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Codex2020最新版に準拠!! 水への要求事項

Codex2020最新版に準拠!! 水への要求事項

はじめに

 前回まで「7.2 ハザードと紐づけられるキーとなる側面」の9項目を一つひとつ解説してきました。このセクション7「オペレーションのコントロール」というのはCodex食品衛生の一般原則の中でハザードコントロールに関わる要求事項であり、第三者に証明可能であるよう計画書と記録付けで“見える化”するセクションであると第13回目で解説しておりました(注:第13回目ではまだCodex2003年版なのでセクション番号が7ではなく5となっていました)が、このセクションにはまだ3項目の大切な要求事項が残っております。それは「7.3 水」「7.4 文書化と記録づけ」「7.5 リコール手順―安全でない食品の市場撤去」です。「7.2」はハザード分析の結果として潜在的ハザードと紐づけられる「より大きな注意が必要な衛生規範」と判断された、「必要な場合」にのみ文書化と記録づけの対象となりましたが残る項目は一般的に衛生管理計画に盛り込むべき要求事項となります。ただし、基本的な考え方は同じでハザードコントロールに関わる要求事項であるから第三者に証明可能な“見える化”が必要となるのです。「7.3 水」から見ていきましょう。

水に求められるリスクベースのアプローチ

 食品施設で使用される水にはさまざまな用途があります。生鮮品(野菜、果実)や水産品、加工施設など水は使用する場面によりさまざまな意図で使用されます。また世界的に見れば水は限りある資源であり再利用水の問題が近年の焦点となってきています。コーデックスで使用される水質カテゴリーは大きく“飲用適の水”(potable water)と“清潔な水”(clean water)に大別され、“清潔”は“飲用適”より水質が低いと一般的に考えられています。“清潔な水”とは「その使用の前後関係(context)で食品の安全性を損なわない水」と定義されています。たとえば生鮮品ならば灌漑水と収穫後の使用水、水産物はもう少し複雑で生魚かそうでないか、丸ごとか切り身か、生食用か調理用かを考慮する必要があります。加工施設などでは水の再利用と、より広い意味での排水の利用がリスクベースで考慮される必要があります。

 したがいまして食品原料として使用される水は“飲用適の水”のみ使用される必要がありますが、冷蔵など特定の食品プロセスや食品取り扱い分野では、重大なハザードに及ばない限りで“清潔な水”を使用する場面があり得ることを踏まえておく必要があります。たとえば、そのまま食べられる生鮮野菜でたびたび発生する病原性大腸菌食中毒。灌漑用水には微生物学的基準がなく、大腸菌群など指標微生物によるモニターは実際の病原性微生物が存在しないことの証明にはなりません。またカット野菜洗浄で次亜塩素酸などを使用する場合、一定の微生物レベルの低減は期待できますが十分な殺菌レベルではないかもしれない(特に、きゅうりなど)ことも理解すべきです。水産物では腸炎ビブリオが沿岸海域や汽水域に多く存在することが知られていて日本ではこれらを漁獲後の洗浄水等に使用しないことで食中毒を大幅に減少できた成果があります。厨房施設では食器洗浄機などで再利用水を活用する場面が増えてきていますがアレルゲンや微生物等の再汚染の原因としないのかの評価が大切でしょう。

Codex2020最新版に準拠!! 水への要求事項 その⑩

フローダイアグラムで外せない水・氷・蒸気

 食品と接触する水は、液体(例えば洗浄用、解凍用、冷却用として)はもちろんのこと、固体(例えば冷却用として)であれ、蒸気(例えば加熱用として)であれ、食品原料として取り扱われます。使用される水が市水であれば水道法に基づく51項目が適用されていますが、水道水以外の水(井水等)であれば食品製造用水(26項目)、営業用水の基準に従って必要に応じて消毒、浄水処理を実施し、自治体で定められた条例に従い検査する必要があります。加えて貯水槽を使用する場合には改正食品衛生法で求められる新しい施設基準はもちろんのことオペレーション上も潜在的ハザードを考慮した管理が求められます。

排水の逆流と非食用水の接続、再利用水

 改めて水を原材料としてハザード分析をしてみると配水システムに配慮が向かうはずです。十分な排水機能や、汚水の逆流しない配管は、新しい施設基準では営業許可条件ですが更新申請前であれば再評価が必要な施設があるかもしれません。ただし、ここではオペレーションに焦点を置いていますので、分流バルブや逆流防止弁、配管システムを別々にするなど、食品に接触させるのに不適の水(例えば、火災制御や食品非接触の蒸気のための水等)が食品接触水システムに接続させないシステムとなっているはずなのに、誤ったメインテナンスでこれを接続することを想定してみます。実際に2021年10月には大学病院が空調用の水を接続することで亜硝酸態窒素に汚染された水を乳児が喫食し中毒を起こす事故が発生していることから“起こりやすさ”のリスクは決して低くないことを示しています。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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