製品の記述は安全性情報をきちんと含めていますか?(Codex 19.2);HACCP 2022最新版に準拠!!

製品の記述は安全性情報をきちんと含めていますか?(Codex 19.2);HACCP 2022最新版に準拠!!

はじめに

 Codex 2022年 最新版「食品衛生の一般原則」の第2章「HACCPシステム及びその適用のためのガイドライン」の「19.2:製品を記述する (手順2)」について解説します。この19.2は、1文節でありますが内容としては「安全性情報を完全に含めること」「グルーピングが効率性に資すること」「規制値等の既存の制限値の説明」に分けられ、「規制値等…」は2020年版にて新たに追加された内容となっています。以下、ていねいに解説します。

ハザード分析の“背景情報”としての製品記述

 これはHACCP 7原則に入る前の手順1~5すべてに共通することですが、これらいわゆる「前手順」というのは製品・原料・オペレーション・組織の“見える化”作業であり、その見える化の目的は「手順6 ハザード分析」のための“背景情報の収集”(ゆえに前手順)です。この目的を見失うとハザード分析が現場を無視したものとなり、HACCP計画は機能しない「絵に描いた餅」となってしまうおそれがあります。

 たとえば、この手順2の製品記述ではよく、『商談会シート』に記述されるような商品特長(つまりは、美味しさや使いやすさ、といった付加価値要素)を書き込もうとしてしまいがちだったりしますがそうではなく、あくまでも“製品の安全性に関する記述”を含めるという目的からそれてはいけません。

 「ハザードについてすでに確立されている制限(食品添加物規制、規制の微生物基準、動物用医薬品の最大残留量、加熱処理の時間と温度等、ある場合は成分規格・製造基準)は、HACCP計画で考慮され、かつ説明されるべき」ことをCodex 2020では念押ししています。くれぐれも前手順の目的がハザード分析の背景情報の見える化であることを忘れずに取り組みましょう。

スライド

あなたの製品の安全性情報は完全に含められていますか

 製品の安全性に関する記述についてCodexでは具体的に、成分組成、物理的/化学的組成(例えば、水分活性、pH、保存料、アレルゲン)、加工方式/技術(加熱処理、冷凍、乾燥、塩漬、燻煙など)、包装、耐久性/貯蔵寿命、保管条件、流通方式等を挙げています。これらを完全に含めるには製品の記述書式にあらかじめ各項目欄を設けておくことです。『一括表示が求められる製品』(容器包装に入れられた加工食品)であればまず、すでに一括表示にある記述をベースに“見える化”を進めてみるとよいでしょう。

 「成分組成」は一括表示で求められる原材料名・添加物とおよそ同等でかまいません。後のハザード分析に影響があるならば原産地等の付加的情報を加えてもかまいません。また後の手順4(フローダイアグラムを構築する)で“見える化”いたしますが、食品接触材料、投入する場合は水やエアー(ガス等)もここであらかじめ記載しておいてもよい(表をあまり複雑化させない程度に…)でしょう。「物理的/化学的特性」の例にある4点は特に製品の安全性に関わります。病原性細菌の増殖しやすさと、水分活性やpH、また塩分等の保存に資する添加との関連性は通常よく認識の上で製品設計されているはずです。またアレルゲンはそのものが特定の人々に取り潜在的にハザードとなります。なお、「保存料、アレルゲン」の例示は2020年版で新たに追加された記述です。

 「加工方式/技術」の例示はすべて、ハザードコントロール手段の候補足り得る加工ステップ(第20回第21回)であり、Codexが挙げた事例以外にも加圧(多くは加熱と合わせ技)、発酵(伝統食品に多い)や放射線照射(日本では原則禁止)など考えられるでしょう。なお、「乾燥」の例示は2020年版で新たに追加された記述です。そして「包装」ですが包材自体がまず食品グレードであること(第28回)が求められます。また、含気包装の場合、真空包装(真空度がどの程度かまで考慮が必要な場合もあり)、ガス置換包装と、病原性細菌の種類ごとの増殖しやすさに関連します。

 上述の要素から“系統的に紐づいた”科学的根拠に基づき設定された、耐久性/貯蔵寿命、保管条件、流通方式等についても忘れず記述しましょう。日本では期限表示や保管方法等について製品の安全性でなく消費者からの印象を意識したり、流通商習慣から期限を設定しがちだったりします。『消費期限』か『賞味期限』かにも依りますが自ら設定した期限に矛盾しかねない「本音と建て前の乖離」は避けたいところですね。

多品目製造ならグループ化の検討が国際的

 多品目製品では類似する特性の製品およびプロセスステップをグループ化することが、HACCP計画の開発において、有効(effective)かもしれません。日本では過去、「製品毎」にこだわるあまりに「類似する特性」をグループに括らず、品目ごとに製品の記述を作り、内容がほとんど同じHACCP計画をコピー&ペースト(以下、コピペ)して濫造し、結果として文書/記録の管理が煩雑化し、さらには更新時のコピペミスで管理しきれなくなるといった悩みをよく聴きました。“製品のグループ化”アプローチはケータリングのオペレーションを例に挙げて、Codexの2003年版ですでに採用されていましたが、2020年版ではその「例」を外しもっと一般的にグルーピングが「有効であるかもしれない」(…it may be effective)ことを示唆しています。「effective」とは効果的、実施されて有効な、実際的といった意味です。机上の見た目が立派なファイルを作るのが目的ではなかったですよね。なお、「may be」を使用しているということからすべての施設でグループ化が正義だと言ってはいないということご留意いただかないといけません。あくまでも精緻化(elaboration)と実施の最終責任は食品等事業者にあります(第48回)。

 グループ化した場合に悩みがちなのは個別製品の相違点の記述です。相違点が“プロセスステップ”ならフローダイアグラムに表記、“製品”の相違なら製品記述に詳述すればよいだけです。添加物の違いや製品アレルゲンリストなど相違点が詳細ならば“系統的に紐づいた”別表を作成すると管理しやすいでしょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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コーデックス規格
基本選集 I 対訳

監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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