食物アレルギー表示の最新情報とポイント

公開日:2024.4.19
更新日:2024.4.19

見直しが続く食物アレルギー表示の動向と
表示作成のポイント

2015年に食品表示法が施行され、現在も見直しが続いています。2023年3月には、食物アレルギーの特定原材料に「くるみ」が追加され、2024年には特定原材料に準ずるものについても「マカダミアナッツ」が追加されました。一方で「まつたけ」は削除されています。2024年の調査次第ではさらなる見直しも検討されており、今後の動向が注目されています。
消費者の健康問題にも大きく関わる食物アレルギー表示について、2024年4月時点での情報を踏まえて解説します。

食物アレルギー表示の基礎知識

食物アレルギーは、食物を摂取した際に身体が食物に含まれるたんぱく質等(アレルゲン)を異物として認識して過剰に防御することで起こる症状です。主な症状は「かゆみ・じんましん」「唇やまぶたの腫れ」「嘔吐」「咳・ぜん息」などがあります。意識がなくなったり、血圧低下によるショック状態に陥るような重篤な症状を引き起こす場合もあり、最悪の場合では死に至ることもあります。
食物アレルギーは個人差があり、原因となるアレルゲンと、症状を引き起こす量が異なります。なお、食物不耐症は免疫に作用するものではないため、食物アレルギーには含まれません。
食物アレルギーを抱える消費者が安心して食事を楽しむため、食品事業者が信頼される製品を市場に提供するためには正確な食物アレルギー表示が必要です。食品事業者は食品表示基準に則り、正しく表示することが求められます。

食物アレルギー患者数

日本における食物アレルギー患者数の正確な人数は把握されていませんが、乳幼児の5~10%、学童期の1~3%が何らかの食物アレルギー患者であると考えられています。
年齢別にみても乳幼児から学童期までの割合が高く、年齢が上がるにつれて減少する傾向があります。

年齢別患者数

食物アレルギー表示制度の概要

食物アレルギー表示は、特定原材料を含む容器包装された加工食品、特定原材料由来の添加物を含む生鮮食品の一部及び特定原材料に由来する添加物について表示が求められています。
重篤度・症例数の多い8品目については「特定原材料」として食品表示基準で表示が義務付けられ、過去に一定の頻度で健康危害が見られた20品目は「特定原材料に準ずるもの」として表示が推奨されています。
これらの内容については、概ね3年ごとに実施されている実態調査の結果を受けて見直しが検討されています。近年においては、木の実類が原因となる食物アレルギーが増加しているため、これらの品目に追加されています。

木の実類の内訳
種類 n 全体に対する割合
クルミ 463 7.6%
カシューナッツ 174 2.9%
マカデミアナッツ 45 0.7%
アーモンド 34 0.6%
ピスタチオ 22 0.4%
ペカンナッツ 19 0.3%
ヘーゼルナッツ 17 0.3%
ココナッツ 8 0.1%
カカオ 1 0.0%
クリ 1 0.0%
松の実 1 0.0%
ミックス・分類不明 34 0.6%
合計 819

食物アレルギー表示に必要な知識

食物アレルギーを表示しなければならないものは何か、表示対象となるアレルゲンは何か、例外的な表示方法としての一括表示など、押さえておきたいポイントがいくつもあります。
ここではそれらのポイントについて解説します。

1.食品表示について

販売される食品には食品表示法に基づいた食品表示基準に従った表示が必要です。食品表示基準では加工食品、生鮮食品及び添加物についての表示方法を定めています。
食品表示法は2015年に施行後も毎年のように改正が続いているため、食品表示は継続的な変更対応が必要になります。

■食品表示法の対象
 ・販売される食品
■食品表示法の対象にならないもの
 ・配合飼料、医薬品、雑貨類
■食物アレルギー表示の対象範囲
 ・容器包装に入れずに販売する食品(バラ売りや量り売りなど)
 ・設備を設けて飲食させる食品(飲食店で提供される食品や出前など)
 ・酒類(食品製造時に使用されるアルコールも含む)

2.表示対象となるアレルゲン

表示対象は食物アレルギー表示における義務表示と推奨表示は食品表示基準により定められています。
特定原材料は2023年に「くるみ」が追加され8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ))が指定されています。また、表示推奨品目は20品目となり、「まつたけ」が削除され、「マカダミアナッツ」が追加されています。


食物アレルギー表示対象品目
表示 用語 品目
義務 特定原材料(8品目) えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)
推奨 特定原材料に準ずるもの(20品目) アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マカダミアナッツ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン

3.加工食品における食物アレルギーの表示

原材料欄と添加物欄に、含まれている特定原材料等を記載します。原則としては個別表示になりますが、表示スペースが限られている等により個別表示が適さない場合には例外的に一括表示が認められています。

個別表示(原則)

