2023年7月19日に開催しました「FSSC22000の最新情報と認証取得へのアプローチセミナー」についてレポートいたします。
2023年4月1日にFSSC22000の第6版が発行されました。フードチェーンカテゴリーの新設や改訂、要求事項等が追加されています。
※ 本講演は、「FSSC22000 Ver6.0の最新版について取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ」と題しまして、FSSC22000の要求事項基点ではなく、あくまでも国際的に認められているCodex HACCPを起点として、グローバル認証に対してどういうどのように向き合えばいいかという観点でご講演いただいておりますのでご了承ください。
最新のFSSC22000 Ver.6 アップデイト、リスクベースアプローチ
FSSC22000 Ver. 6 アップデイト
2023年4月1日にFSSC22000の第6版が発行されました。これまでのVer.5.1での審査は、2024年3月31日が期限になっております。移行期間12か月を経て、2023年4月1日から新しい第6版による審査になります。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
FSSC22000 Ver. 6 追加要求事項
FSSC22000 Ver. 6の具体的な追加要求事項に関する内容について紹介します。
1つめの「食品包装表示の妥当性・検証」は、「期限表示」と「アレルゲン表示」についてリスクベースで考える必要があります。
2つめの「リサイクル材料の使用基準」は、WHOが進めるSDGsの動きが少し反映されています。正しく運用すれば効率的であるはずのHACCP、無駄が発生しないという期待される効果に対して、結果を出す責任への目標が立てられることの追加がありました。加えて「品質管理」の部分と「食品廃棄物の取扱い」についてですが「品質管理」部分は、FSSC22000の品質マネジメントの要素が削除されています。あくまでも品質要件との統合性を保つという程度の意味合いに変わりました。
それ以外の「アレルゲン管理」・「環境モニタリング」・「新しい機器の購入設置」に関しては、「食品包装表示の妥当性・検証」と同様に、食品安全上のリスクに応じた対応が必要になるというのが今日の講義での主テーマ「リスクベース」へとつながります。
リスクベースアプローチ
FSSC22000において、食品安全性に係る要求事項はリスクベースで判断することになっています。リスクベースというのは、事業者ごとに潜在的な食品安全ハザードを特定し、特定した潜在的ハザードのリスク評価をする。そして、リスク評価に基づいて、自分たちにとってどの潜在的なハザードが「重大か」を決定します。このハザード分析が根幹となります。
Codex HACCPでは、これまではCCP(欠くべからざる管理点)を決定するまででしたが、2020年版一般原則で中間的な「重大さ」として、「より大きな注意を要するGHP(適正衛生規範)」の概念を採用しました。一方、ISOではCCPとGHPのギャップに、OPRP(オペレーション上の前提条件プログラム)を採用しています。
Codexハザード分析
Codex HACCPでは、ハザード分析は3段階に分かれています。
第1ステップとして、生鮮原料やその他の原材料、環境、プロセス中、または食品中で特定された潜在的ハザードを全てリストアップします。通常考えて起こりうる場所(プロセスのステップ)を特定して、ハザードは具体的であり、存在の原因または理由を挙げます。例えば硬質異物の混入であれば、刃の欠けであるのか、原料由来であるのかなどです。
第2ステップでは、それら潜在的ハザードの存在につながる条件に関する情報を収集し、リスク評価します。「危害の起こりやすさ」と「起きる危害の重篤性」を掛け合わせ、ハザードの重大さを評価します。
第3ステップとして、それらがHACCPで取り扱うべき重大なハザードであるかどうかを決定します。重大なハザードかどうかは、そのハザードを予防、排除、許容できるレベルまで低減することが食品安全上不可欠であるかどうかによります。これらの手順を踏んで、管理しなければいけないポイントを見つけていきます。
コントロール手段は5W1H+α
コントロール手段の基本は5W1Hです。ハザードに対して、ハザードがあるため(Why)に、どこ(Where)でそれをモニターするにあたり、何を(What)、どうやって(How)、どの頻度で(When)、誰が(Who)するのか。これらを食品安全計画に記載します。そこに幾つかの要素が加わります。
CCPの一例
胞子を形成しない栄養細胞病原体を(Why)加熱のステップで(Where)コントロールすると考えます。現場で加熱の処理を行うオペレーター(Who)が、製品の中心温度を(What)中心温度計で(How)直接、ばらつきを考慮して何カ所か1ロットごと(When)、計測します。
それに、越えてはいけない加熱の温度と時間の条件である許容限界と、大量調理施設衛生管理マニュアルと社内実験などそれを決めた科学的根拠、記録の出荷前確認・独立チェック・計測器の比較校正(較正)などを加えます。
OPRPの一例
加熱後、包装するまで食品がむき出しになっている状態で、環境病原体の汚染の暴露を受けるというハザードは大変なことです。特にRTE(そのまま食べられる)食品はリスクが大きくなります。しかし、加熱した後、包装するまでに汚染されないことの許容限界を設定するのは困難です。
