食品の輸出手続き

輸出の定義

 異なる国どうしの売買取引で海外に商品を売ることを輸出と言いますが、関税法の定義では「内国貨物を外国に向けて送り出すこと」です。内国貨物とは現在日本国内に存在するもので、海外から送られてきて輸入許可を得たものを含みます。これ以外は全て外国貨物であり輸入手続きを経て許可を得ることにより国内に流通可能になります。

 内国貨物は輸出申告手続きをして輸出許可を得ると海外に向けて船積することができます。
輸入と異なるのは輸出の場合は関税が課せられません。また輸出取引は消費税が免除されますので、それに対応する課税仕入れに消費税及び地方消費税の額が含まれている場合には還付の対象になります。
この課税仕入れの金額には、商品などの棚卸資産の購入代金のほか、その輸出取引を行うのに必要な事務用品の購入や交際費、広告宣伝費などの経費なども含まれます。

 要するに、輸出の場合には、課税仕入れに含まれる消費税及び地方消費税の額は申告の際に仕入税額の控除をすることができます。還付手続きができます。

 輸出通関手続きは関税、消費税の計算が不要なので手続きも比較的簡単で通関業者に支払う申告手数料も輸入の場合の半分です。

直接貿易と間接貿易

 輸出の形態は直接貿易と間接貿易に分かれますがそれぞれメリット、デメリットがあります。

直接貿易

 海外の買主と交渉、売買契約、通関手続き、運送、決済などの作業を全て自社で手配します。
商社など仲介者に支払うマージンが不要になるので、その分を利益に計上できます。
海外買主と直接やりとりし仲介者を経ないのでより密接な情報交換を迅速に対応ができます。
デメリットとしては複雑な貿易実務に精通した担当者が必要で、海外市場開拓、資金負担、為替などリスクは自社が負うことになります。

間接貿易

 間接貿易は商社、代理店を通して対海外向け手続きを全て代行してもらいます。
そのため実質的には国内取引と言えるので直接貿易よりはリスクが低いと言えます。
商社は貿易実務のエキスパートであり、その海外ネットワークを通して有力な情報を得たり、取引先の開拓などに協力してもらえます。また商社の持つ豊富な資金力も期待できます。商社を利用する場合には仲介コミッションを支払うことになります。その分は対海外売価に上乗せするので高く設定しなければなりません。

 最近の傾向としては中小企業も含めて直接貿易が増えています。理由としてはインターネットの時代になり、海外と簡単に情報交換が可能で、貿易手続きも規制緩和や海外決済方法も簡素化されてきているので容易に取り組めるようになったことが挙げられます。また国際物流では小口貨物でも扱いやすいクーリエサービスなどの利用が増えてきました。

直接貿易と間接貿易

食品輸出に関する事前確認項目

 食品の輸出に関しては事前に確認する項目が多く、特に先進諸国は食品の安全に対する規制が厳しくなっており、相手国の規制要件をクリアしないと取引はできません。食品に関する貿易基本ルールとして国際食品基準であるコーデックス食品規格(CODEX)があります。WTO/SPS協定によってこの規格が採用されました、当初は米国航空宇宙局(NASA)が宇宙食の安全のために開発された衛生管理システムHACCPに基づいた指針でした。

 海外に食品を輸出する場合ですが、特に欧米先進諸国へ輸出する指定対象食品についてはHACCP対応が義務づけられています。水産加工品等の特定食品はHACCP基準認定を受けた工場で製造されたものであることが必要です。
欧州への食品輸出に関してはEU主要加盟国の共通規制があり各国の独自規制がない場合もあります。
例えば玄米、精米などをEUへ輸出する場合はEUの輸入ライセンスを事前に取得します。
この輸入ライセンスは取得国だけでなくEU内域であればどこへでも輸入可能になります。

 米国向け食品輸出に関してはバイオテロ法に基づいてFDA(アメリカ食品医薬品局)に事前登録された製造設備と商品内容について事前報告が貨物到着前に必要です。特に、最近は、米国食品安全強化法(FSMA, Food Safety Modernization Act)の規制強化に対応するため、単なる米国のFDA登録のみならず製造施設(加工・梱包・保管等の施設も含む)における食品安全計画の作成・運用など多くの事前準備が必要で、米国FDA当局による日本の製造施設への実地査察も増えてきています。

