INDEX
1.水産改革とは?
2.日本における水産業の歩み
3.水産業の難局、3つのポイント
4.必要迫られる水産改革
1)改正漁業法
2)スマート水産業は復興の切り札となるか?
5.スーパーカクテルCore FOODs ご案内
6.よくある質問
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スマート水産改革とは?
2020年に施行された水産改革関連法(改正漁業法)は、水産業における70年ぶりの抜本的改革として、大きな話題を呼びました。水産庁は水産政策の改革をスローガンに、資源管理の適正化とイノベーション促進を図る法整備を土台として、目下、水産業の成長産業化に取り組んでいます。
その中心となるのが、ICTやAIなど、最新技術の導入による業界の画期的な効率化、いわゆるスマート水産業(水産DXとも)です。
水産資源の持続的な利用と水産業の成⾧産業化を両立させるのが、水産改革の目的です。
改革の背景から改正法の概要、スマート水産業が業界をどう変えるのかまで、順を追ってみていきましょう。
日本における水産業の歩み
約7,000の島から成り、複雑なリアス式海岸を多数擁するわが国は、国土の狭さに反して海岸線の長さが世界第6位、総延長は35,000kmに及びます。さらに、寒流の親潮と暖流の黒潮が合流する豊饒な海域を領海としており、特に多種多様な魚が集まる三陸沖は、世界有数の漁場のひとつとして知られています。
そうした地理的な優位を背景に、わが国において水産業は古くから基幹産業のひとつに数えられてきました。明治時代まで食用家畜を育てる習慣が少なかったわが国で、貴重な動物性たんぱく源の供給と食文化を、両面から支えてきたといえます。
現代にも通じる水産業の輸送や保存、加工などの高度な技術は、そうして培われてきました。現在では、国際的な健康志向の高まりを受けて魚介類を中心に据えた和食が評価を高めており、ユネスコの無形文化遺産にも登録されていますが、そうした業績も水産業の貢献なしには成しえなかったでしょう。
水産業の難局、3つのポイント
魚介類が健康食として注目されるなか、諸外国では水産関連産業が急速な盛り上がりを見せています。
国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations;FAO)によれば、一人あたりの魚介類消費量は過去半世紀で約2倍に伸びており、国際的にみれば水産業はまぎれもない成長産業といえるでしょう。
一方、わが国では残念ながら、漁業生産量は長期的な減少トレンドにあります。2018年の生産量は442万トンで、ピークである1984年の三分の一程度に過ぎません(図1)。なぜ、こうも勢いが失われたのでしょうか?
1.排他的経済水域
ご存知のように、日本の漁業は漁を行う海域によって、遠洋漁業・沖合漁業・沿岸漁業の3つに分類されます。
遠洋漁業
世界の海が舞台。長い日数をかけたマグロのはえ縄漁業やカツオの一本釣漁業
沖合漁業
2~3日で帰港できる海域で行う。まき網漁法や底びき網漁法など
沿岸漁業
日帰りできる距離で行う。家族経営が多く、漁法や獲る魚介類も地域によってさまざま
このうち遠洋漁業は、戦後から昭和後期にかけて隆盛をきわめましたが、平成以降、大きく生産量を落としました。
最大の要因となったのは、1982年に採択された国連海洋法条約。同条約には、沿岸から200海里(約370km)の水域を各国の領海として宣言できる旨が定められており、これを排他的経済水域(Exclusive Economic Zone; EEZ)といいます。結果、日本の遠洋漁業は大幅な縮小を余儀なくされました。
2.漁業環境の変化
沖合・沿岸漁業についても、楽観できる情勢ではありません。
地球温暖化の影響で、日本の海面水温は2019年までのおよそ100年間で1.14度上昇しており、その影響は生態系や海流の変動という形で顕れています。
例えば、サケの夏季の分布可能域(水温2.7℃~15.6℃)は北へシフトしており、面積も約1割減少。類似の報告は、日本各地で枚挙にいとまがないほどです。
また、プラスチックごみによる海洋汚染も、水産業にとっては根深い問題です(参考記事:サステナブルな社会づくりの第一歩 2022年4月、プラスチック新法施行)。
3.経済的問題
3つめの問題として、水産業を取り巻く経済面の苦境が挙げられます。
まず、漁業支出の2割を占める燃油価格の高騰。新興国での需要拡大や円安などの要因で、その価格は急激な上昇傾向にあります。一方で水産物の小売価格は抑えられており、漁船を出しても利益を出しにくい状況が続くなか、廃業に踏み切る事業者様も少なくありません。
つぎに人手不足も深刻な問題です。漁業就業者は大きな減少トレンドにあり(図2)、水産加工製造業でも人手不足と労働者の高齢化への対応は喫緊の課題となっています。
必要迫られる水産改革
以上のとおり、わが国の水産業は現在、かつてない窮地に立たされています。ただ、国際的にみれば魚介消費量は増加傾向にあり、輸出のビジネスチャンスも小さなものではありません。改革の成否次第で、わが国の水産業をより堅固な産業に復興させることは十分に可能といえます。
1.改正漁業法
じつに70年ぶりの大改正となる同法は、わが国における水産業の発展を目的としており、水産庁が仕掛ける水産改革の指針に位置づけられています。
改正漁業法のポイントは、以下の3つです。
密漁対策
密漁多発を踏まえ罰則強化。最大3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金。個人への罰金としては最高額!
