Codex2020最新版に準拠!!温度と時間のコントロールは工程管理 基本のキ -ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その①

はじめに

 前回からスタートした、食品安全ハザードと紐づけられる衛生管理項目。8つのキーとなる側面のうち、「7.2.1時間と温度のコントロール」および「7.2.2特定のプロセスステップ」の適正衛生規範には、HACCPシステムのクリティカルな管理点(CCP)として取り扱われるコントロール手段と考えられ、その最初の衛生管理項目である時間と温度のコントロールは、病原性微生物の生残や増殖に関係するもっとも一般的な失敗要因の一つであるというお話をしました。

温度と時間コントロールへの注意が必要な場合

 例えば常温保管の容器包装詰め製品を輸送や保管、販売する場合を考えてみましょう。品質上、直射日光にさらされたり、不潔な場所に置いたりすべきではないものの、それでは具体的な食品安全上のハザードが具体的に挙げられるかというとなかなか思いつきませんよね。それは包装材で外部から保護されていて、かつ病原性細菌が温度帯によって増える製品仕様ではないためです。温度が効果的にコントロールされることを保証するためのシステムが整備されているべき条件を具体的に挙げると、食品の性質―例えばその水分活性(Aw)、酸性度(pH)、および起こり得る病原性・腐敗性微生物の初期レベルとタイプ、微生物の生育/危険温度帯の時間などの影響、製品の意図された消費期限、包装および加工の方法、製品の意図する使用―例えばさらに調理/加工されるものか、またはそのまま食べられるものか、といったことが考慮されます。

微生物の生存や増殖に関するコントロール

 不適格な時間と温度のコントロールは、例えば調理中、冷却中、加工中、保管中において、オペレーションコントロールの最も一般的な失敗の1つです。それは、食物由来の疾病または食品変敗の、原因となる微生物の生存や増殖を可能にし得るという理由からです。

 たとえば包装済み食品を120℃ 4分以上に相当する加圧加熱殺菌(いわゆるレトルト加熱)をすると、胞子を形成する芽胞菌も含めたほとんどの病原体が確実に殺滅できるため常温保管可能な製品となります。一方で、それに満たない加熱では必ず胞子が生残しますので、加熱後の温度と時間の条件によっては病原性の芽胞菌が増殖するというハザードが潜在的に残ります。また卵のサルモネラならば70℃ 1分以上、食肉の病原性大腸菌など栄養細胞病原体なら75℃ 1分以上、二枚貝のノロウイルスならば85℃(~90℃) 1分以上の中心温度達成と同等以上の加熱が必要となります。

 またマグロ、サバなど赤身魚での一部の腐敗性微生物(例えばモルガン菌)が増殖して生成させるヒスタミンならば冷凍保存、または4℃以下で鮮度保持の範囲で最小限の冷蔵保管などが求められるでしょう。即時喫食のためのトッピング常温(危険温度帯10~60℃)保管での病原性細菌の増殖ならば2時間未満の保存限界は最低限のルールです。細菌を増やさないためには高温保管と低温保管の両面が考えられますが低温では日本の冷蔵温度帯10℃以下では多くの病原性細菌が増殖することを知っておく必要があります。リステリア・モノサイトゲネスやエルシニア菌のような低温増殖する病原菌がいることを考えると少なくとも4℃以下での保管を考慮するべきでしょう。また通常加熱では胞子が生き残る芽胞菌のセレウス菌が増殖するのを防ぐには65℃以上での高温保管を考慮するべきでしょう。

 このように原材料とオペレーションの関係からハザードを自覚できたならば、時間と温度の変化に対して許容可能限界を特定したコントロールシステムを設定すべきだということがご理解いただけるかと思います。食品の安全性と適切性に影響を与える温度コントロールシステムは、科学的かつ技術的な妥当性を確認し、適切と判断されるならモニタリングし、記録しましょう。温度モニタリングと記録に使用される装置は、日々の精度確認、および定期的な頻度、または必要に応じての較正(正しい標準と比較してメンテする)を実施すべきです。

 調理や冷却、加工、保管が適正に実施されているつもりでも、使用している計測機器が正しく機能していなければ温度と時間のコントロールに不備があっても気がつかずにスルーしてしまいかねません。

特定のプロセスステップ

 これら温度と時間のコントロールは取り扱う原材料だけでなく、原材料の受け入れから出荷まで一連のプロセスでの、特定のステップに影響されます。先述したように、食品の性質―例えばその水分活性(Aw)、酸性度(pH)や、包装済み食品の120℃ 4分以上に相当する加圧加熱殺菌などのステップは、その後のプロセスで温度と時間のコントロールを適用除外にできる変化をもたらし得ます。次回はこの特定のプロセスステップについて解説いたします。

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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