食品小売DXを実現するリテールテックとは?

公開日:2023.11.28
更新日:2024.2.09

食品小売業で取り沙汰される100年ぶりの技術革新を解説!

DXの恩恵を受けづらい業種と位置づけられてきた食品小売業でも、近年、リテールテックと総称される最新技術による成功事例が数多く報告されています。“買い物”という普遍的な営みが、DXによって今後、どう変わるのか? 海外・国内の事例をもとに、わかりやすく解説します!


スーパーカクテル Core FOODs STORE 製品紹介動画

食品小売DXを実現する店舗管理システム、“スーパーカクテル Core FOODs STORE” について、50秒ほどの動画でご紹介します。

食品小売DXの現状

近年、あらゆる業界でさかんに叫ばれるDXというバズワードも、いまやすっかり浸透した感があります。今後ますます労働人口が減少するなかで、ICTを活用した業務効率化/省人化への取組みは、あらゆる業種で避けられません。

食品業も例外ではなく、特に食品メーカーにおいてはDXの動きが活発です。食品工場のスマート化フードテックスマート水産業の事例については、以前の記事でご紹介したとおりです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

Digital Transformationは、デジタルテクノロジーによるビジネスプロセスの変革/創造を意味します。英語圏で「超える/交差する」といった意味合いの「trans」は、しばしばXの一字で表現されるため、DXと略されます。

2020年に策定された「デジタルガバナンス・コード2.0」のなかで、経済産業省はDXについてつぎのように定義しました。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」

食品小売業のDXは進みづらい?

食品業全体の傾向として、労働生産性を上げづらいという課題があるなか、図1に示したように食品小売業ではその傾向が顕著です。

食品製造業はDXでの改善を図っていますが、食品小売業は「商品を売る/買う」という普遍的な業態であること、また、規模の経済が働きづらいことから、ICT導入による恩恵も得にくい業種とされてきました。そのため、多くの課題が解消されないまま、山積みになっています。

図1

食品小売業の課題

歯車イメージ

労働生産性の低さ

機械による自動化や大量生産が可能な食品製造業と比較して、食品小売業はスケールメリットを得にくく、労働生産性を高めづらい。

縮小

市場の縮小

人口減少が著しいわが国では今後の内需拡大は見込み薄。店舗運営のコストも高いため、従来のような店舗数拡大戦略も現実的といえない。

買い物かご

消費者行動の変化

コロナ禍以降、消費者行動が急変。巣ごもり需要コト消費は現代市場を象徴するキーワード。トレンドに素早く対応できる体制が不可欠!

リテールテック ~食品小売業界における新たな動き~

新型コロナウイルス禍以後、社会情勢の大きな変化を受けて、多くの業種で変革への外圧が強まりました。対面販売に制限がかかる食品小売業では、特に強いものだったといえます。

これまでDXに関し、他業種にリードを許してきた食品小売業界にも、リテールテック(Retail Tech)と総称される100年ぶりの技術変革が訪れています。

リテールテックとは? ~100年ぶりの技術変革~

では、小売業における100年ぶりの技術変革とは、具体的になにを指すのでしょうか?

スーパーマーケットやコンビニエンスストアにおいて、顧客が商品を選んで精算するという販売方式は、現代において当たり前の光景です。ただ、こうしたセルフサービス方式は、キャッシュレジスターの発明以後に普及したもので、19世紀以前ではカウンターを挟んだ対面販売が基本でした。

100年ぶりの技術変革とは、こうした小売業界の常識がDXによって刷新されようとしている現状を指します。

ECイメージ

1.レジ決済の変革

まず、前述のキャッシュレジスターでの決済そのものに変革が訪れています。

2019年末以降のパンデミックのなかで、非接触/非対面での販売というニーズが高まりました。そこで急速に普及したのが無人レジ/セルフレジ、それにキャッシュレス決済です。

