適正在庫とは?計算方法と維持するコツ、安全在庫との違いを解説

公開日:2025.11.19
更新日:2025.11.21

適正在庫の基本的な考え方とは

適正在庫とは、欠品による販売機会の損失と過剰在庫によるコスト増加の両方を防ぐための最適な在庫量のことです。この記事では、適正在庫の基本的な考え方から、具体的な計算方法、算出した在庫数を維持するためのコツまでを解説します。 また、賞味期限やフードロスなどの問題から、在庫管理が他業種よりも複雑になりがちな食品業界の課題と対策についても解説します。

適正在庫とは?欠品と過剰在庫を防ぐための指標

適正在庫とは、顧客の需要を満たしつつ、保管コストや廃棄リスクを最小限に抑える、最もバランスの取れた在庫量を指す指標です。その目的は、欠品による販売機会の損失を防ぎ、同時に過剰在庫によるキャッシュフローの悪化保管費用増大を避けることにあります。

適正な在庫を保つという考え方は、安定した企業経営と顧客満足度の向上に直結する重要な意味を持ち、多くのメリットをもたらします。

混同しやすい「安全在庫」との明確な違い

適正在庫としばしば混同されるのが「安全在庫」です。安全在庫とは、需要の急増やリードタイムの遅延といった不測の事態に備え、欠品を防ぐために最低限確保しておくべき在庫量を指します。

一方、適正在庫は安全在庫に加えて、次の入荷までに通常消費される「サイクル在庫」を含んだ、より包括的な在庫量の指標です。つまり、適正在庫と安全在庫の関係は、安全在庫が適正在庫の一部を構成する要素であると理解できます。

なぜ食品業界で在庫管理が重要なのか

食品業界における在庫管理は、他業種と比べても重要な課題です。その理由は、取り扱う製品の特質にあります。鶏卵、牛乳、生鮮食品などは、賞味期限が非常に短く、在庫過多や管理ミスは廃棄につながります。

さらに、安全面などの観点から消費者の「鮮度」「期限」への意識は高く、適切な在庫管理は、利益確保だけでなく企業の信頼性を守るためにも欠かせません。フードロス問題も注目される中、廃棄は単なる損失にはとどまらず、企業のESG評価やブランド価値にも影響を及ぼす可能性があるといえます。


食品業特有の課題

食品業界の在庫管理は、単なる数量管理ではありません。以下の要因により、在庫管理はより複雑になっています。

1.多品目・小ロット管理

食品メーカーや卸産営業者は取り扱う商品が多品目となりやすく、数百から数千品目を扱う場合もあります。さらに、ロットごとに賞味期限が異なるため、単純な数量管理では不十分です。

2. 利益率の低さ

食品業界は薄利多売型が多く、廃棄による損失が利益を大きく圧迫します。例えば、1%の廃棄率でも利益率が数%しかない企業にとっては致命的な打撃となります。

適正在庫を算出する4つの計算方法

適正在庫を算出するためには、複数の計算方法が存在し、企業の方針や扱う商品の特性に応じて使い分ける必要があります。基本的な算出方法から、需要予測や販売実績データを用いたより実践的なアプローチまで様々です。

ここでは、代表的な4つの計算方法を紹介し、それぞれの手法がどのような考えに基づいているのかを解説します。自社の状況に合った適正在庫の算出方法を見つけるための参考にしてください。

【基本】安全在庫とサイクル在庫から算出する方法

適正在庫を求める最も基本的な計算式は「適正在庫=安全在庫+サイクル在庫」です。
サイクル在庫とは、発注から次の発注までに消費される在庫量の半分のことで、「発注量÷2」で算出します。

適正在庫の計算方法

適正在庫=安全在庫+サイクル在庫

サイクル在庫の計算方法

発注量÷2

一方、安全在庫は需要の変動やリードタイムの不確実性に備えるためのもので、「安全係数×需要量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)」という式で求められます。

安全在庫の計算方法

安全係数×需要量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)

安全係数は、どの程度の欠品を許容するか(欠品許容率)によって設定される数値です。この計算式を用いることで、予測不能な事態に備えつつ、定期的な消費量を考慮した理論的な在庫数を算出できます。

需要予測のデータを用いて在庫量を計算する方法

過去の販売実績や市場のトレンド、季節変動といったデータに基づいて将来の需要を予測し、そこから適正在庫数を算出する方法もあります。

このアプローチでは、「一定期間の需要予測数+安全在庫数」が適正在庫量となります。需要予測の精度が非常に重要となり、統計的手法やAIなどを活用して予測の正確性を高める取り組みが求められます。

