INDEX
1.Web-EDIとは?EDIとの違いを解説
2.Web-EDI導入メリット・デメリット
3.EDIの仕組みと特徴
4.EDIの転換期 2024年問題とは?
5.食品業界とEDI 業務標準化と効率化進展
6.【まとめ】Web-EDI/EDIとは?業務効率化を推進
Web-EDIとは?EDIとの違いを解説
EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間で標準化されたフォーマットを使い、専用回路やシステムを通じて安定かつ安全にデータを交換する仕組みです。
Web-EDIは、インターネットを介してWebブラウザから取引を行うもので、従来のEDIと比較するとより手軽かつ柔軟に導入が可能です。新たに専用機器の導入が必要ないため、資金力に制約がある中小企業や個人事業主でも手軽に電子データ交換を実現できます。通信環境やセキュリティ対策が課題となることがあるため、それぞれの特長を考慮し、取引規模や目的に応じて選択することが重要です。
表1 EDI/Web-EDIの比較
EDI | Web-EDI | |
---|---|---|
接続方式 | 専用回線やVAN(Value-Added Network)を使用 | インターネットを使用 |
アクセス方式 | 専用ソフトウェアやシステムを必要とする | Webブラウザでアクセス可能 |
コスト | 専用回線やソフトウェア導入が高コスト | 比較的低コストで導入可能 |
運用環境 | 特定のハードウェア・ソフトウェアが必要 | 特別な環境を必要としない |
通信速度 | 安定かつ高速 | インターネット環境に依存 |
Web-EDI導入メリット・デメリット
低コストや導入のハードルが低いといった利点が注目される一方で、運用面での課題は無視できません。企業がWeb-EDIを導入する際には、メリット・デメリットを把握し、実際の運用を想定しながら総合的に検討した上での判断が必要です。
Web-EDIのメリット
Web-EDIのメリットとして下記が挙げられます。
低コストで導入が可能
Web-EDIは、他のEDIシステムと比較して導入コストを大幅に抑えることができます。専用回線や高価なハードウェアを必要とせず、インターネット環境と一般的なパソコンがあれば利用可能です。
また多くの場合、クラウドサービスとして提供されるため、サーバー構築や保守に伴う追加費用も発生しません。初期投資だけでなく運用コストの軽減にもつながり、特に中小企業にとって、IT予算の制約がある中で手軽に導入できることが大きな魅力です。さらに、従量課金制や柔軟なプランを提供するサービスも多く、自社の規模や業務量に応じた選択が可能です。
容易に導入ができる
Web-EDIは、その導入の容易さでも注目されています。専用ソフトウェアのインストールや特別なITスキルを必要とせず、標準的なウェブブラウザがあれば利用できるケースがほとんどです。複雑なシステム構築や長期間の準備が不要なため、短期間で稼働を開始できます。
手軽に導入できる点は、Web-EDIが幅広い業種で利用される理由の一つです。
業務の効率化
Web-EDIを導入することで、取引業務全体の効率化が期待できます。手動で行っていた発注書や請求書の作成、データの入力作業を電子化することで、取引先とのコミュニケーションがスムーズになります。書類の郵送や手渡しが不要になれば、オフィスのペーパーレス化、コスト削減にもつながります。
一部のサービスでは、業務フローの自動化や分析ツールの提供も行われており、活用することでさらなる効率化が実現できます。企業は取引業務にかかる負担を軽減し、リソースを他の業務に充てることができるようになります。
Web-EDI導入時の注意点
多画面現象
Web-EDIシステムは発注企業ごとに仕様が異なり、取引画面やデータ内容、画面レイアウトが統一されていません。そのため、受注側の企業では取引先ごとに異なるシステムを使い分ける必要があり、日々の業務効率が低下する可能性があります。
処理リスク
Web-EDIは人間の介在を前提とする場合が多いため、処理の抜け漏れや遅延が発生するリスクがあります。納期回答などの重要な情報がタイムリーに得られない場合、追加の管理業務が必要となることもあります。
標準化の課題
取引先ごとに異なる画面レイアウトや遷移設計が導入されているため、統一的な作業手順が確立しづらく、業務が煩雑化する可能性があります。特に取引先が多い企業では、この負担が増大することが懸念されます。
Web-EDIの仕組みと特徴
Web-EDI は、企業間での電子データ交換を実現するための仕組みで、その運用は主にインターネットを利用します。一般的には、受発注や請求書の発行、納品書の確認などの業務がWeb-EDI を介して行われます。
Web-EDIには「ブラウザ型」と「ファイル転送型」の2種類があり、取引情報の種類や取引企業、企業のバックエンドシステムとの連携性に応じて選択します。
ブラウザ型
Webブラウザ上に伝票イメージを表示し操作を行う仕組みで、表示画面から注文内容の確認や発注情報の入力を行います。
ファイル転送型
サーバーを介しデータをファイル形式でやり取りする仕組みで、発注側は注文書ファイルをサーバーにアップロード、受注型がダウンロードするという流れで取引します。
EDIの転換期 2024年問題とは?