特定原材料等を原材料として含んでいる、添加物が特定原材料等に由来していることを原材料名や添加物名の後に括弧書きで表示します。

・原材料の表示例
 マヨネーズ(卵を含む)、チョコレート(乳成分を含む)
 ※「乳」については、「乳成分を含む」と表示します。
・添加物の表示例
 キチン(かに由来)、カゼインナトリウム(乳由来)
 ※添加物が特定原材料等に由来する場合は、「(~由来)」と表記するのが原則です

一括表示(例外)

個別表示で表示できない場合や個別表示がなじまない場合は、一括表示することが可能です。
一括表示をする場合は、その食品に含まれる全ての特定原材料等について、原材料欄の最後と添加物欄の最後に「(一部に○○・○○を含む)」と表示します。

【一括表示できる場合の例】
・個別表示よりも一括表示の方が文字数を減らせる場合で、表示面積に限りがあり、一括表示にしないと表示が困難な場合
・食品の原材料に使用されている添加物に特定原材料が含まれているが、最終食品においてはキャリーオーバーに該当するため、その添加物が表示されない場合

■一括表示の具体的な表示例
原材料と添加物で事項欄を分けて表示する場合
名称 チョコレートケーキ
原材料名 準チョコレート(パーム油、砂糖、全粉乳、ココアパウダー、乳糖、カカオマス、食塩)、小麦粉ショートニング、砂糖、、コーンシロップ、乳又は乳製品を主要原料とする食品、ぶどう糖、麦芽糖、加工油脂、カラメルシロップ、食塩、(一部に大豆・乳成分・小麦・牛肉・卵を含む)
添加物 ソルビトール、酒精、乳化剤、膨張剤、香料、(一部に大豆・乳成分を含む)
原材料欄に添加物を記載する場合
名称 チョコレートケーキ
原材料名 準チョコレート(パーム油、砂糖、全粉乳、ココアパウダー、乳糖、カカオマス、食塩)、小麦粉ショートニング、砂糖、、コーンシロップ、乳又は乳製品を主要原料とする食品、ぶどう糖、麦芽糖、加工油脂、カラメルシロップ、食塩/ソルビトール、酒精、乳化剤、膨張剤、香料、(一部に大豆・乳成分・小麦・牛肉・卵を含む)

  • 表示例中の太字は特定原材料等を含む(由来する)食品又は添加物です
  • 全粉乳、小麦粉等の代替表記や拡大表記に該当する特定原材料等も、一括表示する必要があります

4.表示のポイント

表示を作成する際のポイントをいくつかご紹介します。
今回ご紹介したもの以外については、食物アレルギー表示ハンドブック等を確認するなどして間違いのないように作成しましょう。

1.繰り返しになる特定原材料等の省略

個別表示をする際、2種類以上の原材料や添加物を使用している製品で、同一の特定原材料等が含まれている場合は、そのうちのいずれかに特定原材料等を含むことを表示すればそれ以外の原材料や添加物については表示を省略することができます。

例)ドレッシング

特定原材料等を全て個別表示する場合
原材料名 食用植物油脂、砂糖、醸造酢、マヨネーズ(大豆・卵を含む)、醤油(大豆・小麦を含む)、たん白加水分解物(大豆を含む)、卵黄(卵を含む)、食塩、酵母エキス(小麦を含む)
添加物 調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタンガム)、甘味料(ステビア)、乳化剤(大豆由来)
繰り返しになる特定原材料等を省略する場合
原材料名 食用植物油脂、砂糖、醸造酢、マヨネーズ(大豆・卵を含む)、醤油、たんぱく加水分解物、卵黄、食塩、酵母エキス(小麦を含む)
添加物 調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタンガム)、甘味料(ステビア)、乳化剤

  • マヨネーズに「大豆・卵を含む」と表示することで、大豆を含む、醤油、たんぱく加水分解物、乳化剤の「大豆を含む」及び「大豆由来」の表示と、卵を含む卵黄の「卵を含む」の表示を省略できます
  • 酵母エキスに「小麦を含む」と表示することで、同様に小麦を含む、醤油の「小麦を含む」の表示を省略できます
  • 一般的に、アレルゲンが含まれていても摂取可能と言われている食品(醤油の小麦と大豆、味噌の大豆、卵殻カルシウムの卵など)が含まれている場合で、繰り返しになる食物アレルギー表示を省略する場合において、一般的に摂取可能といわれている食品以外の同一の特定原材料等が含まれる原材料に含む旨を表示することが望ましいです

2.代替表記と拡大表記

個別表示をする際に、代替表記または拡大表記を表示する場合は特定原材料等を含む表示を省略することができます。

・代替表記
 特定原材料等と表示方法は異なるが、特定原材料等と同じものと理解できる表記(表記方法は定められたものに限定
・拡大表記
 特定原材料または代替表記を含むことで、特定原材料等を使ったものであることが理解できる表記

