食品業界の働き方改革 2024年版

公開日:2024.10.03
更新日:2024.10.15

食品業界の働き方を考える

働き方改革関連法は、時間外労働の上限設定、有給休暇の取得推進、同一労働同一賃金の実現など、多岐にわたる規定を含んでいます。 本稿では、働き方改革関連法の概要と食品業の働き方改革について、分かりやすく解説します!


働き方改革関連法とは

2018年に成立した働き方改革関連法は、労働環境の改善と働き方の多様化を目的としています。

具体的には、長時間労働の是正を促進し、過労死や働きすぎによる健康リスクを軽減するための規制が含まれています。


食品業界では厳しい労働環境が指摘されており、特に製造・流通業務は過酷な労働条件が多いとされてきました。
この法律の施行により、勤務時間や残業の管理が厳密化されることで、労働者の健康が守られ、生産性の向上が期待されています。

企業には多様な働き方の導入が促進されており、柔軟な労働体制が整備されつつあります。労働者のライフスタイルや家庭環境に応じた勤務形態が選択できる環境が求められています。

2020年4月1日から中小企業にも導入された「時間外労働の上限規制」では、時間外労働の上限が1ヶ月45時間1年360時間と定められました。臨時的な特別の事情がある場合でも、年間720時間以内に制限され、単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内とする必要があります。
これにより、企業は残業時間の厳格な管理、働き手の健康維持を求められるようになりました。

食品業界でも、製造や配送業務などでは時間外労働が常態化している場合が多く、適正な労働時間の確保が不可欠です。労働者が健康であることは、結果として製品の品質向上にも寄与するため、企業にとっては重要な課題です。

2023年4月1日から施行された「月60時間超の残業の割増賃金の引上げ」により、月60時間を超える残業に対しては従来の割増賃金率から50%へと引き上げられました。
これにより、企業は適切な労働時間管理を行い、従業員の過剰な残業を抑制する必要があります。
また、割増賃金の計算方法を見直し、正確に対応することが求められます。

食品業界の労働課題

食品業界における労働問題は一層深刻化しており、企業の持続可能性を揺るがす要因となっています。
急速な少子高齢化と人手不足が相まって労働力の確保が困難になりつつあり、働き方改革関連法の影響で労働環境の改善は急務とされています。
しかし、そのためのコストや労務管理の負担が企業経営に重くのしかかることから、一筋縄ではいかない状況です。

担い手の減少は、食品業界において深刻な課題です。特に生産年齢の高まり労働人口の減少が進行する中で、人手の確保がこれまで以上に難しくなっています。それを前提とした経営にシフトしなければ、企業の存続自体が危うくなるでしょう。

労働力を維持するため働き方改革に取り組む企業も少なくありませんが、実際に効果が出るまでは一定の時間がかかるため、業界全体での取り組みによる具体的な改善が急がれています。


AIやロボティクスなどの先端技術を導入し、労働の効率化を図ることも一つの方法ですが、同時に労働環境の改善報酬の見直しなども必要です。

現場で働く人々が働きやすい環境を提供をするとともに、食品業界の魅力を広く発信し、若者だけでなく様々な層の労働者から選ばれる企業づくりが成長に不可欠です。

長時間労働は、食品業界での主要な問題の一つです。現時点でも、法改正により多くの企業が残業時間の上限を設ける必要性に直面していますが、実際の労働環境は依然として厳しい状況です。

繁忙期においては、労働者が必要以上に働かざるを得ないケースが多くみられ、この状況は労働者の精神的・身体的な健康を害するだけでなく、企業の生産性や業務効率にも悪影響を及ぼします。

労働時間の長期化により、結果として離職率の増加や新たな人材の確保が困難になる問題も生じています。

図2で示すように、働き方改革に「まだ取り組めていない」と回答したする割合は6割ほどと未だ多く、働き方改革に取り組まないと、既に働いている人の離職を防げず、今後の採用も困難となりかねません。
意識の改革を早急に進めていく必要があります。


食品業界が抱える「長時間労働問題」に対して、企業は労働時間の短縮に向けた取り組みを進める必要がある一方で、業務の効率化を図ることも求められています。

図3では、業種別の働く時間を示していますが、食品産業の働く時間は、他産業と比較しても長い傾向にあることが分かります。超過勤務時間も多く、特に食品製造業、飲食店では多い結果となりました。

