食品表示法制定を知る!「余裕ある準備」と「収益を落とさない心構え」

新しい食品表示制度への経過措置期限となる平成32年3月31日まで残すところあと1年半。駆け込みリスクに備えて、3回連続で食品表示法の制定経緯や対応準備・注意点をご紹介して参ります。

はじめに

 前々回前回の2回にかけて、食品表示法制定への経緯、対応点、経過措置期限、食品表示法制定以降の改正、細則をお伝えして参りました。今回はその最終回ということで、経過措置期限前対応の「駆け込みリスク」を実務面でご紹介いたします。「余裕ある準備」、それに加えて「収益を落とさない心構え」、にはどのような点を気に留めるのかなど、早めのご確認へのお役立ちになれば幸いです。

基本的な表示改訂スキーム

 食品表示法の施行に伴い、専門誌、ホームページなどで多くの表示注意が紹介されています。しかし、その「手順」に関する情報は多くはありません。表示内容の修正点ばかりに気を取られ、「十分把握できた、情報は揃った。」と思っても、机の上の準備だけではすべてを解決するには至りません。実務面で何が起こるか細心の注意を払い、自社に合った「手順」をシミュレーションしながらできるだけ多くのリスクを想定することが大切です。

では、新法対応で留意すべき点を考えていきましょう。今回ここでご紹介する留意点は大きく2つの面に分けて考えていくこととします。

① 販売面を考慮した留意点

② 生産面を考慮した留意点

 ただし、ここでは前回のご説明などを踏まえ、皆様には食品表示法に沿った表示内容を理解されていることを前提とさせていただきます。

 まず、この両面への留意点を具体的にご説明する前に、食品表示法対応とは、どのような手順なのか、基本的な取り組みを再度確認しておきます。ここでは、基本例のご紹介となりますので、実際には各社事情に沿ったシミュレーションを心掛けて下さい。

図表1.基本的な食品表示作成手順

1 食品カテゴリーの定義確認
2 商品名・販売規格情報の整理(個数、内容量 など)
3 原材料情報の収集・整理 (添加物、原料原産地、アレルギー有無など) 
4 配合量情報の収集・整理
5 賞味期限・保存方法情報の収集・整理
6 栄養成分情報の収集・整理
7 製造所情報の収集・整理
8 表示原案作成
9 表示デザイン作成・規格書確認
10 製造

*各種証明書の入手手順は省略しております。

 では次に、上記基本手順を踏まえ、新たな食品表示法に対応する留意点を前述の二つの切り口から見てまいります。

(1)販売面を考慮した留意点

 販売面を考慮した留意点とは、自社だけでは決定できない、市場ニーズを踏まえた食品表示の対応を意味します。この食品表示法が制定された要因は、「国民の声」、消費者の食品安全に対する関心の強さに他なりません。つまり消費者も購買の決め手として、目から飛び込む誘発的なパッケージだけではなく、食品表示に記された情報を根拠とする傾向が高まってきます。そうなるとその商品の嗜好について、販売する地域、ターゲット、用途などによる「ニーズ」と「食品表示」の内容一致を確認する必要があります。消費者の期待を裏切らない情報提供(表示情報)、また付加価値をつけた商品情報が何かを判断し表示内容を決定します。簡単に言えば、販売したい商品の食品表示については消費者の声を代表する小売店との合意確認を取るということです。具体例をいくつかご紹介します。

①製造所情報について

 ご承知の通り、製造所固有記号について表示ルールが変わります。同一商品を複数個所で製造するものでなければ製造固有記号が利用できなくなります。ご注意いただく例として、これまで地元製造と期待されている商品が、実は地元以外で製造される商品があります。 特に地元名産品、ご当地土産品などがそうです。お客様は、「○○県産」を期待していたところ、製造所固有記号が使えず製造所住所を表記したため、全く遠く離れた地域で製造されていたことがわかり、お客様の期待を裏切る懸念があります。このような商品は、複数個所で生産を分け固有記号を取得するか、それが難しければ製造所住所が明記される影響を小売店と確認を取ったうえで製造・販売いたしましょう。小売店も売れ筋商品であれば収益への影響も大きく、製造所情報を開示するかどうかの判断にしばらく時間を要する可能性があります。販売店側からは、製造所を記載しつつも販売所をご当地住所にすることで対応するなど、その表現方法は多岐にわたります。必ず販売店に住所表示の有無、表現のあり方など確認し、それに合わせたリードタイムを勘案して食品表示の期間計画を立てましょう。

図表2.製造所住所を表記する場合の表示例 (Q-加工253より)

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※1 「製造者」、「製造場所」等の製造した場所が分かるような事項名も可。なお、「加工所の所在地及び加工者の氏名又は名称」を表示する場合は「加工所」、「加工場所」等の加工した場所が分かるような事項名とする。

出典元:消費者庁ホームページ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pamphlets/pdf/jas_1606_all.pdf

