2018年6月19日に札幌で開催しました「内田洋行ITフェア2018」イベントでの講演「コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について」についてレポートいたします。
▲ 生活協同組合 コープさっぽろ
品質管理室
定岡 那奈江 氏
HACCPの制度化を盛り込んだ改正食品衛生法が、先月6月7日に衆議院本会議で可決されました。現在よりもいっそう食品安全への注目が高まるでしょう。
当セミナーでは、全国の生協でも最多店舗数をほこるコープさっぽろ様における、食品安全への取り組みと商品苦情や商品事故の発生状況およびその対応手順についてご説明頂きました。
1.コープさっぽろの事業と食の安全への取組み
コープさっぽろの誕生
コープさっぽろは1965年7月18日に創立されました。チェーンストアの進出が目覚ましかった時代で、消費者自身が消費者の利益を守る流通網をつくろうと、地域住民と北大生協職員ら200人が集い、札幌市民生協として設立されました。
コープさっぽろの現在(2018年3月現在)
現在の組合員数は170万9,000人。出資金額は698億円です。店舗は全道で108店舗、配達業務の拠点は32センター8デポあります。
コープさっぽろの事業高
2017年度の事業高は約2,820億円。通常、生協は店舗事業より宅配事業の事業高のほうが大きいのですが、コープさっぽろは店舗事業が3分の2を占めています。
コープさっぽろのミッション
コープさっぽろのミッションは以下の通りです。
講演資料:コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について
コープさっぽろの事業と活動
ミッションを具体化するために「人と人をつなぐ事業」「人と食をつなぐ事業」「人と未来をつなぐ事業」の3本柱で、事業活動を行っています。単純に商品を販売し、届けているだけではなく、コミュニティづくり、子育て支援、食育など多彩な活動を展開しています。
講演資料:コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について
食の安全・安心への取り組み
特に食の安全・安心への取り組みに力を入れています。1970年、商品検査室を開設、以来、商品の安全性を保障する仕組みづくりに取り組んできました。
コープさっぽろの自主基準
食品添加物自主基準は1960~70年代に約40品目使われていた合成添加物が使用禁止となりました。発がん性が疑われるものが多数ありましたから、消費者の不安を少しでも解消することを目的に、1977年、食品添加物に関する自主基準を策定しました。
1997年には微生物基準も策定しました。食品を扱っていると、やはり食中毒事故が一番怖い。最も基本的で重要な課題です。微生物は目に見えませんから、コントロールが難しい。策定以降も公的基準の変更などに連動した改定を重ねてきました。
「食の安全委員会」を設置
2004年には「食の安全委員会」を設置しました。安全に関する組合員の要望に応えるために「何をすべきなのか」「何ができるのか」を検討し、理事会に提言しています。
食品添加物に関する考え方と評価
一般の消費者、組合員は添加物を使っていることが悪いと捉えがちなので、その誤解を解くのも小売りの使命です。特筆すべきは厚生労働省が公表した「新規食品添加物」の安全性について、公表の都度、自主基準の対象にすべきかどうかという議論をしていることです。科学的知見や文献、専門の有識者からの助言から評価を行い、承認しています。
使用規制している添加物
自主基準で使用規制する添加物は「使用禁止添加物」と「使用制限添加物」に分けています。
講演資料:コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について
品質管理室の主な業務
新規に取り扱う商品、販売中に定期モニタリングした商品、お店の中でつくって売っているインストア商品などの微生物検査、農産物の残留農薬、農産物・水産物の放射能などの理化学検査、商品苦情対応、工場点検、コンサルティング、セミナー開催などを行っています。
2.商品苦情・商品事故の発生状況
商品苦情発生状況(事業所別件数)
商品苦情の発生件数は年々減少傾向にあります。コープさっぽろを含めて全国の生協は苦情やクレームという言葉を使いません。「お申し出」という表現を使っています。
部門別商品苦情状況(内容別内訳:2017年度)
件数では圧倒的に日配が多く、内容は「異物・汚れ」が多い。具体的にはプラスチック、ビニール、虫、人毛の順に多く、それらが50%を占めています。健康危害につながる硬質異物や鋭利なもの、金属片などは6%未満です。
コープさっぽろにおける「商品事故」の考え方
コープさっぽろにおける「商品事故」の捉え方を示しました。
講演資料:コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について
表示事故の内訳
表示事故対策のポイントは間違わない仕組みづくりはもちろん、間違いに気づける仕組みづくりをすることです。正しいものと比較しなければ間違っていることに気づきません。何と比較するのか、誰がやるのかを含めて仕組みをしっかりと構築する必要があります。工場点検の際も、この点を確認しています。
3.対応手順
通常の苦情対応の流れ
組合員様に店舗にお持ちいただくか、電話をいただいて店舗や宅配のスタッフが取りに伺います。品質管理室で受け付け、バイヤーに連絡を入れ、お取引先に回収に来ていただきます。お取引先が調査し回答書を作成後、それを送ってもらい、各事業所から組合員様に説明するという流れです。
講演資料:コープさっぽろにおける商品苦情と商品事故対応について
商品苦情調査ガイドラインの運用
対応の仕方がわからなかったり、迷われるお取引先のために「商品苦情調査ガイドライン」を用意しました。異物混入などの場合、必ず一定期間保管しておくことなど実務的・実践的な内容になっています。
多発苦情対応の流れ
同様のお申し出が2件発生した場合、品質管理室が確認してから各部署に連絡。同様のお申し出が上がっていないか、聞き取りをします。もし3件以上発生していれば、緊急対策会議を立ち上げ、拡散性、重篤性、社会的影響の3つの観点から対応を判断します。対策が決まったら、商品回収、組合員への告知、行政への連絡、マスコミ対応を急ぎます。
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