適用するHACCPシステムの範囲を決めていますか?(Codex 2.3.1の③);HACCP 2020最新版に準拠!!

適用するHACCPシステムの範囲を決めていますか?(Codex 2.3.1の③);HACCP 2020最新版に準拠!!

はじめに

 Codex 2020年 最新版「食品衛生の一般原則」の第2章「HACCPシステム及びその適用のためのガイドライン」のメインである「セクション3:(HACCPシステムの)適用」3文節を文節ごと前々回前回と詳細に解説してきましたが今回は最後の3文節目、もっとも文字数が少ない「HACCP チームは、HACCP システムの範囲と該当する前提条件プログラムを特定されるべきである。範囲には、カバーされる食品およびプロセスを記述するべきである」についてじっくり解説します。

規制HACCPとHACCP+αその規格適用の範囲は?

 適用するHACCPシステムの選択肢としてまず、食品衛生法で求められる「HACCPに沿った衛生管理」は日本国内すべての食品等事業者に適用される義務なので、ここは全食品、全業態で要求されること本コラム読者はご存じのことと思います。また第47回で解説している、弾力性が認められる小規模営業者等の場合はまず「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が義務的に要求されますが、たとえば“手引書”が自身のオペレーションと必ずしもフィットしないとか、そもそも製造食品の手引書が見当たらないという場合などで、自らハザード分析して「HACCP原則に基づく衛生管理」を選択することも自由であること第48回で解説しています。

 さらに大手量販や百貨店、ホテルなど取引先に認めてもらうために「HACCP原則に基づく衛生管理」を選択することもあるでしょう。その延長線上には、民間の第三者認証を選択される場合も考えられます。特に大手と取引する場合においてはFSSC22000やSQF、JFS-Cといったグローバル認証を目指される事業者も増えてきています。そして取引の拡大先を海外にまで目を向けている場合は海外HACCP規制等への対応まで範囲とする必要がありこれらを「HACCP+α」と厚生労働省は通称しています。したがいまして各食品等事業者はまずチームとしてHACCPシステムの範囲を定める必要があります。

ステップアップする範囲だけでなく関連するGHPsに着目

 小規模営業者等が「HACCP原則に基づく衛生管理」に、またそれ以外の食品等事業者が第三者認証や輸出の規格規制に取り組むという場合、その規格・規制に対応する範囲を決めておく必要があります。たとえば小規模営業者等ならば多品目製造で“手引書”がフィットする製品は「考え方を取り入れた」方式で、フィットしないならば手引書を参考にあるいは自らハザード分析をして「原則に基づいた」方式でHACCPに沿った衛生管理を進めていく、こうした部分的選択は許されています。また、たとえば特定商品(商品群)を大手と取引、あるいは輸出するために第三者認証あるいは輸出相手国の規制に対応する「HACCP+α」に取り組む場合でも認証範囲を部分的に選択する場合というのは現実として考えられるでしょう。

 この場合に気を付けなければいけないのが「関連するPRPs」です。PRPsというのは前提条件プログラム(Prerequisite Programs)の頭字語で第7回のサニテーションから第13回のオペレーションのコントロールまで解説してきた適正衛生規範(GHP)を含むプログラムのことですが、この中でも特にオペレーションのコントロールについて、特に「ハザードコントロールのためのキー側面」について第19回から第31回に詳説しています。

 もっとも解りやすい事例として“アレルゲン交差接触”(第26回参照)を挙げます。つまり製品に入っていないはずの別製品のアレルゲンがプロセス中で混入してしまう場合です。特に一括表示で義務付けられている特定原材料ではどの現場でも相当気を使っておられるのではないでしょうか。この予防は通常、製品独自のHACCP対応でなく、施設全体でのGHPとして対応されるでしょう。このような、ハザードと紐づけられるGHPを「より大きな注意を要するGHP」と特筆(Sign)して、HACCPチームはこれを予防プログラムとして文書化しておく必要がある必要があるということになります。過去連載の「ハザードコントロールのためのキー側面」では他に“そのまま食べられる食品への環境病原体汚染”(第23回参照)や“自社でコントロールできない原材料の要求事項”(第27回参照)が同様に製品独自のHACCP対応でなく、施設全体でのGHPとしてあらかじめ特定しておく必要性がある事例として特徴的でしょう。「関連するPRPs」を考慮すると、施設全体でワンファイルでの統一したHACCPシステムでオールクリアする合理的な結論に至るかもしれません。

「フードチェーンとハザード」から「食品とプロセス」へと

 Codex 「食品衛生の一般原則」2020年版は、大幅な追記が多く事例も挿入されとても具体的になったのが特徴ですが、この文節では旧版の表現を事例も含めて削除(図の青字部分)して、新版で変更のあった箇所(赤字部分)に差し替えられているのが特徴といえます。その結果、この文節は文字数がとても少なくなりました。

 まず旧版表現を見てみましょう。「範囲は、フードチェーンのどの部分が関わっているか、及び検討すべきハザードの一般的な分類を記述すべきである」というものです。たとえば同じビーフパティであっても、冷凍ひき肉にして加工メーカーへ納品するのと、冷凍品を一般消費者へ供給する、加熱製品の販売、さらにはレトルト加熱製品の販売、あるいは加熱調理して即時喫食してもらう、このそれぞれで検討するべきハザードは変わってきます。しかし、食品産業は多様化の一途で、上述したビーフパティ加工とフードチェーンでの多岐にわたる役割を一手に引き受けるような業態が「ざら」になっております。最新2020年版ではこの全般をカバーして各業態での“ワーストケース”を想定できるよう「カバーされる食品およびプロセスを記述すべきである」という表現に変更された、と理解すればよいでしょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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作れる!!法制化で求められる衛生管理計画への道筋

監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)による事業者支援セミナーをテキスト化した一冊です。
コーデックス規格
基本選集 I 対訳

監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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