長時間労働の一因として、生産計画の管理が適切でないことも挙げられます。
生産スケジュールの的確な管理が行われていないため、非効率な生産となっている場合があります。

適格な生産計画を立てることも、長時間労働を防ぐために有効です。


労働者を守るために、労働時間の適切な管理、生産計画を的確に立て業務を効率化することが不可欠です。

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食品業は機械化・DXが難しい業種とされており、人の手による工程が多くなりがちです。
導入によるイニシャル・ランニングコスト増、デジタル技術に詳しい人間が組織にいない、といった理由で忌避する傾向が明らかになっており、特にIT投資が難しい中小企業では、従来の手作業や紙ベースの管理に頼らざるを得ず、DXになかなか踏み切れないといった状況です。

デジタル技術を活用することで、労働者のスキルが向上し、生産性や精度が高まりますが、技術導入が遅れるとこれらのメリットを享受することができません。
さらに、労働市場においてデジタルスキルを持つ人材の獲得が困難になると、企業の競争力低下にもつながりかねません。

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食品業の働き方改革に向けた農林水産省の取り組み

農林水産省は、食品業界における働き方改革を推進するため、労働環境の整備生産性の向上に焦点を当てた多岐にわたる施策を展開しています。

1. 週休2日/年次有給休暇の取得しやすい環境


週休2日/年次有給休暇の取得を促進するため、環境・法整備が進められています。
2019年4月1日から施行された年次有給休暇の時期指定では、「使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、年5日労働者の希望から時期を指定して取得させる必要がある」と定められています。

食品業界は長時間労働が常態化しやすく、改善には、企業の意識改革とともに労働者が休暇を取りやすい環境を整えることが必要です。労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えることは、結果的に企業全体での生産性向上につながります。

2. 労働効率を向上させるための労働体制の見直し


従業員の作業負担を軽減しつつ生産性を高めるためには、業務フローの改善やデジタル技術の導入が不可欠です。業務を見直さなければ、長時間労働/時間外労働が続き、負担も増すばかりです。

特に、業務の属人化アナログ業務の解消は労働効率を向上させるために重要です。デジタルツール活用による業務フローの構築と標準化、データ共有による情報の一元管理によって、誰もが業務に対応できる仕組みを作っていくことが求められます。
意識部分だけでなく、属人化しない仕組みをつくっていくことで、担当者がいないため対応せざるを得ないといった状況を防ぐことができます。

また、従業員の作業負担を認識するため、企業が従業員の労働時間について正確に把握することも必要です。
企業はこうした一連の対策を通じて、労働者が安心して働ける環境の整備を進めることが重要な責務であると言えるでしょう。

日本の食品業界の働き方改革を進めるために

日本の食品業界の働き方改革は、企業の競争力を維持しながら、労働者の親身の健康に欠かせないプロセスです。
デジタル技術の導入や効率化による「業務フローの見直し」、週休2日や年次有給休暇の取得促進など「働きやすい環境の整備」が急務です。

業界全体が抱える課題である長時間労働や人手不足に対処するためには、まず業務フローの見直しと効率化が求められます。

食品IT NAVIでは、業務効率化の第一歩として、ERPシステム導入による基幹業務の最適化をおすすめしています。

基幹システムの導入で業務フローの確立・標準化ができ、だれでも効率的に対応できる仕組みの構築が可能です。

食品業向けERPシステム「スーパーカクテルCore FOODs」について、詳しくは製品紹介サイトをご覧ください!

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FAQ – よくある質問まとめ

Q.食品業の働き方改革はいつからですか?
A.働き方改革関連法は、2019年4月1日より順次施行されています。
2019年4月1日より、年休の取得日数について、使用者に新たな義務が加わっています。
2020年4月1日より、時間外労働の上限が、原則月45時間・年360時間となりました。
2021年4月1日より、正社員とパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者との間で不合理な待遇差が禁止されています。
2023年4月1日より、月60時間超の残業の割増賃金率について50%以上となります。
Q.食品業の働き方改革について、どのような事例がありますか?
A.農林水産業のホームページに食品産業の働き方改革に関する情報が掲載されています。
有給取得や労働時間短縮に向けた組織全体の意識改革の他、ITツール・設備更新等による業務の効率化事例が掲載されています。
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