食品業のAI・自動化活用事例3選!今後の動向を解説

公開日:2023.5.30
更新日:2023.9.26

食品業の概況とスマート技術活用の動向

AIやロボットなどスマート技術の進化は多くの業界に変革をもたらしています。
食品業界においても、これまで手作業で行われることが多かった業務の自動化・効率化が加速しています。AIとロボットの自動化について特集した無料の情報誌食品ITマガジンもご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください!

食品業界が抱える課題

食品業界は私たちの日常生活に欠かせない重要な役割を果たしていますが、さまざまな課題に直面しています。
社会や環境の変化に対応し、持続可能性を追求しながら食品業界がさらなる成長と発展を遂げるためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

1. 食品ロス問題

食品ロスは、生産から流通、消費までの過程で発生する食品の廃棄物や損失を指し、食品業界が直面する大きな問題の一つです。

食品ロス

食品メーカーは小売業者の発注に確実に対応するため、実際に売れる数より多く製品を生産する必要があります。
小売業者に納品された製品も全てが消費者に行きわたる訳ではなく、賞味期限や消費期限などの問題で、実際には食べられる食品であってもルールに則って廃棄されるものが多くあります。

食品供給チェーンの途中段階である、生産段階や流通・販売段階でのロスが多く、環境への負荷や資源の浪費につながっています。

市場の変動に柔軟に対応しつつ、いかに食品ロスを削減するかという課題は、全ての食品製造業や卸売業にとって大きな課題となっています。

2. 加速する人手不足

全産業的に人手不足感は高まってきていますが、食品業界でも労働力不足は深刻な問題となっており、生産性の向上と労働力確保に向けた支援が求められています。

企業の雇用人員の過不足を示す数値である雇用人員判断指数を見ると、食料品製造業(中小企業)の雇用人員判断(DI)は製造業全般と比べても低く、今後の先行きもマイナスになることが見込まれています。

雇用人員判断指数(DI)

人手不足は生産性の低下や生産量の制約といった問題につながります。食品業界全体の持続的な成長に影響を及ぼすため、解消は喫緊の課題であるといえます。

3. 食品価格の高騰

食品価格の高騰は、消費者にとって経済的な負担となるだけでなく、食品業界にとっても重要な課題です。価格高騰の要因としては、原料費の上昇や生産コストの増加、気候変動や天候の影響、輸送費の増加などが挙げられます。

消費者物価指数

食品価格が高騰することで消費者の購買力に影響を及ぼし、食品業界において競争力や利益率の低下につながる可能性もあります。

原価管理は経営の根幹といえる課題ですが、今後その傾向が強まることは間違いありません。

食品業界は以上のような課題に直面しており、人の手だけではなく、AIの活用や自動化技術も導入を進めながら解決策を模索しています。持続可能な食品システムの構築や業界全体の発展のためには、これらの課題の解決が不可欠です。

食品業界でのスマート技術活用領域 3つの事例

近年、AIの進化は様々な業界に変革をもたらしていますが、食品業界も例外ではありません。
AIと自動化の活用によって、生産性向上や品質管理の向上などさまざまな利点をもたらしています。
食品業界でのスマート技術活用における代表的な事例3つをご紹介いたします。

1. AIによる需要予測

AIによる高い需要予測廃棄ロス削減に注目が集まっています。AIを使用した需要予測は、食品業界における生産計画や在庫管理において重要な役割を果たします。社内に持っている過去の売上データや、気象情報、周辺の市場動向など大量のデータを分析・学習することで、消費者の嗜好や需要の変動を予測することができます。

これにより、需要と供給のバランスを適切に保ちながら生産量を最適化し、在庫の過剰や不足を防ぐことができます。AIの予測精度は学習とともに向上し、将来の需要動向をより正確に予測することが期待されています。

2. AIと自動化の組み合わせによる食品製造プロセスの効率化

AIと自動化技術の組み合わせによって、食品製造プロセスの効率化が実現されています。

AIを活用したビジョンシステムやロボットによる自動化によって、製品の品質管理や包装作業を効率的に行う、などが例として挙げられます。
また、AIによるデータ解析や予測に基づいた生産計画の最適化も可能となります(参考記事:食品工場スマート化3大事例 2022年最新版)。


3. サプライチェーンの最適化

あらゆる製造業にとってサプライチェーンの最適化は悩みの種ですが、食品製造業は消費期限や賞味期限など鮮度の期限が存在するため、特に課題を抱えやすい状況にあります。

営業部門は納期遵守と顧客満足度向上のため注文変更に迅速に対応する必要があり、製造部門は生産効率を高め、リードタイムを短縮する必要があります。生産管理部門と購買部門は在庫を減らし、キャッシュフロー改善を目指しています。
このように部門間で相反する条件への折り合いをつけながら製造を行うため全体での最適化が難しいですが、AIの活用により、サプライチェーン管理の精度と効率が向上する事例が増えています。

AIによるリアルタイムの在庫管理や需要予測に基づいた物流ルートの最適化は、在庫の適切な配分や効率的な物流を実現します。
さらに、AIを活用したサプライチェーン分析により、調達や供給のリスクを予測し、迅速な対応策を立てることも可能です。
これによって、生産遅延や在庫切れなどのリスクを最小限に抑えることができます。

サプライチェーン

食品業界におけるAIと自動化の活用は、生産性品質管理の向上サプライチェーンの最適化などを実現するための有力な手段です。より高度な予測や自動化技術の進歩、データの活用などによって、生産効率の向上やコスト削減、消費者ニーズへの迅速な対応が可能となります。
今後、AI技術の進化により、さらなる食品業界の効率化や品質向上が期待されています。

スマート技術の併用に向けて

食品業界において、AIと自動化の活用はますます重要性を増しており、併用によって大きな変革を遂げることが期待されています。

生産プロセスにおいては、効率化や品質管理の向上により安全で高品質な製品を提供し、サプライチェーン全体においては、最適化によって食品流通や物流を効率化し持続可能な食品システムを構築するなど、人の手だけではなく最新技術と並行しながら環境改善が目指されています。
食品とテクノロジーの融合も進み、今後は仮想現実や拡張現実を活用した食体験や、ロボットやドローンによる配送など、新たな食品サービスの形が登場するかもしれません。

食品業界はAI・自動化の力によって大きく変化し、持続可能で効率的な未来を築いていくことが期待されています。これからの展望を見据えながら、産業全体の発展に向けて取り組んでいきましょう。

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