新型コロナ禍による食品業界への影響は【2022年総まとめ】

公開日:2022.03.31
更新日:2024.07.03

新型コロナ禍は食品業界になにをもたらしたか?

新型コロナ禍による日本経済への爪痕は深く、比較的安定しているとされる食品業界でさえ、その例外ではありません。統計を紐解きながら、消費者の需要トレンドの変化や各事業者の動向までおさらいしていきましょう。

食品業の被害は全業界でみても深刻

令和2年(2020年)以降、新型コロナウイルスの感染拡大は日本経済に根深い影響を残しており、先の見えない情勢がいまなお続いています。なかでも食品業界は、今回の騒動で最も翻弄された業種のひとつといえるのではないでしょうか。

本稿では、新型コロナウイルス禍による食品業界への影響を総括し、それに伴う消費者トレンドの転換、ウィズコロナ時代に向けた食品業の動向や展望までをまとめました。

外食産業への影響

相次ぐ緊急事態宣言、外出自粛要請や時短要請、各種イベントの中止を受け、特に深刻な被害を受けたのは外食産業です。

農林水産省の統計では、2020年の外食市場全体の売上高は前年比較で15%減

これは平成6年(1994年)の調査開始以来、最大の下げ幅とされています。

新型コロナ禍関連倒産数の業種別統計では、令和3年(2021年)3月末時点でホテル・旅館やアパレル産業を抑え、飲食店が最多となっています(別表)。

【表】新型コロナウイルス関連倒産数(業種別件数上位)

業態 件数
1位 飲食店 205
2位 建設・工事業 110
3位 ホテル・旅館 86
4位 アパレル小売 67
5位 食品卸 62

農林水産省「新型コロナウイルス感染症による影響と対応」を基に作成/2021年3月31日時点の数値

食品産業全体への波及

外食産業のほかにも、新型コロナ禍を端緒とする休校やオンライン授業が相次いだことで、給食産業の売上にも小さからぬ影響が出ました。

さらに、関連する食材卸食品製造生産者などへの波及もそれぞれ甚大です。例えば、業務用牛乳の消費が激減したことで大量の生乳が余剰在庫となった騒動などは、記憶に新しいところでしょう。

食品産業全体への波及

酪農家の窮状を打開すべく、牛乳を使ったレシピ情報がWebに多数出回るなど支え合いの動きがみられ、新型コロナ禍に関連するなかでは貴重な明るいニュースとなりました。

食品価格の高騰

食品価格の高騰

新型コロナ禍の影響は、物価の変動にも色濃く顕れています。

生産能力低下やサプライチェーンの混乱を背景に、国際市場における食品価格は空前の値上げラッシュ。

価格が高騰した品目は、食肉・大豆・小麦・とうもろこし・コーヒーなど多岐にわたり、それに伴いパンやパスタ、醬油や食用油などの加工品/調味料も軒並み高騰の傾向を示しました。

例えば、輸入/国産牛肉の価格は平年比でそれぞれ109%/104%、小麦粉の価格も2020年との比較で111%まで値上がりしています(※農林水産省調べ/2022年3月時点)。

食料自給率37%と低水準に留まる日本において、家計への直撃はもちろん、企業の利益率低下は避けられません。今後の動向にも、注視したいところです(参考記事:未曽有の食品価格高騰! いま見直すべき食品業の原価管理)。

ライフスタイルの変化、新しい取り組み

一方で、明るい兆しもあります。外食機会が減ったことで、内食消費については増加傾向にあり、調理疲れから惣菜や冷凍食品・レトルトなどの売上が伸長傾向にあるほか、ウイスキー・鯛・チューハイ・カクテル・うなぎのかば焼きなど、家飲みや家庭での高級食材へ支出がシフトしています()。いわゆる“巣ごもり需要”です。

ほかに特徴的といえるのが、外出機会減少による運動不足への懸念から、消費者動向に健康意識の高まりが色濃く表れていることでしょう。

例えば、ウイスキーの消費率について36.6%と目立って上昇しているのは、低カロリー・低糖質という特徴に後押しされた結果と考えられます。その他、免疫を上げる健康食品やサプリメントの需要も高まっており、2020年の健康食品市場も前年比増を記録しました。

【図】2020年に家計消費の上昇率が高かった品目

内食については増加傾向

経済産業省「【家飲みでプチ贅沢?】withコロナにおける食品市場の変化を探る」を基に作成

代替肉イメージ

より積極的な事業再構築の事例として、代替肉(Plant Based Meat)の開発・改良に取り組む企業もあります。代替肉とは、大豆やそら豆など植物由来素材を原料に肉の食感を再現した製品で、欧米では脱ミートの潮流を受けてヴィーガンを中心に市民権を得ている新食材。2020年時点での国際市場規模は110億ドルといいますから、ブームの過熱ぶりが窺えます。

日本製の代替肉はヴィーガン向けというよりは低コレステロールな健康食という位置づけで、ウィズコロナ時代の健康志向とも結びついて、ファストフード店のみならずスーパーやレストランでも見かける機会が増えてきました。価格がやや高いという難点はあるものの、国際的には市場拡大が予測されており、引き続き動向について注目したい分野です(参考記事:いま注目すべき3大フードテック 最先端技術は食品業をどう変える?)。

ほかにも、フードデリバリーやネット通販の需要が大幅に伸びていることに着眼し、実店舗と並行して宅配型のネットスーパーに力を入れる企業の報告もあります。配送料が別途かかりますが、重い荷物を運ばなくて済むため、女性のお一人住まいや高齢者世帯にとっても嬉しいサービスです。

未曽有の混乱のなかでも食の安定供給が果たされたのは、ひとえに食のインフラを支える各事業者さまの、こうした創意や機転、奮闘によるものといえるでしょう。

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正念場は続く

新型コロナ禍が残した爪痕は深く、回復にはまだ多くの時間を要することは間違いありません。現在も、多くの食品業事業者さまがアフターコロナ/ウィズコロナの時代に対応すべく、事業内容のアップデートに勤しんでおられます。内田洋行ITソリューションズでは、そうした事業者さまにとって有益な情報提供ができるよう、今後も努めてまいります。

中小企業庁も現在、新型コロナ禍の苦境のなかで巻き返しを図る事業者さまに向けて、事業再構築補助金の公募を進めています。こちらも活用事例含め記事/資料にして公開しておりますので、ぜひご活用ください。

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