ISDNサービスの終了
2017年4月にNTT東日本/西日本は、INSネットデジタル通信モードのサービスを終了すると発表しました。これはISDN回線を使ったサービスが利用できなくなることを意味します。
移行は2024年1月から順次開始し、2025年1月に完全移行する予定とされており、ISDNを基盤に社内のネットワークや取引先との通信を行う企業は、取引の際に使用する通信手段を切り替える必要があります。
即座に使用できなくなるわけではありませんが、Web-EDIあるいはインターネットEDIへ切り替えるなどの対処が求められます。
【ISDN回線とは】
電話線を使用したデジタル回線のインターネット通信技術です。従来のインターネット接続方法であったアナログ回線をISDN回線でデジタル化し、より高速なインターネット通信を可能にしました。
食品業界とEDI 業務標準化と効率化進展
食品業界のサプライチェーン・マネジメントへの取り組みにおいて、EDIによる情報管理は欠かせません。食品業界でのEDIの歴史を振り返ると、1975年に農林水産省の事業として商品の標準化が進められ、JANコードや標準通信プロトコルの制定が行われたところから始まります。
JANコードをベースとし商品情報の標準化が行われたことで、食品業界のEDIは急速に推進し、物流費の削減、受発注の集約、ペーパーレス化といったような業界課題のニーズに対して「EDI」はベストなソリューションとなりました。
食品業界でのWeb-EDI/EDI活用で注目される点は以下の通りです。
業務の標準化
業界全体での業務標準化が注目されています。業界独自のVAN(Value Added Network)の利用が普及し、これにより取引先間でのデータ連携がよりスムーズに進むようになりました。データ交換が一元化されれば、食材の供給チェーン管理が強化され、トレーサビリティの向上にもつながります。
食品業界では安全性や信頼性が重視されるため、こうした仕組みによって製品情報や流通過程が正確に追跡可能になるのは非常に大きな利点です。
バーコードやRFID(無線自動認識)をEDIシステムに組み込み、在庫管理やロジスティクス業務を効率化するといった事例もあります。EDIは単に効率化を図るツールとしてだけでなく、食品業界全体の事業基盤の強化や持続可能な経営を支える要素として重要な役割を果たしていると言えます。
受発注プロセスの自動化
受発注の効率化は、食品業界における重要な課題の一つですが、EDIとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を連携し、受発注業務の部分的な自動化を進める企業が増えています。取引先が多い場合、Web-EDIの取引はかえって負担が大きくなる可能性がありますが、RPAを活用してダウンロード作業を自動化すれば、少ない負担でデータのやり取りを実現することができます。
多くの業界で人手不足が深刻化する中、食品業界でも労働力の確保が困難になっています。従業員の業務負担を軽減し、効率的に業務を遂行するための取り組みが必要とされています。
【まとめ】Web-EDI/EDIとは?業務効率化を推進
ここまで、Web-EDIについて、EDIとの違いからメリット・デメリット、また食品業での活用について解説しました。
導入のハードルが低く低コストで抑えられるWeb-EDIの登場により、多くの企業がEDIを導入しやすい環境が整いつつあります。前項でも述べたように近年では、効率化をさらに進めるためRPAとの連携が注目されており、EDIを補完する形として導入が進んでいます。
食品業界においても、業界全体でのDX推進が求められており、こういった技術を取り入れた業務プロセスの効率化は、今後ますます重要な取り組みとなるでしょう。
よくある質問
- Q.Web-EDIとは具体的に何ですか?
- A.Web-EDIは、インターネットを利用してデータのやり取りを行う電子データ交換(EDI)の一形態です。従来のEDIが特定のネットワークや専用回線を使用していたのに対し、Web-EDIはブラウザベースでアクセスできるため、導入や運用が容易です。
- Q.Web-EDIの主な利点は何ですか?
- A.主な利点には、コスト削減や運用の効率化があります。企業は専用の通信回線を維持する必要がなく、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、業務の柔軟性が向上します。
- Q.導入に際しての注意点はありますか?
- A.Web-EDIの導入には取引先との仕様調整が必要な場合があります。各企業で使用するフォーマットやプロトコルが異なるため、事前に十分なコミュニケーションが求められます。
【参考】
・国土交通省「我が国加工食品分野におけるEDIの歴史」