特に、新商品やトレンドに左右されやすい商品の場合、過去のデータだけでは不十分なため、市場調査やプロモーション計画などの情報も加味して予測を立てる必要があります。正確な需要予測は、過不足のない在庫計画の基盤を築きます。

在庫回転率と在庫回転日数から割り出す方法

在庫がどれくらいの期間で売上につながっているかを示す指標である在庫回転率や在庫回転日数を用いて、適正在庫を判断する方法です。

在庫回転率は「売上原価÷平均在庫金額」で算出され、この数値が高いほど効率的に在庫が販売されていることを意味します。目標とする在庫回転率を設定し、そこから逆算して「売上原価÷目標在庫回転率」という式で適正な平均在庫金額を導き出します。
また、在庫回転日数は「日数÷在庫回転率」で計算され、商品が在庫として滞在している期間を示します。この日数を目標値に設定し、現状と比較することで、在庫水準が適正かどうかを評価できます。

在庫回転率の計算方法

売上原価÷平均在庫金額

在庫回転日数の計算方法

日数÷在庫回転率

交叉比率で適正な在庫金額を求める方法

交叉比率は、在庫がどれだけ効率的に利益を生んでいるかを示す指標で、特に小売業で重要視されます。
この比率は「在庫回転率×粗利率」という式で計算され、数値が高いほど儲けの効率が良い商品と判断できます。この交叉比率を用いて、目標とすべき在庫金額を算出することが可能です。

交叉比率の計算方法

在庫回転率×粗利率

例えば、業界平均や自社の目標とする交叉比率を設定し、その数値を達成するために必要な在庫回転率や粗利率を検討します。そこから逆算することで、商品ごと、あるいはカテゴリごとに確保すべき適正な在庫金額の目安を立てられます。

算出した適正在庫をキープする5つのコツ

適正在庫は一度計算して終わりではありません。市場の需要や供給の状況は常に変動するため算出した数値を維持し続けるための継続的な管理が不可欠です。

目標とする在庫水準をキープするためには社内での情報共有や業務プロセスの見直し外部環境の変化への対応など多角的なアプローチが求められます。ここでは適正在庫を効果的に維持するための5つの具体的なコツについて解説します。

全社で適正在庫の基準を共有する

適正在庫を維持するためには、まず社内全体で在庫に対する共通の認識を持つことが重要です。
営業部門は欠品を恐れて多めの在庫を望み、経理部門はキャッシュフローを重視して在庫圧縮を求めるなど、部門間で利害が対立しがちです。そのため、客観的なデータに基づいて算出された適正在庫の基準を、全部門で共有し、共通の目標として認識する必要があります。

扱う商品の特性によって適正な基準は異なりますが、設定した基準を全社で理解し、協力して目標達成を目指す体制を構築することが、一貫した在庫管理の第一歩となります。

発注方法や発注点を定期的に見直す

適正在庫を維持するためには、発注の仕組みを定期的に見直すことが欠かせません。
発注方法には、在庫が一定量を下回ったら発注する「定量発注方式」と、定期的に決まったタイミングで発注する「定期発注方式」があります。どちらの方法が自社の商品に適しているかを見極め、必要に応じて変更します。

特に、在庫量がこの数値を下回ったら発注をかけるという基準である「発注点」は、需要の変動やリードタイムの変化に合わせて柔軟に調整する必要があります。発注点の設定が現状とずれていると、過剰在庫や欠品の原因となるため、定期的な見直しと最適化が求められます。

需要予測の精度を向上させる

適正在庫の算出と維持は、正確な需要予測に基づいています。

そのため、需要予測の精度を高める努力は継続的に行うべきです。過去の販売データだけでなく、季節指数、天候、市場のトレンド、競合の動向、プロモーション計画など、需要に影響を与える様々な要因を分析に取り入れることが重要です。

近年では、AIを活用した需要予測ツールも登場しており、人間では気づきにくい複雑なパターンを分析し、より精度の高い予測を立てることが可能になっています。

予測精度が向上すれば、不必要な安全在庫を削減し、より的確な在庫計画を立てることができるようになります。

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商品の調達や製造にかかるリードタイムを短くする

発注してから商品が倉庫に入荷するまでのリードタイムは、必要な在庫量に直接影響します。
リードタイムが長ければ長いほど、その間の需要変動リスクに備えるために多くの在庫を抱える必要が生じます。したがって、このリードタイムを短縮する努力は、在庫削減に直結します。

仕入先との連携を強化して納品までの時間を短縮したり、製造プロセスの効率化を図ったり、倉庫内の入荷作業を迅速化したりするなど、様々な側面からの改善が考えられます。リードタイムが短くなれば、急な需要増加にも迅速に対応できるようになり、欠品リスクを低減させながら在庫量を圧縮できます。