無人レジ/セルフレジ

無人レジ/セルフレジは、バーコード読み取りやRFID方式(無線電波を活用し、商品につけられているICタグを読み取る)により、効率的な決済を可能にするというものです。2018年には無人コンビニ Amazon Goが正式にオープン、並ばずに決済できるというCX(カスタマーエクスペリエンス)を訴求して耳目を集めました。

わが国の食品スーパーでも、省人化を目的にしたセルフレジは新型コロナウイルス禍以降、急速に普及しています。一般社団法人 全国スーパーマーケット協会の調査でも、2019年のセルフレジ設置率11.4%に対し、2022年では25.2%と大幅に増加しています。

キャッシュレス決済

硬貨や紙幣の手渡しによる感染を防ぐという目的で、キャッシュレス決済も同時期に導入が進みました。クレジットカードのみならず、各種電子マネーやQRコード決済など、顧客の多様な支払方法に対応することで商機を逃さない、一挙両全の施策です。

令和4年(2022年)の経済産業省の調査では、キャッシュレス決済比率は全体の36%。同省は令和7年(2025年)までにこれを4割程度に引き上げることを目標に掲げており、今後の利用店舗/利用者数の拡大は、既定路線といえるでしょう。

スマレジ

登録店舗数10万店舗を超えるクラウド型POSレジシステム “スマレジ”。2020年、パンデミックを受けた非接触決済のニーズに応え、セルフレジ機能をリリース。クレジットカードのほか、各種電子マネーにも対応!

2.ECの発展とオムニチャネル化

セルフレジやキャッシュレス決済と並び、リテールテックの主軸となるのがEC(Electronic Commerce;電子商取引)です。

経済産業省の調査で、令和4年(2022年)の国内BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は22.7兆円(前年比9.91%増)(図2)、BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は420.2兆円にそれぞれ増加(前年比12.8%増)。そのなかで、食品業の市場規模は前年比9.15%増の2兆7,505億円、急拡大するEC市場の中心になっています。

ECの急速な進展は、2010年代以降のスマートフォンの普及はもちろん、近年の巣ごもり需要を反映した結果といえるでしょう。新型コロナ禍は食品小売業にとって大きな苦境でしたが、多くの事業者がビジネスチャンスへの転換に成功しています。

図2

食品小売業がECに取組むメリット

多品目

多品目に対応

実店舗では棚に置ける商品数が限られるが、ECではスペースの制限がない。より幅広い品揃えでより幅広い客層にアプローチ可能!

低コスト

低コストで運営可能

実店舗運営は地代家賃や人件費などのコストが難点。仮想店舗であれば、最小限の人員で運営でき、店舗の立地も問題にならない。

海外展開

海外展開も容易

EC最大のメリットは、時間や場所を問わず受注できること。海外顧客とも取引できるため、内需縮小に対するリスクヘッジを図れる。

今後、食品小売業の経営は、リアル店舗とEC店舗を分けて考えるのではなく、それらを融合させたOMO(Online Merges with Offline)戦略をもとに考える必要があるでしょう。実店舗やWebなど、あらゆる販売経路(チャネル)をシームレスに統合するオムニチャネルとともに、今後の食品小売業のスタンダードとなる考え方です。

ECというとハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、Amazonマーケットプレイスや楽天市場などのECプラットフォームを活用すれば、自前のECサイトを作らずとも、スモールスタートが可能です。

ネクストエンジン

3万店以上が利用する“ネクストエンジン”は、複数のネットショップの受注情報・在庫情報を一元化できるシステムです。ECサイトに必要な業務や日々のルーティンを自動化できます。

オムニチャネル
PickUp!
食品業界でオムニチャネル戦略を導入するための
ステップとポイント

3.データを活用した店舗管理

キャッシュレス決済やECは、現代の消費者の購買行動やニーズの変化に対応するために、いまや必須の手段といえます。

ただ、それ以上に、こうした一連のデジタル施策によって蓄積した膨大な販売データや顧客データを、より精度の高い店舗管理に活用することこそ、リテールテックの主眼です。

POSレジやECシステムに、売上・在庫・原価データを一元管理できる店舗管理システムを連携させることで、まったく新しい店舗管理が可能になります。

スパカクロゴ

食品製造小売業向け店舗管理システム “スーパーカクテル Core FOODs STORE”は、POSレジシステムやECシステムと連携してデータを統合、煩雑な店舗管理を大幅に効率化します。

データを活用してできること

販売

販売情報の一元管理

さまざまな販売経路の売上・在庫・原価情報の一元管理により、在庫ロス(食品ロス)や在庫切れを解消。CX向上と迅速な意思決定が可能に!