そこで、RTE食品への環境病原体汚染を(Why)、加熱後包装前の間のステップで(Where)、食品接触面の清浄度を(What)、訓練されたサニテーションの標準作業手順に従って(How)、定められたクリーニングプログラム時に(When)、クリーニング担当者(Who)が行うようにします。加えて、SSOP(衛生標準作業手順)社内実験や薬剤仕様書を取り寄せるなどの妥当性確認、記録を出荷前に確認、環境モニタリングなどを行います。
しかし、サニテーションを計測したり観察したりするのは温度・時間のように厳格にはできません。許容限界が設定できないため、適用除外となります。そこで、許容限界が適用除外のコントロール手段としてOPRPという概念が生まれました。
「より大きな注意を要する GHPs 」とハザードコントロール
より大きな注意を要するGHP一例
アレルゲンが入ってはいけない製品に、別の製品のアレルゲンが工場施設内で入ってしまうという例では、アレルゲンの他製品への交差接触を(Why)、リワークのステップで(Where)、アレルゲン原材料を使用したリワーク品を(What)、アレルゲンの存在を示す目印をすることと、きちっと密閉した定位置管理を行う(How)。それを品質管理目的でリワークが発生するその都度(When)、製造スケジュール管理担当者(Who)が行います。加えて、記録の出荷前確認、独立チェック、製品検査を行います。
許容限界の設定はサニテーションのOPRPと同様に適用除外ですが、加えて妥当性確認も困難であるためこちらも適用除外となっておりOPRPとは明確に違います。
許容限界が設定しづらいハザード
Codexの新しいガイドライン作成時に、2000年前後から許容限界が設定しづらいハザードを、HACCPシステムの中でどう考えて、どう進めたらいいかが大きな議論になりました。スライド資料の1.~4.などはモニタリングが難しく、許容限界が設定できません。そこで、CCP以外にもサニテーション、アレルゲンコントロール等の予防コントロールを加えました。米国食品安全強化法(FSMA)の予防コントロール規制では、4.以外はCCP並みの厳しい管理を要求しています。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
重大なハザード定義範囲の違い
アメリカの予防コントロール規制の考え方は、Codexの「より大きな注意を要するGHP」の概念とほぼ同じになっています。もともとCodexでは「重大なハザード」とは“HACCPで取り扱うべきハザード”のことを言っていました。ところがISO22000では、それに加えて“OPRPで取り扱うべきハザードも含まれ”ます。アメリカのFSMAの予防コントロール規制では、それ以外の“予防コントロール全て”を、重大なハザードとしました。つまり、リスク評価に基づいてコントロール手段が必要ならば全てハザードコントロールすべきであるという考え方です。
Codexハザードコントロール
Codexのハザードコントロールは、Codex食品衛生の一般原則の第1章セクション1に明記されています。事業者ごとにハザードを自覚し、理解するところから始まります。そして、自覚し理解したハザードを管理するために必要なコントロール手段が要求されるのです。GHPの適用だけで不十分な場合は、HACCP原則に基づく衛生管理の検討が必要となります。
コントロール手段は、Codex食品衛生の一般原則の第1章セクション7に列挙してあります。HACCPのガイドラインと同様に、製品記述やモニタリングなどが挙げられていますが、許容限界はありません。CCPに対しては許容限界が必要ですが、GHPに関しては許容限界を明確に要求していないのです。また、GHPの有効性の検討についても、サニテーションに関して触れるのみとなっています。大事なことはコントロール手段のメニューです。7.4で文章化と記録が、7.5でリコール手順が記載されています。
リスクベースで紐解く
リスクベースで紐解く施設基準
FSSCの施設基準は、ISOの技術仕様書であるISO/TS22002-1に書かれていますが、個々の施設やプロセスに適用されるとは限りません。適用されない場合は、ハザード分析によって正当化され、文書化される必要があると書かれています。つまり、施設の要件として不要なものは、ハザード分析の中で「見える化」すればいいのです。そこで鍵となるのがCodexです。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
Codex施設基準(例)
Codex食品衛生の一般原則の施設基準のうち、2020年版で追加・変更された箇所、吸排気の動線確保問題や水の供給問題等について、スライド資料に事例を挙げて紹介しています。Codexの施設基準の外せないポイントは、日本国が示した施設基準である参酌基準をきちんと満たしていれば、「世界で通用するレベル」になるということです。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
リスクベースで紐解く食品安全文化、食品安全文化を醸成する5要素、食品安全文化を監査する基点
近年、「食品安全文化」という言葉が随分と使われるようになりました。概念的ともとれる“文化”をどのように監査するのでしょうか。
