HACCP原則は国際的に推奨された食品安全のツール

HACCP原則は国際的に推奨された食品安全のツール

HACCPとは何か

 前回、HACCP法制化に伴い全食品でHACCPに沿った衛生管理が法的要求事項となるというお話をしました。ラーメン屋の屋台を題材に一般飲食店にもさまざまな食品安全を脅かす要因(ハザード)があって、屋台オペレーションの中で適切な管理が万が一行われなければ事故も起こり得る、だからきちんとした管理をされていることを第三者に証明できるように日報などの記録に残さなければならなくなる。
それが“HACCPに沿った衛生管理”で、厚生労働省は一般飲食店などの手引書を公開していて、一般飲食店ではさらにその簡易版として東京都の開発した「衛生管理ファイル」という最軽量アプローチもあるというお話をしました。

 今回は皆さんにHACCPとはそもそも何なのか、何をしなければいけないのかというお話をしたいと思います。

国際的に推奨されている7つの原則

 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は国際的に推奨される食品安全を守るための手法です。
そのルールを決めているのは国連のWHO(世界保健機構)とFAO(国際食糧農業機関)が合同で設置している、食品規格委員会Codex(コーデックス)です。CodexはHACCPを7つの原則(表1)で説明しています。難しい専門用語が並んでいてとっつきにくいでしょうか。

 前回を読み返すとより理解しやすいかと思いますが、食品安全を脅かす要因(ハザード)は提供する製品とその提供方法、受け入れる原材料、加工・調理の方法によりさまざまです。これが想定できずに失敗してしまうことを未然に防がないといけないわけですから、どんなハザードがあるのか分析します。
ハザードが何かわかったらそのハザードを予防管理する勘所を探ります。
それがはっきりしたら、自分以外の誰かに説明できるように計画書に起こして、それを実施します。
実施していることを自分以外の誰かに証明できるように記録に残してさらにチェックも行います。

Codex HACCP 7原則

(表1)Codex HACCP 7原則

 “予防”はとても大事なHACCPの基本的な考え方です。
過去に多くの食中毒やその他の食品危害による事故は、“想定外”の場面で起こってきました。
時にその被害は数百人、数千人以上にも上る場合がありますし、死に至るほど重篤な場合もあります。
これら不幸を繰り返さないためにやはり“予防”は大事な考え方ではないでしょうか。

 もう一つ大事なのが“自分以外の誰かに”伝えられるということです。
いくら自身が予防の仕方をわかっていても、誰かにその作業を任せるにはその仕方を理解してもらわないといけない。また、食品はすべてのハザードを自分のところでコントロール可能なわけではなく原材料の製造者が間違ったことをしていたら結果的にお客様に知らずしらずに被害をかけてしまうかもしれません。
販売先が事業者(いわゆるB to B)だった場合には、買い手側は予防管理がしっかりしているか聞きたいでしょう。

さらには、地元保健所の衛生監視員はこれから、 “計画が有効でかつ実施状況等が守られているか”を正にこのHACCPに沿った衛生管理でチェックするやり方に変えようとしています。職人さんや熟練工は「俺はちゃんとわかっている」「一度も事故を起こしていない」と言われるかもしれません。それは全く正しい場合がほとんどです。
ただそれを第三者にも明確に伝えられるよう、少し“見える化”してあげる道具がHACCPなのです。

 見える化をすることで、自身が知らなかったハザードや、気づかない失敗しそうなポイントを第三者が見つけやすくなる、という効果もあります。モレ・ヌケを見つけてより安心してお客さまに美味しく楽しい食を提供することができます。

CodexがHACCP適用のための12の手順を例示

 HACCP7原則は、HACCP適用の国際的な基礎的要求事項を設定するものですが、CodexはこのHACCP手法の適用を円滑にするために一般的な12手順のガイダンスを提供しています。
手順1~5を一般に前手順と言っていて、手順6から先述の原則1に従うことになります。
ここで誤解しないでほしいのは、手順1~5の前手順は必ずしも国際的に推奨される要求事項ではないということで、前述の通り一般的ガイダンスでしかないことを忘れないことが大切です。

 なお、あくまでもガイダンスではあるのですが多くの食品製造施設にとって前手順は使用したほうが便利なので使っている施設が多いのも事実です。

 この12手順の適用をこう整理すると理解しやすいではないでしょうか。
すなわち、手順1~5は、ハザード分析を正確に実施するための現場オペレーションの“見える化”、手順6,7は何を、どこで管理しているか洗い出し評価し、見直すこと、手順8~10は洗い出された予防管理項目を計画に起こすこと、手順11,12はそれらを正しく実施され有効に機能しているという証拠を第三者に伝えられる仕組みを作ること、と整理できるのです。

 このHACCP12手順7原則を使って皆さまの現場で取り組まれている食品安全・衛生管理の取り組みを“見える化”していきましょう。

Codex HACCP 12手順

(表2)Codex HACCP 12手順

杉浦 嘉彦
 執筆者  月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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