消費者理解

より深い消費者理解

ECを通じて獲得した顧客情報(年齢・性別・購入履歴など)を基に、より深い消費者理解と高精度な需要予測を行なえる。

id

IDによる顧客管理

実店舗とECの顧客IDを統合、One to Oneマーケティングが可能に。実店舗での購買履歴からECで類似商品をレコメンドする…など。

食品小売DX、世界最大の成功事例 ~ウォルマートの場合~

世界最大の小売チェーン、米国ウォルマートの躍進は、食品小売業DXの象徴ともいえるモデルケースです。

1962年に創業して以後、いまなおリテール業界を牽引するウォルマート。2019年末からのパンデミック以降も売上高を大きく更新し続け、2023年1月期には6,112億USドルを達成(図3)。逆風のなかにあってこうした偉業を可能にした原動力こそ、一連のリテールテックです。

全米で新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ウォルマートは有料会員制プログラム“ウォルマートプラス”で日用食料品の当日配送サービスを無制限で利用できるようにしました。店内での滞在時間を短くしたい消費者向けに、Webで注文した商品を店舗駐車場で車から降りずに受け取れるカーブサイド・ピックアップを展開、オムニチャネル化を進めます。大量の販売データ/顧客データを、消費者トレンドの分析に役立てたことはいうまでもありません。

これらの施策により、同社の2021年度のオンライン売上高は前年度比79%増。2022年には次世代型フルフィルメント(物流)センターを4州に新設することを発表し、物流網のさらなる強化に取組んでいるところです。

ただ、こうした施策が成功したのも、同社がパンデミック以前からEDLP(Everyday Low Price)をスローガンに掲げ、それを実現するためにSCM(サプライチェーンマネジメント)に注力して高精度の在庫管理を行なっていたからこそ。また、Eコマースの雄、Amazonをベンチマークとして、デジタル技術を果敢に導入し、自社ECサイト“ウォルマート・ドットコム”をプラットフォームに、ID管理で顧客と友好的な関係を築いてきたことも、オムニチャネル推進の土台となりました。

ウォルマートはこれまでもリテール業界の最新テクノロジー導入を先駆的に進めてきた経緯があります。現在では当たり前となったPOSレジシステムやEDI(Electronic Data Interchange)も、ウォルマートの成功に倣って広く普及したものです。

それを踏まえれば、本稿でご紹介した一連のリテールテックやオムニチャネルも、遠からず小売業のスタンダードになっていくに違いありません。

日本国内でも進む食品小売DX事例

ウォルマートは世界最大規模の企業だから……、日本の企業では同じようにいかない……、そんなふうにお考えの事業者さまもおられることでしょう。ただ、食品小売業の既成概念を変えようとする動きは、日本国内でも活発です。

注目すべきは、業界で高い地位を築いた老舗といえる事業者さまも、守るべき伝統と変革すべき課題を切り分けてDXに取り組んでいる、ということ。

本項では、国内の食品小売業でのDX事例を3つ、ご紹介しましょう。

1.株式会社 鶴屋吉信さま

創業200年を超える和菓子製造販売業、鶴屋?信さま。和菓子文化の裾野を広げるため現代風の和菓子の製造販売も手がける、京都最大手の老舗です。

出店している百貨店の歩率がばらばらで独自の売上/入金管理を強いられること、また、取り扱う品数がじつに2,000を超えることから、販売管理が煩雑になるのが課題でした。