②販売店規模と表示の関係について

 また、売り先の規模により栄養成分表示の有無が異なることにも留意が必要です。

 中規模または大手販売店への営業が功を奏し、販売が見込まれると期待しても、食品表示における栄養成分表示の対応が間に合わず、販売時節を逃してしまうことがあります。

 小規模の事業者(おおむね常時使用する従業員の数が20人以下の事業者)が製造する食品であっても、小規模ではない小売事業者(おおむね常時使用する従業員の数が5人を超える事業者)が販売するものは栄養成分表示を省略できません。特に卸業者が積極的に取り上げ表示改正準備期間を勘案せず販売を決定する場合もあります。卸業者を経由した販売商品においては、栄養表示の確認及び切り替えへのリードタイムを卸先と擦り合わせ販売可能時期を周知しておく必要があります。

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出典元:消費者庁ホームページ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180510_0003.pdf
参考:食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_180518_0001.pdf

(2)生産面を考慮した留意点

 では、次に生産面からの留意点を見てみましょう。ここでの生産面とは、表示シールの調達・添付を意味します。今回の食品表示法で、表記情報が多くなりました。原産地表示、アレルギー表示、栄養成分表示、製造所表示などです。それにより、従来の表示シールサイズでは収まりきれない商品が登場します。その場合は、文字サイズを調整するか、それでも収まらない場合には面積が大きめのシールに変更しなければなりません。また、そのシールサイズに対応するため、ラベルプリンターを変更する可能性があります。

①ラベル表示内容について

 ラベルの記入情報に関して字数が増える要素を把握します。原材料、アレルギー、栄養
成分表示、製造所、また詰め合わせなど複合商品の注意も必要です。そのうえで文字数増加を判断し文字サイズを調整しても、従来ラベルに収まらない場合は、大きいサイズのラベルに変更しなければなりません。具体的には、詰め合わせ製品、アソート品などがあります。また、その影響を受けてパッケージそのものやパッケージデザイン変更を余儀なくされる場合があります。短時間で、商品包材、デザイン変更を整えることは非常に大きな負荷となります。よって表示変更には、パッケージデザイン担当者、またパッケージ調達関連部署・担当者とのコミュニケーションも大切にし、パッケージ調達、デザイン変更などのリードタイムを考慮しておきましょう。

②ラベルプリンター調達について

 ラベル変更となると、サイズによっては従来のラベルプリンターでは対応できず、新たな機械を購入しなければならない可能性もあります。その場合、やはり高性能、低価格品が人気を博し、猶予期間直前で注文が増加し希望機械の納入が間に合わない可能性が生じます。どのようなラベルプリンターが適正かを早めに把握し、そのメーカーや代理店とは、
発注からのリードタイムを確認しておきましょう。また発注時期が直前になり、多くのメーカーへ発注が重なると希望商品が間に合わず、つい高価な機械を買わざるを得なくなり、また値引き交渉も困難になるため、想定外の経済ロスが発生する可能性があります。性能的にも、消毒や洗浄、蒸気滅菌器の使用への耐性など製造条件の確認を、また、設置型ラベルプリンターの導入の場合は、設置場所の確保など製造・設置環境を把握したうえで購入することをお勧めします。このように、ラベルプリンターの購入に関しては、早めにその導入計画を立てておくことが重要です。

①販売面を考慮した留意点

・製造所情報について主要販売先との確認
・栄養成分表示について販売先規模を踏まえた確認

②生産面を考慮した留意点

・ラベル表示変更とそれに合わせたサイズ変更の確認
 (パッケージデザイン変更にも留意)
・新たなラベル用紙に適したプリンターの早期手配

まとめ

 これまで3回に渡り、食品表示法の経過措置期限への備えに関してまとめさせていただきました。省庁再編をともなう新法設立の背景、頻繁な改正、それに適応する機器調達などをご説明する中、この法律がいかに国民の高い関心を持って制定された法律かおわかりいただけたかと思います。そのため、対応できない企業は顧客からも淘汰される可能性が当然に高まります。ボルトをナットで締めるように丁寧かつ抜け漏れのない新法対応を図るため、現場の声にもしっかりと傾聴し、経過措置期間内に余裕を持った準備をされることが重要です。そうすることで予想しえない「駆け込みリスク」を回避し、安心して新表示にお取り組みいただくことを願っております。


徳永 税 執筆者 
柏の葉技術経営研究所 代表
中小企業診断士 / 1級総菜管理士 / 中級食品表示診断士 / JHTC認定HACCPコーディネーター
徳永 税 氏

東京大学大学院総合文化研究科 修士課程修了。1級総菜管理士・中小企業診断士。
食品メーカー開発部門にて新製品の研究開発、工場で品質保証の責任者としてFSSC22000食品安全チームリーダーを務める。
2012年、柏の葉技術経営研究所を設立。FSSC22000、ISO22000認証取得、HACCP構築、製品開発の支援を行う。

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