海面利用制度
既得権者や漁協、漁業者法人に優先して許可した優先順位規定を撤廃。イノベーションを促進!
資源管理
TAC(Total Allowable Catch;漁獲可能量制度)など、科学的根拠に基づいて持続可能な水産資源利用を行う
2.スマート水産業は復興の切り札となるか?
改正漁業法のうち海面利用制度の改正は、漁業経営の改善や養殖経営の展開を図ろうとする新規参入を促す性格のものです。
現在、食品業を見渡せばフードテックやスマートファクトリーに代表されるさまざまなイノベーションが耳目を集めていますが、水産業が成長産業となるには、同様の新しい動きが不可欠でしょう(参考:最先端技術は食品業界をどう変えるか? いま注目すべき3大フードテック)。
そのために期待されているのが、近年、クロマグロやウナギの例で注目される養殖技術やAI・ICTを駆使して生産性向上を図るスマート水産業です。産学官連携のもと、現在、急ピッチで研究と導入が進められています。
次世代の水産業と目されるスマート水産業は、単純に水産業をIT化する、といったものではありません。それであれば、もともと水産業で用いられる漁船はGPSや魚群探知機などのハイテク装備をいち早く導入しており、他産業よりも先進的といえます。惜しむらくは、これまでその貴重なデータを活用しきれていないという課題がありました。
スマート水産業の理想形は、漁業と資源評価と加工・流通の三者が、より緊密にデータ連携することにあります。中小規模の事業所が多数を占めるわが国の水産業では、労働力が分散されることで、どうしても全体の生産性を上げづらい事情があります。ですがスマート水産業によって産業全体が緊密に結びつけば、そうした弱点を克服できるでしょう。
例えば、漁獲情報を受け取った流通関係者が水揚げされる前に必要な魚を注文し、それを受けて水揚げされた漁獲物が自動的に仕分け・箱詰めされ、その日のうちに加工業者に配送される――といった効率的なロジスティクスが、今後は現実のものになる筈です。データベースの一元管理によってトレーサビリティも万全ですので、消費者もより安心して水産加工品を楽しむことができるようになるでしょう。
いま、水産業全体が変わろうとしています。こうした新しい産業の在り方は、単に業務効率を改善するだけでなく、若年世代を呼び込み、業界の活性化に繋がっていくことでしょう。
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よくある質問
- Q.事業者がスマート水産業を推進するうえで、補助金などはありますか?
- A.水産業のスマート化を実現すべく、水産庁は「水産業のスマート化推進支援事業」を実施しています。漁業者やサービス事業体によるスマート機械等の導入を支援する事業です。令和5年11月に発表された補正予算でも多額の予算が割かれており、今後の継続も既定路線。※なお、本事業は民間団体である一般社団法人マリノフォーラム21に委託されています。
その他、会計や受発注、ECなど、バックオフィスで使用するITツール/ソフトウェアについては、IT導入補助金を活用できます。
【参考】
・国土交通省「海岸の特徴」
・気象庁「親潮前線と黒潮前線、混合域」
・水産庁「数字で理解する水産業」
・水産庁「漁場環境をめぐる動き」
・水産庁「平成29年度 水産白書」
・水産庁「令和2年度 水産白書」
・水産庁「密漁を許さない」
・水産庁「スマート水産業の展開について」
・農林水産省「特集1 養殖技術開発の最前線(2)」