HACCP初歩段階で陥りやすい10大誤解

はじめに

 HACCPには国際的なガイドライン(Codex)があって、12手順7原則で整理されていること、12手順を大きく4段階に分けて手順1~5は、ハザード分析を正確に実施するための現場オペレーションの“見える化”であること、手順6,7は何を、どこで管理しているか洗い出し評価し、見直すこと、手順8~10は洗い出された予防管理項目を計画に起こすこと、手順11,12は正しく実施され有効に機能しているか第三者に伝えられる仕組みを作ること、というお話を前回はいたしました。

 今回は皆さんにHACCPに取り組む初歩段階で“陥りやすい誤解”についてお話します。

HACCPの陥りやすい10大誤解とは?

 筆者がよく聞くHACCPの誤解されやすいポイントを図1に挙げてみました。「10大誤解」としていますがこれ以外にも多くの誤解が存在しています。特に日本ではHACCPという正体のわからないアルファベットの並びを受け入れる際に相当勝手な独自解釈が行きわたってしまいました。

HACCPの陥りやすい10大誤解とは?

誤解1. HACCPとはハサップ?ハセップ?

  HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Point(ハザード分析及び必須管理点)の頭字語でしたね。HAには母音「ア」がありますが、CCPには子音しかありません。日本語のカナ表記は必ず母音が含まれるので後半を「サ」と読むのか「セ」と読むのか、はたまた「シ」と読むのか長く混乱がありました。具体的には農林水産省系の先生は「サ」と、厚生労働省系の先生は「セ」という人が多かったのですが平成26年度の「HACCP普及検討会」でついに厚生労働省も「サ」のカタカナ表記に統一することで決着しました。しかし、実のところ聞こえ方だけの問題なので「どうでもよい話」ですよね。

誤解2. 金属探知機とエアーシャワーは必須?

 HACCPの導入には、自動モニタリング装置や製造施設のエリア分け構造などが整備されていると管理がしやすいという側面があります。設備投資には資金が必要となりますので厚生労働省と農林水産省は共同所管の法律「HACCP手法支援法」という資金融資の仕組みを法整備して、日本政策金融公庫から低利融資を受けやすくしました。単なる資金融資の制度なのですが、建設会社や機械屋さんを中心に、「HACCP認定工場」と称して設備投資を勧める文化が産まれました。現在でも一部の小売店や自治体の衛生監視員に、金属探知機やエアーシャワーが必須、あるいは推奨する誤った指導が散見されます。

誤解3. HACCPを“取る”?

 HACCPは“やる”ものであって“取る”ものではありません。たしかにHACCPを核にした第三者認証は多く存在しています。自治体(県等)版HACCPや、ISO22000、最近ではグローバル認証と言われるFSSC22000、SQF、日本発のJFS認証などもあります。第三者認証は明確な目標ができてモチベーションにつながる利点がありますが、今回のHACCP制度化で認証は必要ありません。

誤解4. HACCP 対応工場・対応機器?

 先述した通り「HACCP手法支援法」に基づく資金融資のための認定を受けた工場を「HACCP認定工場」と呼称する文化が日本にはありました。この延長にあるのがHACCP 対応工場・対応機器という言い方です。HACCPはハードでなく運用そのものですので建物や機械がHACCPではありません。

誤解5. 製品アイテム1製品に1プラン?

 HACCP計画を1製品につき1プラン必ず作成しなさいと言われるかもしれません。
ところが現場では1品目をのみ製造する施設はまれで、多いところではアイテム数が何百品目もある施設もざらにあります。最近は、多品目をグルーピングすることで、製品群を決めてハザード分析を行う手法が普及されつつあります。

誤解6. 厚生労働省の”手引書通り”でないとダメ?

 厚生労働省が業界団体に「衛生管理計画作成の手引書」開発を推奨し、専門委員らによる技術検討会で審議のうえホームページに掲載しています。そのまま使える手引書もあれば、自身のオペレーションとフィットしない手引書もあるでしょう。厚生労働省では特に小規模営業者等のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画の作成について「手引書通り」「手引書を参考に」「自らの判断でハザード分析して作成」のいずれでも構わないとしています。

誤解7. HACCP とは高度な衛生管理のこと?

 先述の「HACCP手法支援法」の正式名称は「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」といいます。この「高度化」という単語からHACCPとはすなわち衛生管理の高度化だとする文化が日本にはありました。支援法の融資により、たとえばクリーンルーム仕様にしたりとか、空気の動線まで管理したりなど、ハード面の高度化が整備されたわけですが、施設や機械がHACCPではないというのは先述の通りです。

誤解8. HACCPの前に一般衛生管理の整備から?

 これもよくある誤解です。一般衛生管理はHACCPの「前提条件」と位置付けられます。
これをして前提条件の整備をある程度してからという考えが産まれました。たしかに12手順に沿って計画を作る中で前提条件の整備が必要だと判明することはよくあります。しかし、いままでのやり方で事故や問題が発生していないなら、そこに何らかの予防管理がすでにあるはずなので、12手順に沿って“見える化”する過程で、ステップバイステップで見直していくことが世界で一般的なやり方です。

誤解9. CCPがないとHACCP ではない?

 HACCP制度化で求められる衛生管理計画は、“HACCPおよび一般衛生管理の計画書”です。
HACCP計画とはCCPの計画書ですから、ハザード分析を正しく実施した結果CCPがないのであれば、“一般衛生管理のみの計画書”となりますが、“HACCPの考え方に沿った”衛生管理として認められます。

誤解10. 加熱はCCP だ?

 よく、加熱があればCCP、金探があればCCPと決めつけてしまう人がいます。
しかしCCPはハザード分析を正しく実施した結果決めるものです。たとえば、惣菜パスタを乾麺から茹でる場合に不十分な加熱ではそもそも製品にならない場合、金探も骨付き塊肉や分量の多い液体など苦手な製品である場合はどうでしょう。

 これら10大誤解やこれ以外の誤解も今後の連載では折に触れ解説いたします。

杉浦 嘉彦 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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