キャッシュフローから適切な在庫量を判断する

在庫は企業の資産であると同時に、現金が形を変えたものでもあります。過剰な在庫は、資金を寝かせることになり、キャッシュフローを悪化させる大きな要因となります。

特に資金繰りが重要となる食品小売や卸売業では、理論上の適正在庫数だけでなく、賞味期限や季節需要を踏まえた財務状況に応じた在庫管理が不可欠です。キャッシュフロー計算書を確認し、在庫投資が経営を圧迫していないか、また廃棄ロスを増やしていないか、常に監視する必要があります。

どれくらいの在庫金額なら健全な経営を維持できるのかという財務的な視点を持つことで、販売機会と資金効率のバランスが取れた、より現実的で適切な在庫量を判断できます。


適正在庫を管理する上で注意すべきポイント

適正在庫の実現は、一度計算方法を導入すれば終わりというわけではありません。市場環境は絶えず変化するため、それに合わせた柔軟な対応が求められます。また、効率的な管理を行うためには、システム導入も有効な手段となります。

ここでは、適正在庫を継続的に管理していく上で特に注意すべき点を2つ挙げ、その重要性について解説します。

季節やトレンドによる需要の変動を考慮に入れる

適正在庫の数値を算出する際には、季節やトレンドによる需要の変動を必ず考慮に入れる必要があります。

食品で例に挙げると、夏場の気温が高い時期はアイスクリームや氷菓、炭酸飲料などの需要が高まり、クリスマスシーズン・年末にかけて、ケーキやチョコレート、おせち用の食材などの売上が伸びる、といったように、季節・気温、またイベントごとに需要が変動する商品は少なくありません。
また、アサイーなど流行に左右されやすい食品や、生鮮食品・牛乳・鶏卵など賞味期限の短い食品も、需要の変動が激しい商品の典型です。

これらの商品に対して、年間を通して同じ在庫基準を適用してしまうと、需要期には欠品が、閑散期には過剰在庫が発生してしまいます。過去のデータから季節指数を算出したり、市場のトレンドを常に監視したりして、需要の波に合わせた在庫計画を立てることが求められます。

定期的に数値を再計算し最適な状態を保つ

一度算出した適正在庫の数値は、決して固定的なものではありません。
市場環境、競合の動向、リードタイムの変化など、在庫を取り巻く状況は常に変化します。そのため、設定した安全在庫の基準や発注点、需要予測の前提条件などを、定期的に見直し、数値を再計算することが不可欠です。

例えば、四半期ごとや半期ごとに実績データを確認し、計画との乖離を分析するといった手法も対策の1つです。

まとめ

適正在庫は、欠品による機会損失と過剰在庫によるコスト増大を防ぐための最適な在庫量です。安全在庫が不測の事態に備える最低限の在庫であるのに対し、適正在庫はそれにサイクル在庫を加えた、より計画的な指標となります。

適正在庫の計算方法には、安全在庫を用いる基本的な手法から、需要予測や在庫回転率、交叉比率を活用する方法まで様々です。算出した在庫数を維持するためには、全社での基準共有、発注プロセスの見直し、需要予測の精度向上、リードタイムの短縮、キャッシュフローの監視が重要になります。季節変動などを考慮しつつ、定期的に数値を再計算し、常に最適な在庫管理を目指すことが企業経営の安定化につながるでしょう。

また、適正在庫を保つためには、受注・仕入管理と在庫管理の連携が重要です。
上記のような販売管理の業務フローは、製造業・卸売業・販売(小売)業と、あらゆる業種の中核に位置するものですが、食品業ではその業務特性上、特にシビアな精度が求められます。販売管理システムは、そうした販売管理の業務フロー(受注・仕入管理と在庫管理)を一元管理し効率化するのに最適なソリューションです。

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よくある質問

Q.適正在庫とは何ですか?
A.適正在庫とは、過剰在庫や欠品を防ぎ、需要に応じた最適な数量を維持する在庫管理の考え方です。企業の利益を最大化し、キャッシュフローを改善するために重要な指標です。
Q.なぜ、食品業界で適正在庫が重要なのですか?
A.食品は腐敗や賞味期限切れによる廃棄リスクがあるため、過剰在庫はコスト増、欠品は販売機会損失につながります。適正在庫を維持することで、廃棄ロス削減、キャッシュフロー改善、顧客満足度向上が期待できます。
Q.適正在庫と安全在庫の違いは?
A.安全在庫は予想外の需要増や供給遅延に備えるための「余裕分」であり、適正在庫は全体のバランスを考えた「理想的な在庫量」です。

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