特定原材料の表記例
特定原材料 代替表記 拡大表記(例示)
えび 海老、エビ えび天ぷら、サクラエビ
かに 蟹、カニ 上海がに、カニシューマイ、マツバガニ
くるみ クルミ くるみパン、くるみケーキ
小麦 こむぎ、コムギ 小麦粉、こむぎ胚芽
そば ソバ そばがき、そば粉
玉子、たまご、タマゴ、エッグ、鶏卵、あひる卵、うずら卵 厚焼玉子、ハムエッグ
ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム アイスミルク、ガーリックバター、プロセスチーズ、牛乳、生乳、濃縮乳、乳糖、加糖れん乳、乳たんぱく、調製粉乳
落花生 ピーナッツ ピーナッツバター、ピーナッツクリーム

3.表示が免除される場合

抗原性が認められない食品や添加物、特定原材料に由来する香料やアルコールについては表示が免除されています。

4.表示対象品目数の表示

特定原材料に準ずる20品目については表示義務がありませんが、表示がないだけだとその食品に含まれているのか含まれていないのかが分かりません。そのため、特定原材料8品目のみが表示対象なのか、特定原材料に準ずるものを含む28品目が対象なのかを明確にすることが望ましいとされています。

【表示例】
 「この食品は28品目のアレルゲンを対象範囲としています」「アレルゲン(28品目対象)」「アレルゲン(特定原材料のみ)」

5.意図しない混入への対応(コンタミネーション)

製品を製造する際、原材料として使用していないにもかかわらず、特定原材料等が意図せず混入してしまう場合があります。
同じ製造ライン(機械・器具等)で特定原材料を使用した食品と、使用していない食品を製造した場合などがそれにあたります。食物アレルギーは、ごく微量のアレルゲンであっても発症する可能性があるため、混入の可能性が排除できない場合には注意喚起表示をすることが望ましいでしょう。


消費者への対応はどうすべきか

細心の注意を払っていても特定原材料等の表示が漏れてしまっていた場合や、消費者からの問合せがくることがあります。そうした場合、自主回収や消費者に適切な情報を提供するなどの対応をとることが重要です。
対応の遅れや、不適切な対応は信頼を落とすことになり事業の存続すら危ぶまれる状況を招くことにもなりかねません。

誤った表示がされた製品を出荷してしまった場合

製品に適切な表示がされていなかった場合、食物アレルギー患者の健康危害が発生する可能性があります。
まずは誤った表示がされている特定原材料等の食物アレルギー患者に向けて早急に情報提供をする必要があります。その際、それ以外の食物アレルギー患者には健康危害発生の可能性がないことを明示することも不安を助長させないために必要です。

自主回収をする際には行政機関(管轄の保健所または消費者庁)への届出が義務付けられています。
自主回収届出制度については下記ウェブサイトをご確認ください。

厚生労働省「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」

消費者からの問合せ対応

食品表示だけでは全ての情報を伝えきれないため、消費者から問い合わせが入ることは少なくありません。消費者からの問い合わせに対応できるよう、製造工程や原材料規格書などの情報を整理しておくことが重要です。

対応の際は、相手が知りたい情報についてはっきり理解した上で回答しましょう。理解できないまま相手の求めていない回答をしてしまうと不信感を抱かせてしまいます。また、手元の情報・資料が不足しているなどした場合は、一旦保留し、正確な情報・資料を入手後に回答しましょう。

【問い合わせの例】
・最後に括弧書きにされているものは、どの原材料に使われていますか?
・同じ製造ライン(機械・器具など)で該当する特定原材料等を含む製品を作っているか教えてください。
・食物アレルギー症状が起きてしまったのですが、原因が分からないので原材料や使用料について詳しく教えてください。

その他

レストランのような食品表示基準によって表示義務がない条件下で食品を提供する場合においても、食物アレルギー患者からの問い合わせに適切な対応ができるようにメニューやウェブサイトに特定原材料などの表示をしたり、スタッフ教育を行うなど、健康被害を未然に防ぐ取組みが必要です。
消費者庁では、外食・中食事業者や消費者向けに外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供のための啓発資料を作成しています。参考にされると良いでしょう。

まとめ

食品表示の食物アレルギー表示は、食品事故を防止するために重要な情報です。
おおよそ3年ごとに消費者庁で実施される実態調査の結果で該当品目の見直しがあるため、常に最新の情報を得て対応していきましょう。

多くの原材料を使用する加工食品の表示作成には手間と時間がかかりミスも許されません。手作業で作成するのは限界があるため、システムを利用して効率的に管理するのがお勧めです。
食品大目付 そうけんくん」は食品表示ラベルの作成だけではなく、原材料や製品情報の管理、栄養計算にも対応し、迅速な法令改正を可能にする食品表示管理システムです。


【関連情報】

当サイトでは、食品に携わる皆さまに向けた情報を発信しています。食品表示に関する記事もございますので、是非そちらもご覧ください。

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