HACCP

あなたの施設はどのタイプ?-食品安全ハザードを自覚する その①

はじめに

 2020年6月から本格施行されるHACCP法制化で要求される、「HACCPに沿った衛生管理」の法的な要求事項は、Codexに基づいた「衛生管理計画の作成」とそれを実施した証拠である「記録の保管」のたった2つです。弾力的なアプローチが認められる小規模営業者等(50人未満や特定業種)の場合は、いわゆる「HACCPの考え方を取り入れた」手引書を活用できますが法的要求事項は何ら変わりありません。すなわち食品事業者等は自身の施設や取り扱う食品の食品安全ハザードを自覚し、そのコントロールについて第三者に説明できるよう“見える化”しなければならないのです。

 この“見える化”すべきメニューを列挙したのがCodex食品衛生一般原則「オペレーションのコントロール」であるというお話を前回はいたしました。今回からはその文書化するべき推奨事項を一つずつ解説していきましょう。

Codex一般原則は2020年9月に最新版へ改訂

 厚生労働省が食品衛生法で定めるHACCP法制化は、国連のWHO(世界保健機構)とFAO(国際食糧機関)が合同で運営する食品規格委員会Codexの国際的推奨事項が基本となっています。食品事業者等にとって最も基本的な文書が「食品の一般原則」(CAC/RCP-1)という文書となります。ここまでのコラム解説は厚生労働省施策をこの一般原則に対照させて詳述してきましたが、従来の2003年の第4版から、2020年9月に最新の第5版にアップデイトされました。

 17年ぶりの改定では各推奨事項に具体的な事例を多く示し、過去の実績を反映して結果として読み手の解釈ズレを軽減するよう努力しています。いくつかの新しい概念の推奨や、あいまいだった概念の再定義もなされました。Codex規格の改定は、国際的な推奨事項であり、日本国の国際的調和の観点から、以後の解説では改定を踏まえた解説とさせていただきます。

コントロールを要する食品安全ハザード

 食品事業者等には提供する食品の消費者への安全性と適切性を確保する責任がある、というのはいまさら言うまでのことでもないでしょう。日本でも食品安全基本法とその関連行政法令である食品衛生法でも示されているとおりです。

 Codexでは2003年版でこのようなことを国際的に推奨していました。①オペレーション上の食品安全性に必須なあらゆるステップを特定する、②それらステップに効果的なコントロール手段を実施する、③その継続的効果を確実にするためのモニターを実施する、④コントロール手段をレビューする。

 これらを実現するために文書化を含むシステムとしてすなわち「HACCPに沿った衛生管理」が推奨され、“HACCP原則とその適用のためのガイドライン”が国際的な推奨事項と位置付けられていました。

最初に見える化すべき“製品の記述”

 新しい2020年の第5版では、改めてオペレーションが適切にコントロールされない場合において、食品が安全でない、あるいは消費に適さない状況が起こり得るとして、その予防のため事前に原材料およびその他の成分、組成/配合、生産、加工、流通、および消費者使用に関する設計の要求事項を自ら策定し、食品事業として適切な、効果的なコントロールシステムの設計、実施、モニタリングおよび見直しを確立することを再定義しました。以下はHACCP原則に基づくかどうかにかかわらず一般的に推奨される国際要件として読んでください。

 その入り口は「製品の記述、および、プロセスの記述」です。今回は「製品の記述」について整理しましょう。それは商談会シートのようなものでしょうか?答えはきっと事業者により「Yes」であったり「No」であったりするでしょう。なぜならCodexがたずねているのはあくまでも、食品としての安全性および適切性に影響する側面としての製品記述だからです。

品質特性ではなく、安全特性でグループ化する

 現実ビジネスとして、製品は品質特性で細かく多品目化されます。同じ原材料や加工方法を使っていても、これを個食や家族食、祝い食、集団給食など喫食場面、日常的ないわゆるコモディティ商品であるか、付加価値商品であるかなど、多くの事業者では多品目製造をしています。

 しかし安全性に関する特性で考えると同じカテゴリーにくくれる製品グループで説明できる場合が多いのではないでしょうか。食品のグループ分けでは、類似した投入および成分、製品特性(酸性度(pH)、水分活性(Aw)など)、プロセスステップ、および/または意図される目的に基づいて行われるべき(図を参照ください)です。

 一般飲食の場合は「そのまま食べられる」「一般向け」「アレルゲンがあるかもしれない」「即時喫食の」「包装されていない」食品ということでほぼ一つの製品グループにくくれてしまいます。テイクアウトの程度によっては製造業扱いになる場合もあるので注意が必要かもしれませんが。調理業にはハイリスク者向け給食、セントラルキッチン調理で保管・流通がある、サテライトでさらなる調理がある、等の業態の違いがあります。

 貯蔵・輸送・販売ではおおよそ「冷凍流通品」「冷蔵流通品」「常温流通品」に「包装済み」かくらいで製品グループは分けられます。

 製造業も多品目で数多くの製品説明を作らなければと頭を抱えるのではなく、製品グループは大くくりにして、業態カテゴリーを第三者に説明しやすいよう工夫してみましょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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