1.近年の食品衛生への取組
食品安全について、特に最近、世間の関心も高く、特に事故が起きてしまった場合は大きく報じられ、対応を誤ると事業継続に関わる問題に発展しかねない状況で、新聞紙面には毎月の様に食品回収の社告が上げられています。
● 厚生労働省や都道府県等が公表した食品衛生法違反食品等の回収情報:
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kaisyu/index.html
そんな中、食品製造に関わる皆さんの一番の関心事として、食品衛生法の改定が上げられるのではないでしょうか。(食品衛生法等の一部を改正する法律案(平成30年3月13日提出)
● 食品衛生法改正に関する動き 第196回国会(常会)提出法律案:
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
この中の“概要”によれば、
- 広域的な食中毒事案への対策強化
- HACCP(ハサップ)*に沿った衛生管理の制度化
*事業者が食中毒菌汚染等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品出荷までの全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程を管理し、安全性を確保する衛生管理手法。先進国を中心に義務化が進められている。 - 特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
- 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
- 営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
- 食品リコール情報の報告制度の創設
- その他
(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)
が上げられおり、施行期日は、“公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(ただし、1.は1年、5.及び6.は3年)となっています。
(尚、厚生労働省に電話で確認したところ、“5月14日現在、参議院は通過しているが、衆議院は、現状では、どうなるか見通せない”との事でした。)
この1-7項の中でも、特に食品事業者の皆さんに直接関連し、ご興味があるのは、2.「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化」「5.営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設」についてではないでしょうか?
2.「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化」について
HACCPについての説明は、上記枠の中の“*”に簡単にまとめた通りです。また、これまでのコラムで述べられていましたし、解説本もたくさん出ていますが、ここでは、厚労省の下記参考URLをご参照下さい。政府のサイトなのでISOやFSSCなど特定の民間規格についての情報はありませんが、厚労省のHPには、結構役に立つ情報が載せられていたりします。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/
HACCPはこれからという方はこの中の
● HACCP導入のための参考情報(リーフレット、手引書、動画):
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161539.html
などわかりやすくて良いかもしれません。すべてではありませんが、業種毎の手引き書なるものがあり、内容的に古いのではと思う部分もありますが、HACCP導入の一連の流れ、文書・記録類について概要を知るには良いと思います。それに無料ですし。
結局の所、HACCPに沿った衛生管理の制度化については、規模などに関わらず製造・加工・調理、販売等を行う全ての食品等事業者が対象となる訳ですが、全国規模のメーカーと近隣のみを対象として商売されている小規模な食品事業者や料飲店などを同じレベルの手段で管理する事は、必要性も低く、経営資源上も難しいので、厚労省は、求める管理レベルを2つに分けるようにしています。
これは、決して小規模だから食品衛生に目をつぶっていいという事ではありません。食品事故を起こさないという目的は一緒でも、製品の特性、消費のされ方、流通範囲などを考えれば、組織毎に管理の手段、レベルは違ってくるという事です。
いずれにしても、食品等事業者は、衛生管理計画を策定し
一つは、“その内容がコーデックスのガイドラインに基づく HACCP の7原則を要件とする基準 A”
もう一つは、“コーデックスHACCP の弾力的な運用を可能とする HACCP の考え方に基づく衛生管理を要件とする基準 B(小規模事業者、一定の業種等を対象)”です。(尚、現在、厚労省は、基準A、Bという表現を公式には使用していません。)
簡単に言えば、A基準は、コーデックスHACCPをフルスペックでやってくださいね。B基準は、HACCPの考え方を取り入れた(基準、手順を決める。記録を残すなど)上で、しっかり衛生管理してくださいね。という事なのだと思います。
これらのHACCPの導入に際し、事業者の負担軽減の為に、食品等事業者団体が基準 A 又は基準 B への対応のための手引書を、厚労省の食品衛生管理に関する技術検討会で助言、確認を受けて策定しています。これら手引書は、事業者の為に供されるだけでなく、都道府県等に通知し、制度の統一的な運用に資することとしています(つまり保健所毎の指導時の差をなくすという事)。
5月15日時点では、「小規模な一般料飲店」「食品添加物製造」「機械乾めん・手延べ干し麺製造」「豆腐製造(小規模な豆腐製造事業者向け)」等最新日付4月5日付けで10種類が、下記URLにアップされています。
今後、どの業界団体が、手引き書を作成するかは、厚労省では、いえない(お願いする形なので)様です。皆さんの業種で手引き書が作成されるかどうかは、所属する業界団体に確認頂く事になります。
● 食品等事業者団体による衛生管理計画手引書策定のためのガイダンス:
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028.html
4.迫る食品衛生法施行
ご存じの通り、営業許可書は、管轄保健所で発行されており、保健所は、都道府県、政令指定都市など地方公共団体の所管であります。結果として、保健所毎に営業許可品目の取り扱いが異なっていたり、施設の設置基準も異なる場合があると言われています。これを全国的に同一基準で運用していこうというのが趣旨だそうです。
3.「営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設」について
法律の施行はおそらく2020年からになると思われます。すでに自社での食品安全の仕組みをお持ちであろうとはいえ、準備期間が必要な事も考えると、そろそろ手を打つ(業界の状況を確認して、計画しておくだけでも)時期ではないでしょうか。
HACCPを含む民間規格(ISO22000,FSSC22000,JFSMのB、C規格)については、その認証を受けているからといって、その事実のみを持って保健所の指導など免除されたりすることはありません。
ただ、これらの規格は、HACCPの手順を完全に含んでおり、仕組みをきちんと運用し、これら規格で用意した文書・記録を示せば、“その内容がコーデックスのガイドラインに基づく HACCP の7原則を要件とする基準 A”への対応は確実だと思われます。
次回、ISO22000,FSSC22000,JFSMなど民間規格について、その特徴など述べさせていただきます。
尚、自治体HACCP、SQFについては、筆者は、審査経験、事務局経験ともないので、あまり触れません。あしからずご了承ください。
食品メーカーに30年間勤務し、製造現場、生産管理、品質保証、ISO事務局等を担当。
現在ISO9001、ISO22000、FSSC22000、ISO14001、審査やHACCP、FSMSのコンサルティングに携わる。
食品安全に関わる講習会(HACCP、PCQI、JFSMなど)への参加や、ISO、FSSCの審査経験を活かし、食品安全マネジメントシステムの導入や構築・運用改善のヒントとなるような情報をコラムとしてお届けします。
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