スライド資料に提示したとおり、Codexでは食品安全文化を5要素に整理しています。経営層がコミットしてやらなければいけないのは、資源の供給であると明記しています。
要素1番目の「安全な食品の生産と取扱いに対する経営層と全従事者のコミットメント」をどのように監査するのかを考えてみましょう。実はとてもシンプルで、食品安全計画に経営者がサインすることなのです。サインをする行為とは、その計画書に対して遂行責任を負うことです。その遂行責任を全従業員が果たしたという記録によって説明責任が達成できるのです。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
リスクベースの食品安全文化、食品安全文化の監査
取り組みと、それを監査する方法をスライド資料に示しています。このように、現場のオペレーションから食品安全計画に経営者がサインするところまでを系統的にたどることで、食品安全文化を監査できます。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
リスクベースで紐解く環境モニター
環境モニターとは、通常サニテーションの検証活動として実施されるものです。世界的に環境モニタリングの重要性が上がっています。環境モニタリングの対象となるハザードは、リステリア・モノサイトゲネス、あるいはサルモネラ属菌などの環境病原体です。
RTE食品への環境病原体汚染を予防するクリーニングプログラム、予防サニテーションの検証としての環境モニタリング
RTE食品への環境病原体の汚染がハザード分析で特定された場合、その汚染の検証行為として、環境モニタリングが必須の要求事項となります。環境モニタリングの目的は、潜んでいる環境病原体を「見つけだして撲滅する」ことだといわれています。つまり、陰性が出続けることが目的ではなく、探し出さなければいけない(陽性が出る)のです。探し出すために四つん這いで、這いつくばって、隅の隅までサンプリングを採るのが環境モニタリングなのです。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
環境サンプリングのゾーン指定
スライド資料のように、4つのゾーンに分けます。ゾーン1は、食品と接触する汚染を予防的サニテーションで絶対に守るところなので、環境サンプリングの対象場所に通常はなりません。ゾーン2、3、4の中で、2が最もサンプリング頻度が高くなります。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
陽性結果
陽性結果が出た場合、例えばラインの停止、市場出荷の制限など例外なく是正措置を取らなければいけません。その間に、調査を行い、根本原因を特定し、予防対策を実施します。根本原因が見つからなかった場合は、さらなる追加のサンプリングを行うか、事象が単独のものかを判断します。
リスクベースで紐解くアレルゲン
Codexは2020年版で新たにアレルゲン管理の実施規格を発行しています。アレルゲン管理には2つのコントロール手段があります。1つは「原材料に含まれているアレルゲンの正しいラベリング」で、正しいラベリングがされることで事故を予防することができます。許容限界が設定できますから、HACCPでCCPとして取り扱うことが可能です。もう一つが「意図せず別の食品に混入する交差接触の予防」です。サニテーション、製造スケジュールなどによって原材料の交差接触を予防します。CCPもそうですが、より大きな注意を要する衛生規範になるかどうかは、ハザード分析によって決まります。異なるアレルゲン原材料を取り扱う施設の場合はおしなべて、交差接触というリスクをリストアップし、ハザードをリスク評価する必要があります。
ワンファイルオールクリアの実現に向けて
ワンファイルオールクリアの実現に向けて、実効的なグローバル認証により攻めの持続可能性を実現しよう!
とにかく要求事項外の使用書式等の仕様や運用で、複数の規格や規制に対応する無駄な手間が増えることはもっとも忌避すべきことです。国際的に認められるCodex HACCPには、5つの欄で構成されるハザード分析の書式があります。これで重大なハザードを特定し、その中に許容限界が簡単には設定しにくいような、場合によってはGHPでも十分にコントロール可能である潜在的ハザードがあるならば再検討をします。再検討した中で、妥当性確認ができるものは「OPRP」(妥当性確認必須)として取り扱う。それができない場合はCodex概念の「大きな注意を要するGHP」(妥当性確認必須ではない)と位置付けて、文書化と記録付けの対象とする。そして、ハザード分析によって適用除外と決めたものは、堂々と適用除外とします。
このコツを抑えさえすれば「ワンファイルオールクリア」を達成していただくことができ、現場の納得感を得られ、食品安全意識が共有できるような食品安全システムが出来上がります。グローバル認証の取得によって初めて、世界に向けて戦っていける攻めの持続可能性を実現できたと宣言できるのではないでしょうか。
講演資料:「FSSC22000 Ver.6 最新版について ~取得メリットを実感できるリスクベースアプローチ~」より
株式会社鶏卵肉情報センター
代表取締役社長(月刊HACCP発行人)
杉浦 嘉彦 氏
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