食品の国際取引についての流れ

食品の国際取引についての流れ

食品の国際取引についての流れ

 これから海外市場に進出するためには目標と手段を明確にする必要があります。またこれまで国内で培ったマーケティング手法と異なるアプローチも必要になります。輸出の場合国内で好評だから海外で売れるとは限りません。輸入の場合も海外でよく売れているから国内市場で売れるという保証はありません。

 海外と貿易取引を始める最初の一歩はマーケティングと取引相手を見つけなければなりません。
最も効率の良い方法は国際見本市を利用することです。日本でもFOODEXを始め食品関係の国際見本市はありますが、ターゲットとする国や欧米の大規模な国際見本市を視察されることをお勧めします。同業者が一同に集まるので商品、品質、価格、トレンドや、また自社に競合する技術情報、などを得るマーケティングが可能になり、パートナーを見つけるのに最適の場でもあります。最近はジェトロ、地方公共団体機関が出展などサポートをしていますが、まずはいくつかの見本市を訪問視察されることをお勧めします。

 世界の見本市、展示会情報はジェトロのサイトに最新情報が掲載されており業種別、開催地別に探すことができます。日本国内にある各国の大使館、領事館には商務官がいるので、それぞれの国の企業に関する情報を得ることもできます。インターネットのマッチングサイトから取引を始めるケースを見受けますが、実際に取引を行う場合には、相手を十分に吟味したうえでないと、詐欺などの被害に会う可能性もあります。「○○○ Trade Directory」で検索するとたくさんのサイト情報がヒットします。国内、海外ともインターネットで参考情報を得ることは可能です。

 輸入マーケティングの基本としては日本市場にないものを海外で発掘して日本に輸入する。または日本市場で既に売られているが、海外から調達するほうが安いものを輸入する。輸出マーケティングの基本は価格では勝負できませんから、海外にない日本特有の付加価値のある製品を売り込むことになります。ただし相手国で受け入れられる商品かサービスなのか、また価格設定も重要になってきます。

輸出取引の流れ

1.売買契約の締結

 売買契約を締結します。売主は売約証を発行し両当事者の署名した原本をそれぞれが一通ずつ所持します。

2.貿易書類の準備

 売約証で決められた通り商品の出荷の手配をする。海外の輸入者が通関手続きに必要な貿易書類の準備をします。どのような書類が必要かは商品の特性、輸入国の法律によって異なります。初めての取引の場合は事前に輸入者と十分に打ち合わせをして確認しておきます。せっかく契約通りに船積手配をして到着したにも関わらず輸入通関手続きでトラブルが発生すると入手が遅れます。特に食品関係は賞味期限の問題もあり納期は非常に重要です。

3.出荷の手配

 決済条件が前払いの場合は入金を確認してから出荷手配に入る。信用状決済の場合は原本を入手してから条件通りの船積み及び船積書類の準備が必要になります。

4.輸出貨物の搬入

 海上貨物の場合は指定されたコンテナヤードに搬入し、航空貨物の場合は指定空港の貨物ターミナルに搬入します。

5.輸出通関手続き

 輸出通関手続きの依頼を通関業者に依頼します。最近は大手国際物流会社は自社で通関部門を持っているので、通関手続きを含めた戸口から戸口まで(Door to Door)のサービスを可能にしています。

輸入取引の流れ

1.売買契約の締結

 売買契約を締結します。
買主は買約証を発行し両当事者の署名した原本をそれぞれが一通ずつ所持。または発注確認書Order Confirmationを売主が発行し買主に交付します。

2.決裁手配

 決済手配をします。送金と荷為替手形決済に分かれ、信用状決済の場合は買主は取引銀行に開設依頼をします。支払いは売手にとって重要なので支払いの確約がなければ出荷されない場合があるので買手にとっても注意を払う必要があります。

