HACCP

許容限界の科学的・技術的な有効性の条件とは(Codex 19.8);HACCP 2022最新版に準拠!!

許容限界の科学的・技術的な有効性の条件とは(Codex 19.8);HACCP 2022最新版に準拠!!

はじめに

 前回に引き続き、HACCP12手順の8手順目、HACCP7原則「適用」の第3原則目となる「許容限界の確立」について、Codexの「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版に基づいて、その「19.8 個々の CCP に対して有効性確認済み(validated)の許容限界を確立する」(手順8 /原則 3)ではどのように記述されているのか、今回は第2文節について解説を進めていきましょう。今回も「原則」編の第38回および、今回の焦点となる“妥当性確認”について第40回にも事前に目を通していただいた上で読み進めることを推奨いたします。

訳語“有効性確認済み”と“妥当性確認”

 “有効性確認済み”(validated)と“妥当性確認”(validation)は訳語の違いだけで本来的に形容詞と名詞の関係でしかありません。「妥当性確認」の語はISO22000で訳語として認められて民間認証を中心に一般用語化が著しいことと、そもそも誤訳ではないため名詞「validation」は“妥当性確認”の訳語を充てさせていただきます…が、「validated」の訳語を充てようとすると“妥当性確認済み”とするのに違和感が大きすぎると感じるのは筆者だけではないでしょう。

 “validate”の語はラテン語の「validus」(強い、有効な)から来ていて「有効にする」「正当性を証明する」という意味になり、「val」(価値)や「valid」(妥当な)といった単語と関連付けられます。食品安全ではこれを科学ベースで証明することとなりますので“科学的証明”の意訳語を充てられた場合もあります。


より正確には“科学・技術的な証明”

 今回もまず、赤字になっていない旧版から引き継いでいる黒字の箇所をおさえておきましょう。「CCPs毎、コントロール手段の許容限界を特定、科学的に有効性確認をする」とあり加えて旧版にあって新版には残っていない青字の「専門家により開発されたガイダンス(手引書)を使用する場合」への注意喚起があり、HACCP手引書の粒がそろっていない日本ではこの青字部分が残されていたほうが良かった側面があるかもしれません。

スライド

 いずれにしても第2文節はほとんど新たに追記(つまり、赤字部分)された記述となります。科学的に有効性確認すること(妥当性確認)は、「正しく実施された場合にハザードを許容可能レベルにコントロール可能である、という証拠を取得する」ことであるとして、①. 実地研究が含まれる場合、②. 自身でする必要がない場合、③-1. 行政ガイダンス(HACCP手引書のこと)、③-2.第三者機関に依る場合、と4パターンを事例として示しています。

 前回に、許容限界には観察可能&間接的パラメータも認められることをていねいに解説いたしました。例示した加熱調理や冷却ステップ(第20回)での、中心温度と時間の達成を観察可能&間接的パラメータでモニタリングする場合(たとえば、焼き目、ベルトスピード、庫内温度、仕掛品厚さ等)、これは「実地研究して」みて中心温度達成がどの程度のバラツキで実現可能なのかを“技術的に”妥当性確認する必要があります。加えて製品仕様(第53回)により水分含量、pH、水分活性(Aw)等の条件で微生物の増殖を抑えられることが見込まれる(第21回)場合、配合量がその必達目標を達成できるのか“技術的に”「実地研究して」みる必要(たとえば、保存試験)があります。

 このように実際の現場ルールを構築していく際には、行政ガイダンスや利用可能な科学的証明のほか、それを現場オペレーションとモニタリングの方法にリンクさせられるだけの技術的証明が必要になってくるということです。

HACCP手引書は本文より資料編に着目

 この「許容限界に有効性確認しなければいけないこと」を、小規模営業者等の場合は“HACCPの考え方を取り入れた手引書”でもって保証する場面が通常よく想定されます。ところが日本の“HACCP手引き書”は多様な日本食をカバーするには、なかなかにばらつきが大きく、「手引書通りに衛生管理計画」とはまいらない現場オペレーションも多数あります。これは手引書開発時から想定されていたことで、そのために「資料編」が存在します。多店舗外食の手引書であれば「低温調理」、菓子製造の手引書であれば「pHや糖度と水分活性」といった、知られている科学と現場をつなげる技術的な根拠を、この手引書の「資料編」から拾うことができます。

求められる科学的な妥当性確認“研究施設”

 このように許容限界の設定には、科学的・技術的証明をする(有効性確認済み(validated))ことが要求されると明確になったわけですが、米国に行って驚いたのが、実際のプラントを持ち込んで、ボツリヌス菌など病原微生物の挙動を直接確かめられる(バイオセキュリティレベル;BSL-3)ような実験プラントが米国には6大学に整備されていること。日本ではその後、ある洗剤メーカーと地域大学でこの同等施設を設けたと聞いていますが、日本の食を全世界に発信するには欠かせない施設であり、国内、産官学の意識改革を求めたく思います。

 また現場に戻るとこの妥当性確認を、科学的根拠と現場オペレーションをつなぐ技術的根拠なしに設定した許容限界がとても多く、たとえば上述した加熱冷却では「詰め込みすぎ」や「庫内の温度バラツキ」等まで考慮した技術的証明ができていない許容限界設定をたびたび見ることがありますので、ぜひお考えいただきたいところです。

 これらを詳説する「食品安全コントロール手段の妥当性確認に関するガイドライン(CXG 69-2008)」は下記、「コーデックス規格基本選集 I」に掲載していますので参考になれば幸いです。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007~2024年)
国際HACCP同盟認定 トレーナー・オブ・トレーナー
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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