鶴屋吉信さまでは、 店舗管理システムを導入することで、店舗運営の効率化に成功しています。百貨店の売上管理にも標準で対応できることがシステム導入の決め手になりました。製造・在庫ロスを数値化して管理できるようになったことで、収益性も向上しています。

鶴屋?信さま
事例01
工場移転に際しシステム一本化
百貨店の売上管理が決め手

2.株式会社 文明堂東京さま

「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」のフレーズでお馴染み、高級洋菓子製造販売を営む文明堂東京さま。1900年の長崎での創業から店舗数を拡大、高級カステラの代名詞といえるまでに成長しました。

一方、のれん分けによって店舗数が増えたことで、店舗管理がきわめて煩雑になりました。また、店舗ごとに異なる管理システムを運用していたため、売上データを一元化できていなかったことも大きな課題です。

こちらの例でも、食品業に特化した店舗管理システムを導入して全国の販売データを統合できる環境を構築、スピーディな経営判断が可能になりました。

文明堂東京さま
事例02
店舗販売管理に特化したシステムで、
迅速な経営判断と顧客対応迅速化を実現!

3.株式会社 赤坂柿山さま

1973年に東京・赤坂へ本店を移転した米菓製造販売業、赤坂柿山さまは、今も創業の地、富山県特産の新大正もち米にこだわる老舗です。

首都圏を中心に48店舗を抱える販売網は、同社の強みでもありましたが、散在する店舗・倉庫・工場と本部間での基幹業務のデータ共有が難しいという課題を抱えていました。ただ、全拠点で同時に基幹業務システムを導入した際の混乱は、想像に難くありません。

解決策として、先行して10店舗で店舗管理システムを仮稼働し、問題点を洗い出すという手順がとられました。先行稼働した店舗が他店舗に指導するという好循環が生まれ、現在では本部と各拠点間でインタラクティブにデータのやりとりを行える体制を確立しています。

赤坂柿山さま
事例03
食品製造小売業に特化したパッケージシステムで、
全社間の双方向コミュニケーションが実現


食品小売DX事例を実現する店舗管理システムのご案内

本稿でお伝えしたリテールテック、食品小売業DXのキーポイントは、従来の実店舗管理にECやPOS経由で収集した膨大な売上データを連携させ、各チャネルをシームレスに統合することです。

それによって、より即時性の高い店舗管理と4P分析を実現します。

それらのシステムの中心となるのが、国内事例で取り上げた店舗管理システム、スーパーカクテル Core FOODs STORE。単に食品小売業に特化したシステムというだけでなく、食品小売業の商慣習について豊富なノウハウを有する専任スタッフが導入・運用をご支援します。事業者さまごとの課題の洗い出し、きめ細かなカスタマイズについてもご提案いたします。

製品カタログ、また、オムニチャネル導入をサポートする資料をご用意しました。ぜひ、貴社のDXにお役立てください!

製品カタログダウンロード

storeカタログ

食品小売業向けERP、スーパーカクテル Core FOODs STOREの
製品資料をPDFにてご覧いただけます。

特別資料「はじめてのオムニチャネル」ダウンロード

3ステップでオムニチャネル導入手順を整理。
各ソリューションとキーワード解説付き!

よくある質問

Q.食品小売業の労働生産性が低いのはなぜですか?
A.ICT導入の遅れから、食品産業は全業種平均よりも労働生産性が低いのが現状です。また、一般的に事業所規模(従業員数)と労働生産性は連動しているため、食品小売業は食品製造業よりも労働生産性が低くなる傾向にあります。食品産業の生産性を向上させるべく、多くの事業所で最新技術導入が図られており、食品小売業におけるリテールテックもその一環です。
Q.4P分析とはなんですか?
A.マーケティングにおいて重要となるProduct(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション、販売促進)、Place(流通)の4つの要素を組み合わせて戦略立案することを指します。1960年、米国のマーケティング学者エドモンド・マッカーシーによって提唱されました。
プライバシーマーク