3.輸入通関手続き

 海外から商品を輸入する場合に全てが輸入通関手続きの対象になります。食品の輸入には特別な資格は要りませんが輸入後の販売を目的とした場合は業務輸入となり自己消費を目的とした個人輸入と異なる手続きが必要になります。同時に国内法も適用されることになります。食品の場合は食品衛生法が適用されることになります。ここで規定されている食品の定義は広く、食品(ペットフード等は除外)はもちろん、食品添加物、食器、容器、包装などです。コーヒーカップなどの輸入にも適用されます。変わったところでは乳幼児向けのおもちゃなど、赤ちゃんが口にする可能性のあるものも対象になります。ほうずきは観賞用のものは適用されませんが、夜店などで販売され口に入れるものは本法律が適用されます。

4.海上貨物と航空貨物の輸送

 物流に関して海上貨物と航空貨物に分かれます。

 付加価値が高い商品の場合は航空貨物となりますが、少量の場合はDHL, FEDEXやUPS等のクーリエサービスが使われます。重量、容積が大きく付加価値が高くない通常商品はバルク貨物と呼び海上貨物として輸送します。穀物などのバラ積みされるものもありますが、コンテナ単位でユニット化した貨物はコンテナ船にて運ばれます。航空貨物の場合は48時間以内に世界中のどこの空港にも届けることができます。所要時間やルートによって運賃も異なります。

 一方で海上貨物は大量の商品を一度に廉価で運ぶことができます。航海日数は欧州主要港からは約1ヵ月かかります。東南アジアであれば2~3日から1週間が航海日数です。

5.輸入貨物の搬入

 輸入貨物は日本到着後に海上貨物の場合は港に隣接するコンテナーヤードに搬入されます。通称CYと呼ばれますが保税地域になっています。保税地域とは、税関管轄の特別区で、ここに蔵置している限りにおいて関税や国内税が賦課されません。原則として外国貨物は保税地域に搬入されてから輸入申告手続きに入り税関の許可を得た後に搬出され国内に自由流通可能になります。

 航空貨物の場合はCYに該当する施設は国際貨物ターミナルで物流業者によって管理されており、輸入通関許可を取得したあとに貨物を国内に引き取ることができます。輸出手続きと大きく異なることは商品別に関税が課せられ、また国内税である消費税や酒税など加算され、原則としてこれらが支払われないと輸入許可は得られません。輸入申告手続きに必要な書類は売約証などに明記して確認しておきます。

 食品の場合は特に食品届という大切な手続きがあり、商品によっては特別の書類が必要になる場合があるので通関業者とよく事前の打ち合わせをする必要があります。

千田昌明氏
 執筆者 
株式会社トレードタックスウェストジャパン
代表取締役
千田 昌明 氏

【経歴】
三菱銀行(外為・法人新規など)を皮切りにアパレルメーカー(取締役)と機械メーカー(買収した米国会社のCFOなど)の合計3社でサラリーマンを経験
独立して米国やタイを中心に国際税務・税関のコンプライアンスを中心に活動
貿易を通じてアフリカの経済的自立を持続的にサポートするため一般社団法人JETICを設立、理事に就任
【資格など】
米国公認会計士 (USCPA)、米国税理士(EA)、AIBA(貿易アドバイザー協会)認定貿易アドバイザー、JUSCPA西日本部会長、通関士有資格者、輸入食品衛生管理者、日本拳法 三段、英語落語(芸名 Doraku)
弓場俊也氏
 執筆者  弓場 俊也 氏

総合商社のイタリア駐在を経て独立、貿易コンサルタントとして海外取引先との交渉及び業務連絡、輸出入手続(通関士資格保有)、海外見本市出展準備、海外買付業務、国際契約の交渉から締結まで、国内外企業の顧問、貿易部門の立ち上げ、社内研修、ビジネス通訳・翻訳(日本語⇔英語・イタリア語)、貿易実務等を業務とする。大阪市立大学非常勤講師、JETRO神戸貿易アドバイザー

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