのモニタリングや検証活動と紐づいていることがリコール計画の有効性(包括的・迅速に・効果的に特定できること)に直結しています。評価の甘さによりClassⅢのつもりでいたら管轄官庁よりClassⅠ判定を受けた、といったことがないよう組織横断的な力量をきちんとつけておきましょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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