
はじめに
HACCP12手順の10手順目、HACCP7原則「適用」の第5原則目である「是正措置の確立」について、Codexの「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版に基づいて、その「19.10 是正措置を確立する」(手順10 /原則 5)ではどのように記述されているのか、ていねいに逐条解説していきます。
まず、本セクションは大きく4段落にわけられていて、ざっくり、①CCPごと性質に従い是正措置を確立する、②逸脱製品の正確な隔離と安全性の分析、③逸脱製品の取扱い決定と再発防止、④文書化と定期的な見直し、が国際的に要求されています。段落ごと一緒に読み込んでいきましょう。
そしてHACCPは系統的(systematic)アプローチですから、前セクション(モニタリングシステムの確立)の解説でもすでに、結構な頻度で「是正措置」について触れております。すなわち、モニタリングの目的が許容限界の逸脱を発見することであり、逸脱は是正措置の起動スイッチであるという系統的な関係性からです。したがいまして、前回までの解説をいちいち振り返っていただくことは、本解説を理解する大きな助けになり得ます。
直近では前回(CCPモニタリング担当者の自覚と職責)でモニタリング担当者の是正措置への求められる職責と、適切な報告による上司の是正措置への職責を解説したばかりでしたね。またやはり「原則」編のレビュー(復習)は欠かせません。第39回の「是正措置」の定義に止まらず、その起動スイッチである「逸脱」と「コントロール(動詞・名詞)」、コントロールを喪失したかどうか判断するための第38回での「モニター」まで、これらがどのように是正措置の適用に紐づいていくか一緒に見ていきましょう。
CCPすべてに個別の是正措置計画
第1段落目は、大きく3文節に分かれていて、第1文節はほぼ前版(2003年版)を踏襲しています。求められるのは、「1つのCCPには必ず1つの是正措置計画が存在する」ことです。もし、CCPごとに是正措置計画が存在していない場合、何が起こるでしょうか。たとえば、クリティカル(必須)かどうかを問わない一般的なトラブル対応マニュアルを考えてみてください。それは汎用性がある一方で、現場の第一線が適格に打てるであろう短期的な処置を想定できておらず、影響する製品ロットは絞り込めず、大きな経営的損失とともに、出荷前に食い止められなかったら、賠償責任まで発生してしまうかもしれません。

これからの解説は、あくまでも重大ハザードにとって必須のプロセス「コントロール」(すなわち、工程管理)の食品安全上の「許容限界」を「逸脱」していないかの「モニター」であることを認識してください。要するにCCPに限定した是正措置を取扱うわけですが、過去に解説した適正衛生規範(GHP)手順に従っていないことによる逸脱も存在しており、この衛生規範の遵守は第17回の「“より注意が必要な一般衛生管理”をモニターする」ですでに解説していますので混同しないようお願いします。
CCPであるとは、すなわち重大ハザードがコントロールできていなかった場合に直ちに、食品安全上の許容不可能(食用不適:むずかしい言葉では偽和食品)として扱われるということですから、是正措置プログラムは入念に現場オペレーションに沿って計画される必要があります。例えば、加熱や冷却、一時保管での「温度コントロール」の場合、通常許容限界には、温度だけでなく時間も設定されます。そうであるならば、是正措置はそのそれぞれの逸脱に対して適切な計画でなければいけません。
たとえば、加熱不足に対しては適格な再加熱をすれば食用適になる場合があります。これもバッチ式であれば比較的簡易に受け入れられますが、ラインを次々と製品が流れていくオペレーションであるならば、再加熱するという是正措置計画が採用されるかどうかの結論は変わってくるでしょう。
よくある金属検知CCPでも、計画の記述次第ではありますが通常、許容限界は「金属検知器が正しく作動している」「すべての製品が(正しく作動している)金検を通過している」の2側面がありますから、金属検知器が正しく作動していなかった場合の是正措置と、金検を通過しなかった(異常品としてはねた)場合の是正措置の両方がカバーされた計画でなければいけなくなります。
是正措置計画をいい加減に組むことで、企業存続を危うくした事例はいくらでも拾い上げられます。認証を取るためにどこかの事例を引っ張って来たとか、これまで逸脱がなかったから衛生管理計画書には手引書にある通り写した、といったことで良いのかどうか。あなたの現場を守ることができるのはあなただけです。
連続的モニタリングか非連続的か
本第1段落の2文節目と3文節目はCodexの2020年版で新たに記述された表現となっています。ところが、私たちはHACCPトレーニングや月刊HACCPでの解説で、折に触れてこの「モニタリングが連続的であるか非連続的であるか」の違いにおける対象ロットの区別について、20年以上前からこの最新2022年版で記述している通りの正しい情報を提供し続けてきました。
これは全米食品微生物基準諮問委員会(NACMCF;National Advisory Committee on Microorganisms Criteria for Foods)に携わった多くの科学者たちの宝石のような贈り物があったからなのです。NACMCFはアメリカの科学的な諮問機関で、特にWHO/FAO合同のCodex委員会でHACCPガイドラインを策定するための国際議論をリードするために設立されました。1997年版ではNACMCFの基礎的なHACCP概念は認められたものの、詳細な記述まで採用されなかったのですが、その後の食品安全マネジメント適用が民間認証も含めて積極的に進み2020年版以降はこのNACMCFガイダンスがほぼCodexに組み込まれたという経緯があります。
この是正措置の対象ロットも大切な一角です。モニタリングシステムが連続的である場合とそうでない場合の具体例については、前々回の解説に目をお通しください。「“連続的”が可能な場合(Where possible)は望ましい」ですが現場はケースバイケースです。
CCPが連続的モニタリングであれば、「逸脱」は直ちに感知されます。感知された時点から以降が是正措置の対象ロットと特定されます。一方でモニタリングが非連続であった場合、「逸脱」は発覚時以後だけでなく以前も含まれますから、前回「逸脱がなかった」モニタリングポイントまでさかのぼって、是正措置の対象ロットが特定されます。この場合、モニタリング頻度が狭ければ対象ロットが狭められますし、ロット内のどこから逸脱があったのかの特定もやりやすくなるので、経営的には大きな判断ポイントとなるのではないでしょうか。

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007~2024年)
国際HACCP同盟認定 トレーナー・オブ・トレーナー
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
作れる!!法制化で求められる衛生管理計画への道筋
監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部
一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)による事業者支援セミナーをテキスト化した一冊です。
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