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Codex2020最新版に準拠!! 化学的汚染の予防システムとは ―ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その⑥

Codex2020最新版に準拠!! 化学的汚染の予防システムとは ―ハザードと紐づけられるキーとなる側面 その⑥

はじめに

 ハザードと紐づけられるキーとなる側面として、前々回は「7.2.4 微生物学的汚染」、前回は「7.2.5 物理的汚染」について紹介しました。今回は汚染シリーズの3番目である「7.2.6 化学的汚染」を解説します。

化学的汚染とは何か?

 有害な化学物質、例えば洗浄剤、非食品グレードの潤滑剤、農薬からの残留化学物質、抗生物質などの動物用医薬品による食品への汚染は、食品安全上のハザードとして通常考えられる汚染ではないでしょうか。化学的汚染のほとんどは普段使いされている化学剤であり、これが食品に含まれることでハザードとなります。食品製造や厨房で洗浄剤、殺菌剤はほぼ必須だし、機械を使用すれば必ず潤滑剤は必要とされます。また有機農法であれば別ですが、通常の農産物や畜産物、養殖では生き物の健康を保護する目的でなんらかの薬剤を使用します。

Codex 一般原則で推奨される文書化 7.2.6化学的汚染

 これら化学的汚染を予防/最小化するシステム整備をどのように考えるでしょうか。こうした化学物質は基本的に便利なツールですから使用する化学物質を特定し、安全に定位置保管し、かつ食品や食品接触面、包装材に汚染のないよう、保護されるような使い方で使用するというのが基本手段です。

 残留農薬や残留抗生物質の予防/最小化システムは、農場段階では正しい使用基準に従った使用となりますが、工場/厨房施設においてはサプライヤーに対する供給者保証を求めることが基本手段となります。農薬や動物薬の、使用法や残留基準はそもそも法令遵守の範囲なので生産者指定などしていない一般流通からの購入であれば供給者保証までするほどのリスクはないと考える場合も多いでしょう。

使用基準のある添加物・加工助剤

 保存や発色、甘み香り、殺菌などさまざまな目的の添加物や加工助剤には、使用できる食品や使用制限、使用量等の最大限度といった使用基準があります。特に不正な使用をすると有害となる可能性のある食品添加物および食品加工助剤については、化学的汚染とみなされぬよう、意図した通りにのみ使用されるようコントロールされることが求められます。たとえば亜硝酸塩は、食肉製品で0.070g/kg(70ppm)以下という亜硝酸根としての最大残存量が法的に要求されますが、これは発ガン性が疑われているため設けられた限界値です。

Codexがリスト化していない化学的汚染

 Codexの「7.2.6 化学的汚染」にリスト化されていない化学的汚染を紹介しておきましょう。それは、自然毒、プロセスの失敗によるもの、海洋・土壌等の汚染によるもの、食品グレードでない容器包装器具、アレルゲンです。この7.2.6節で挙げられなかったのは、事業者が特段の衛生管理措置を必要とするものではなく、したがって衛生管理計画として文書化する必要性が低いものと、別立ての節で取り扱われているものとあるためと考えられます。

 自然毒としては、ふぐ毒(テトロドトキシン)や貝毒、キノコ毒、ジャガイモ芽(ソラニン等)が一般に知らされていますがそれ以外にもさまざまあります。これらは正しい採取や一般流通を経ない個人による採取や取引、調理で食中毒を引き起こし、国内での発生事例は結構、多いものです。事業者が衛生管理計画で取り扱うことは特有な場合以外には、そう起こるものではないと思われます。

 またプロセスの失敗によるものとしては、カビ毒、ヒスタミン、エンテロトキシン、アクリルアミド等があります。これらは「7.2.1 時間と温度 のコントロール」や「7.2.2 特定のプロセスステップ」で取り扱われるハザードと解釈することができます。カビ毒は発ガン性や肝障害、嘔吐、下痢など引き起こしカビそのものはハザードではないため化学的ハザードに分類され、主に穀物などの不衛生な保管が原因です。ヒスタミンは青魚(サンマ、アジ、マグロなど)に含まれるアミノ酸(ヒスチジン)が腐敗菌(モルガン菌など)の作用で変化するものでこれも腐敗菌自体はハザードではないので化学的ハザードに分類されます。エンテロトキシンは、黄色ブドウ球菌等の産生する耐熱性の毒素と、サルモネラ菌、ウェルシュ菌、セレウス菌などが産生する易熱性の毒素とあり、通常は微生物学的ハザードとして取り扱われますが、原材料が毒素に汚染されている場合には化学的ハザードとして考えられます。アクリルアミドは炭水化物を多く含む原材料を高温加熱すると産生され発がん性が疑われています。

 海洋や土壌が汚染されている場合としては、重金属、環境ホルモン、放射性物質等が挙げられます。これらは通常、国レベルでの環境モニタリング結果にしたがって一般流通されないよう管理される場合が通常で、事業者が衛生管理計画で取り扱うことはほとんど起こり得ないでしょう。

 食品グレードでない容器包装器具、アレルゲンはこの節ではなくそれぞれ、「7.2.7 アレルゲン管理」「7.2.9 包装」に別立てとなっています。次回はこのアレルゲン管理を解説します。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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