未曽有の食品価格高騰! いま見直すべき食品業の原価管理

公開日:2022.11.30
更新日:2023.9.26

食品業界で高まる原価管理の重要性

2022年、国際情勢や異常気象で食品価格が高騰するなかで、食品業における原価管理が大きな課題となっています。本稿では、他業種よりも原価管理が重要となる食品業界の特殊な事情についておさらいしつつ、最適化を図るためのソリューションまでをご紹介します。

止まらぬ食品価格の高騰

2022年は、歴史的にみても稀な食品価格高騰の年となりました。

小麦を例にとれば、偏西風の蛇行や地球温暖化を主因とする2021年の異常気象で、生産量第4位のアメリカと6位のカナダがそれぞれ46.7℃/49.6℃の記録的な熱波に襲われ、壊滅的な不作を招きました。新型コロナ禍による生産力低下や輸送停滞が追い討ちとなるなか、価格の高止まりを決定づけたのは、2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻です。

戦災
表 小麦生産量ランキング
1位 中華人民共和国
2位 インド
3位 ロシア
4位 アメリカ合衆国
5位 フランス
6位 カナダ
7位 ウクライナ

2022年3月時点で小麦の国際価格は史上最高値を更新。農林水産省は輸入小麦の政府売渡価格について、17.3%の引き上げを発表しました。

小麦の生産量世界第3位のロシアは食糧輸出に政治的な制限をかけており、同じく7位につけるウクライナも輸出量が半減。頼みの綱となる第2位の生産国インドも2022年、記録的な猛暑と不作に見舞われ、国内流通を優先して小麦の輸出禁止を決定。5位のフランスも熱波による干ばつを受け、自国の食糧生産に危機感を募らせています。

空前の値上げラッシュは、小麦に限った話ではありません。大豆やとうもろこし、コーヒーなど多品目で同様に値上がりしており、当然ながら、穀物飼料で飼育する食肉価格にも影響が出ています。

原価管理の見直しは喫緊の課題

こうした食品価格の高騰を一時的なものと考えるのは、楽観的に過ぎるでしょう。開発途上国の人口増加により国際的な食糧需要は激増しており、エネルギーのバイオ燃料依存が進むなかで穀物価格に跳ね返ることも予測されます。家計に直撃を受ける一般家庭の悲鳴の陰で、食品業の事業者様は、より深刻な状況へ向き合っているのではないでしょうか。

食品業はコモディティ化によって商品の差別化が難しく、競合との価格競争が激しい業種です。したがって、利益率も低い水準に設定せざるを得ません。財務省が発表した2022年1~3月期の統計をみると、製造業全体の経常利益率が8.5%であるのに対し、食品製造業は3.7%に留まっています()。

そんななかで、原材料費に直結する食品価格の高騰は、多くの食品事業者様にとって死活問題といえるでしょう。いくら売上を上げても、原価次第で赤字が拡がるケースもあります。精緻な原価管理は経営の根幹ともいえる課題ですが、食品業においては、今後、その傾向が強まることは間違いありません。

利益率

食品業の原価管理が抱える特殊な事情

原価計算

それでなくとも、食品業の原価管理は複雑です。

会計上の売上総利益(粗利)は、総売上から売上原価を差し引いたものになります。製造業における製造原価は「原価の三大要素」である材料費・労務費・経費で構成されており、利益を拡大するためにはこれら3つを削減していく必要があります。

粗利も同様に分解して純利益まで算出しますが、そちらの詳述は省き、別表に記載するに留めます。

表 製造業の原価構成図
総売上 売上総利益
(粗利)
営業利益 経常利益 純利益
特別損益・税金
営業外損益(支払利息など)
販売管理費(間接部門の人件費・福利厚生費・通信費・水道光熱費など)
製造原価 材料費(原料費・備品費など)
労務費(製造にかかわる人件費)
経費(施設の賃貸料・設備の減価償却費・製造に関する水道光熱費など)

ここまでは日商簿記2級水準の一般的な知識ですが、食品業ではさらに、原価計算に特殊な要素が絡んできます。

以下、3つのポイントに絞ってご説明しましょう。

原料価格の値動きが激しい

国際情勢や気候条件、あるいは季節によって、原料となる食品の値動きが激しいことは、食品業の原価管理を複雑なものにしています。

原価配分にしても先入先出法・後入先出法・平均原価法から適切な方法を選ばなければ、正確な原価管理は覚束ないでしょう。

値動き

多品種少量生産

食品業界は現在、ユーザーの多様な嗜好に合わせた多品種少量生産の方向へ舵を切っています。

品種ごとの細かな原価管理が必要となる一方で、生産効率の維持を両立しなければならず、原価管理業務も煩雑になりがちです。

多品種少量生産

複雑な歩留まり

食品業の原価管理を複雑にさせる最大の要因が歩留まりです。

食品業における歩留まりとは、簡単にいえば可食部位と考えて問題ありません。

たとえば、1kgの魚を下ろして骨や内臓を取り除き600gになった場合、歩留まり率は60%です。

この魚を15,000円で仕入れた場合、歩留まり原価は仕入れ値を0.6で割って25,000円と算出されます。

食材は加工によって可食部位の量が大きく減少します。魚は個体の栄養状態や種類によって差異が大きく、野菜も季節ごとに水分量が増減します。

そうした事情から歩留まり率の計算は容易ではありませんが、正確な原価管理には必要不可欠な手順となります。


食品業の原価管理ソリューション

食品業の原価管理は重要課題でありながら、同時に煩雑で、一筋縄ではいきません。最も有効な施策といえるのが専用システムの導入です。内田洋行ITソリューションズでは、原価管理にお悩みの食品事業者様向けに、スーパーカクテルCore FOODs 原価をご案内しています。同製品は、原価見直しや経営判断を支援する基幹業務システムとして、多くの食品事業者様からご好評を戴いており、7年連続で業界シェアNo.1※を獲得しています。製品の詳細については、下記のバナーよりご覧ください。

※出典:ITR「ITR MARTKET VIEW:ERP市場2022」ERP市場-食品:ベンダー別売上金額シェア(2015-2021年度予測)
 スーパーカクテルCore、スーパーカクテルイノーヴァが対象

【参考】
・総務省統計局「世界の統計2022
・農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定について
・農林水産省食料産業局「食品製造業をめぐる情勢
・気象庁「世界の異常気象速報
・財務省「四半期別法人企業統計調査(令和4年1~3月期)

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