 陸上動物の肉類やその加工品についてはEUや米国は受け入れを原則禁止しています。
これは中国など東南アジアも国々も同様です。

 食品関係はどこの国であっても国民の健康に関わる問題を含んでいるため独自の規制があり一般商品と比べて通関手続きは厳格です。取引を始める前に輸入者と十分に打ち合わせをして通関手続き等に必要な書類を輸出者は準備します。

食品輸出業務の流れ

1.運送手段とルートの決定

 運送日数や運送中の温度管理などの鮮度保証が重要になるので輸入者と十分の打ち合わせをして運送手段、運送ルートを決定します。日本は島国のため海上貨物か航空貨物になります。付加価値のある食品類は航空貨物で運んでもコスト吸収が容易ですが、汎用食品の場合は重量、容積により海上貨物を利用することになります。運送手配は輸出者がするのか輸入者がするのか、売買契約で運賃負担と貨物危険負担を取り決めます。

2.輸出通関手続き

 輸出者は準備した商品を原則として保税地域に搬入して通関業者に輸出通関手続きを依頼します。
海上貨物の場合は港湾区域にあるコンテナーヤード、航空貨物の場合は国際空港の貨物ターミナルが保税地域になっています。検疫、輸出申告の手続きが完了するとコンテナ等に積み込みすることができます。
梱包については輸入者指定の仕様とラベル添付の特別作業が必要になる場合があります。
これも運送期間、温度管理等を考慮して決めます。欧州向け食品などは日本主要港より航海日数は約1ヵ月かかり、赤道を2回横切ることになるのでコンテナ内の温度は上昇する場合があります。
そのため食品の種類によってはコンテナ内の温度調整ができる冷蔵冷凍コンテナ(Reefer)を使用します。

3.船積書類の準備

 輸入者が輸入手続きに必要な船積書類の準備をします。輸出者はインボイス(商業送り状)、パッキングリスト(梱包明細書)、原産地証明書、食品分析表などを作成して輸入者に送付します。原本は船荷証券等と共に銀行決済に担保として利用され銀行経由で送られる場合もあります。

4.輸入申告

 輸入国に到着した貨物は輸入者によって輸出とは逆の流れで輸入通関手続きがされます。
保税地域に陸揚げされて貨物の検品、そして事前に受領した船積書類を使って輸入申告をします。
そして最終的には保税地域から引き取られ輸入国で自由に流通されることになります。

食品輸出の今後

 食品の輸出は原発事故や円高のために落ち込んだ時期もありましたが、貿易統計でも上昇しています。
輸出額で仕向け先をみるとアジア向け約70%、北米向け約15%となりますが、今後は富裕層が増えているアジア諸国、未開拓のEU向けなどが期待できるでしょう。品目別では水産物が4割、加工食品が3割となります。最近の和食ブームによって海外の日本食レストランも増えているので今後の販路拡大につながるでしょう。


千田昌明氏 執筆者 

株式会社トレードタックスウェストジャパン
代表取締役
千田 昌明 氏

【経歴】
三菱銀行(外為・法人新規など)を皮切りにアパレルメーカー(取締役)と機械メーカー(買収した米国会社のCFOなど)の合計3社でサラリーマンを経験
独立して米国やタイを中心に国際税務・税関のコンプライアンスを中心に活動
貿易を通じてアフリカの経済的自立を持続的にサポートするため一般社団法人JETICを設立、理事に就任
【資格など】
米国公認会計士 (USCPA)、米国税理士(EA)、AIBA(貿易アドバイザー協会)認定貿易アドバイザー、JUSCPA西日本部会長、通関士有資格者、輸入食品衛生管理者、日本拳法 三段、英語落語(芸名 Doraku)

弓場俊也氏 執筆者 

弓場 俊也 氏

総合商社のイタリア駐在を経て独立、貿易コンサルタントとして海外取引先との交渉及び業務連絡、輸出入手続(通関士資格保有)、海外見本市出展準備、海外買付業務、国際契約の交渉から締結まで、国内外企業の顧問、貿易部門の立ち上げ、社内研修、ビジネス通訳・翻訳(日本語⇔英語・イタリア語)、貿易実務等を業務とする。大阪市立大学非常勤講師、JETRO神戸貿易アドバイザー

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