マネジメントの食品安全への自覚とコミット(Codex 2.2.1の②);HACCP 2020最新版に準拠!!

マネジメントの食品安全への自覚とコミット(Codex 2.2.1の②);HACCP 2020最新版に準拠!!

はじめに

 前回からCodex HACCP(2020 最新版)の「セクション2;HACCP システムの適用に関する一般的なガイドライン」各項目を詳説しています。今回は、前々回に全体像をお示ししたセクション2の「2.1 はじめに」から、5文節での2番目「マネジメントの食品安全への自覚とコミットメント」について解説します。ここは根本的に外せない、日本人には誤解されがちな「食品安全文化」とリンクする項目ですので、ていねいに解説していきましょう。

フードビジネスのあらゆる分野で効果的HACCP システムを導入するために

 セクション2後段の「2.2 小規模および/または未発達食品事業の弾力性」の小節にもリンクする話ですが、前版のCodex 2003年版で当該箇所は、「HACCPは、一次生産から最終的な消費までのフードチェーンの中で適用することができる」という適用可能性の記述であって、その目的達成の条件(すなわち要求事項)にまで言及されていませんでした。

 2020年の最新版ではその適用可能性に対する要求事項を明確にしているところに特徴があります。本文では3つの条件「1.マネジメント(経営層)の食品安全への自覚とコミットメントが必要」「2.HACCPシステムの有効性もまた、マネジメントと要員が適切なHACCP のトレーニングと力量を持つことに依存」「3.上述2点から、食品事業に適した、経営者を含むすべてのレベルの要員に対し継続的なトレーニングが必要」が示されています。そもそも論から整理していきましょう。

経営層のコミットなきFSMS適用は“徒労への道”

 HACCPが義務的法制化された後も、罰則規定がないことから経営層の関心の度合いによってHACCP適用へのコミットメントは施設により大きく異なっていることと思います。もしHACCPを手間や負担としか感じていないとしたら、それは本来得られるべき重大な利益(食品安全性を高めることと同様に、組織のより効率的なプロセス、資源のより効果的な使用、製品リリース前の問題特定、リコールの減少など)を達成できていないということであり、経営層の不満や徒労感はおそらくその通り当たっています。

 同じようにHACCPを中核とした、FSSC22000やSQF、JFSなど食品安全マネジメントシステム(FSMS;Food Safety Management System)認証取得を目指す動きにおいても、輸出や販路拡大を動機づけとしてチャレンジする事業者はまだまだ増えていくと考えられますが、国際的に世界で認められているHACCP適用の効果を実感していただくためには、まず経営層の食品安全への自覚に基づくコミットメントが必要となることを忘れないでください。


衛生管理計画へのサインは経営層コミットの“検証可能な記録”

 HACCP適用で期待される効果を最大限得られるために、必要となる経営層の自覚とコミットメントとはどういうものでしょうか。この自覚とコミットメントをもっとも明確に示すのが食品安全方針とも言われる衛生管理計画(認証や輸出では通常「食品安全計画」)への経営層の「サイン」です。計画へのサインは経営層が計画を承認したことを意味しており、かつその計画を計画通りに適用できるための資源を利用可能にするという宣言でもあるからです。

 宣言したからには経営層は、各員へ食品事業における役割・責任・権限を明確に伝達して、計画の変更時における正直さを担保し、コントロールが計画通り実施され、機能していて、かつ文書が最新であることを検証し、適切なトレーニング・監督が従事者のために実施されていることを保証し、規制要求事項の遵守を確かなものとし、適切さに応じて継続的な改善を奨励しなければなりません。これが経営層のコミットメントの具体的な取組み内容です。

トレーニング成果は知識でなく“力量”の度合いで決まる

 効果的(effective)なHACCP適用の「効果の度合い」(有効性;effectiveness)に関わるのが、コミットに基づく各員へのトレーニング、そしてその結果として得られた力量の度合いです。経営者には経営者の、職責(例;モニター、是正措置、検証等)を与えられた各員にはその職責に応じた、また一般の現場従事者には現場の最前線を守るための、それぞれのレベルに応じた、かつ食品製品やセクターに応じたトレーニングが、継続的に実施される必要があります。

 ここでは現場従事者の現場ごと求められる力量の違いを紹介すると、外食店舗でも職人さんが長年の経験で調理する個人店舗の場合、トレーニングとは包丁さばきや食材への目利き、お客さまの要望(わがまま)にどこまで付き合ってよいかの判断まで、食品安全に関わる力量要素は多岐にわたりますが、アルバイトが最小限のオペレーションで回していくような多店舗外食では同じ厨房でもいかにマニュアル手順どおりに作業するか、手洗いするか、記録を取るかといった基本ルールの徹底に限定されるという違いがありますよね。監督者に求められる力量も、記録の確認の仕方や作業の観察、インタビューの仕方など食品安全と直結する管理の仕方を学ぶ必要があります。特に衛生管理計画を主体的に担う衛生管理チーム(食品安全チーム、HACCPチームなど呼称はさまざま)は国際的に認められるHACCP適用に関する力量担保が求められます。

 日本ではこのトレーニングをペーパーテストなど知識の検証のみで済ませてしまう例を散見しますが、大切なのは知識ではなくそれを現場で実行できる技術を加えた力量です。したがって世界では多くの場合、OJT(On-the-Job)やそれに代わるロールプレイング演習のように力量の確保を検証できる手法で実施されるのが通常です。

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作れる!!法制化で求められる衛生管理計画への道筋

監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)による事業者支援セミナーをテキスト化した一冊です。
コーデックス規格
基本選集 I 対訳

監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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