食品業のスマートファクトリー3大事例 2022年最新版

公開日:2022.7.29
更新日:2024.2.28

食品製造業成長の鍵、スマートファクトリー

官民足並みを揃え、目下、“食品工場のスマート化”が推進されています。
人口減少時代において、食品製造業の今後を左右するスマートファクトリー
背景を踏まえつつ、実際の事例をご紹介します。

食品工場のスマート化とは?

現在、官民足並みを揃え、食品工場のスマート化が推進されています。

ここでいう“スマート”は“スマートフォン”同様「洗練された」「賢い」「ハイテク」といった意味合いであり、旧態然とした工場の在り方から、AIやIoTを駆使した省力化・自動化への転換をめざそうというものです。

スマート工場/スマートファクトリーの概念は、人口減少時代において製造業が持続的成長を遂げるための切り札として期待されています。

2011年にドイツが国家戦略プロジェクト「Industrie 4.0」のなかで初めてスマート工場の概念を提唱してから、2017年に日本でも経済産業省が「スマートファクトリーロードマップ」を発表。「ものづくり企業は20〜30年後の未来に向けて、製造現場のデジタル化・ソフトウェア化への対応など7つの戦略課題に対応する必要がある」と述べています。

スマートファクトリー

無料情報誌 食品ITマガジンのダウンロードはこちら

食品製造業の課題

わが国の食品製造業は、製造業全体のGDPのうち13%、従業員数では15%を占める、国内最大規模の基幹産業です。人間生活の根幹に位置する業界の性質から、好不況の影響も受けにくく、周辺産業を牽引する重要な立場にあるといえるでしょう。

一方で、食品製造業は数多くの課題も抱えています。

労働生産性の低さ

食品製造業の課題のひとつが、労働生産性の低さです。

食品製造業の労働生産性は、ほかの製造業平均の6割とごく低い水準に留まっています。

結果として、利益率を高めづらく、従業員の賃金が伸び悩む結果となっているのは、大きな課題といえるでしょう。

pic05

労働人口減少が食品製造業を直撃する

pic06

ご存知のように、わが国の総人口は現在、長期的かつ急激な減少過程にあります。

2026年に1億2,000万人を下回り、2060年には9,700万人まで落ち込むと推計され、わずか30年余りの間でその減少率はじつに20%に及びます。経済への影響は、計り知れないといえるでしょう。

あらゆる業界で労働力不足が課題となるなかにあって、食品製造業は全産業に比して有効求人倍率が高く、慢性的な人手不足の現状が明らかになっています。非正規労働者の割合も高いため、好況時における他業種への労働力流出も避けられないでしょう。

無料情報誌 食品ITマガジンのダウンロードはこちら

スマートファクトリー、3つの事例

上述の課題を克服しうる施策として期待されているのが、食品製造業におけるスマート工場の実現です。なかでも代表的な3つの施策をご紹介しましょう。

ロボット

産業用ロボット

他の製造業ではすでにおなじみとなった産業用ロボットですが、食品製造業では実装について長年消極的でした。扱う食品が多品目にわたり、形状や性質も均一でないこと、安全性や衛生面をクリアするハードルが高いこともあって、人の目視による確認と手作業に依存する傾向が強かったためです。

ただ、技術力の高まりを背景に、食品製造業向け産業用ロボットの出荷台数は年々増加傾向にあります。生産性向上/人件費削減はもちろん、単純作業や苦渋作業を機械化することによる従業員満足度の向上など、副次効果も期待されるところです。

視覚的にも省人化を体現するロボットは、スマート工場の象徴といえる存在です。

AI

AI

すべての食品製造業で共通する重要な工程として、外観検査工程があります。

異物や不良品の混入がないか、包装や容器に印刷ミスがないか、そういった検品作業は安全性確保の砦として、これまで人間の目視に頼っていました。ですが、今後は機械に任せることが主流になるかもしれません。AI(ディープラーニング)を駆使した画像判定技術の進歩は目覚ましく、すでに熟練の作業員よりも速く高精度な検品が可能となっています。

AIの活躍の場は、現場作業だけに留まりません。生産計画策定の領域でも、経営者のよきパートナーになりつつあります。

大手食品メーカーでは、需要予測から生産・製造・販売・在庫計画をAIで高度化/最適化する統合管理システムが導入されており、在庫の適正化やフードロスの大幅削減を実現しています。収益力向上はもちろん、SDGs達成を両立する施策です。

IoT

IoT

産業用ロボットやAIよりも、比較的低コストで始められるスマート化もあります。それがIoT(Internet of Things)の導入です。

ごく簡単にいえば、モノをインターネットに接続する技術のことで、工場内の機械をインターネットに接続してセンサーなどから取得したデータを活用することで効率化を図ります。

例えば、工場内の温度管理などは、IoTの得意分野です。2021年に義務化されたHACCPへの対応に苦慮されている事業者様への最適なソリューションになりえます(参考記事:2021年6月HACCP義務化!各企業の導入状況と得られる効果まとめ)。

無料情報誌 食品ITマガジンのダウンロードはこちら

食品工場のスマート化に興味のある事業者様へ

食品製造業における中小企業の割合は99.6%と高い水準にあり、これまで大がかりな自動化や機械化、ITの導入が難しいとされてきました。ただ、逆にいえば、IT導入による生産性向上の伸びしろが大きいということでもあります。

内田洋行ITソリューションズが発行する食品×ITの専門情報誌「食品ITマガジン」Vol.12では、食品工場のスマート化について特集しており、より詳しい内容を網羅しています。他社のIT導入事例についてもご紹介していますので、ご関心をお持ちの事業者様は、ぜひ無料のPDF版をご活用ください!

食品ITマガジン紹介動画

食品業×ITの専門情報誌、食品ITマガジンについて【1分程度】の紹介動画をご用意しました。
購読は無料。バックナンバーについても無料ダウンロードが可能ですので、ぜひご覧ください。

よくある質問

Q.なぜ食品製造業でスマートファクトリーに注目が集まっているのでしょうか。
A.食品製造業は一般に労働生産性を高めづらく、また、生産年齢人口の減少から人手不足が大きな課題となっています。これまで他の製造業と比較して機械化や自動化が難しいとされてきましたが、技術の向上もあって現在、スマートファクトリー導入がさかんに進められており、食品製造業の課題解決の大きな助けになることが期待されています。
Q.スマートファクトリーとファクトリーオートメーション(FA)の違いは?
A.製造工程の自動化を図るファクトリーオートメーションに対して、IoTによるデータ取得とAIなどを活用したデータ分析によってより高度な工場の最適化をめざす概念がスマートファクトリーです。

【参考】
・経済産業省 中部経済産業局「スマートファクトリーロードマップ
・経済産業省 北海道経済産業局「食料品製造業へのロボット導入の促進に関する調査報告書
・経済産業省「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

プライバシーマーク