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CCPモニタリング適用の事例(Codex 19.9);HACCP 2022最新版に準拠!!

CCPモニタリング適用の事例(Codex 19.9);HACCP 2022最新版に準拠!!

はじめに

 HACCP12手順の9手順目、HACCP7原則「適用」の第4原則目である「CCPモニタリングシステムの確立」について、Codexの「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版に基づいて、その「19.9 個々のCCP について、モニタリングシステムを確立する」(手順9 /原則 4)ではどのように記述されているのか、今回は3段落中の2段落目を解説します。ここは本セクションでもっとも文字数ボリュームのある段落で、それはモニタリング手順の適用事例を列挙して説明しているからです。

逸脱―“危険温度帯”への落ち込み、ふるいの破損―の性質

 前回解説した通り、CCPモニタリングの第一目的は、許容限界の逸脱を検出できること(第1段落の2文節目)です。なぜならば許容限界の逸脱は「コントロールが失われたこと」(loss of control)を示すからでした。より具体的にCCPモニタリングは、逸脱によって影響を受ける製品を、分離する目的にとって適時の、検出できるモニタリングシステムである必要があります。

 そこで確立しなければいけないのが「方法と頻度」(When、Who、How)という解説もいたしましたが、第2段落の1文節目では、その「方法と頻度」は逸脱の「性質」を考慮しましょうと記述しています。


スライド

 逸脱の事例として温度コントロールの失敗と器具破損を挙げていますが、ここで「温度低下」(a drop in temperature)について注意しておきます。「低温殺菌中の急激な温度低下」「低温貯蔵中の温度の緩やかな上昇」に比べて「温度低下」とは具体性に乏しい表現と思いませんか。今回気になってAIに質問したところ、ここは単に“温度が下がる”というより“危険温度帯に落ち込む”ニュアンスであるらしいことがわかりました。「drop in~」は「立ち寄る」とか「落ち込む」の意で、たとえばヒトの体温なら「a drop in temperature」は“低体温に落ち込む”ですが、食品製造では“微生物増殖が懸念される危険温度帯に落ち込む”(どちらも危険域に“立ち寄る”)となります。「危険温度帯」(Danger Zone)は10~60℃であると第20回で紹介していますがこれは日本国内のみ通用する話で、世界では40°F (4°C) ~140°F (60°C)が常識です。


そのCCPモニタリング方法は“連続的”が可能かどうか

 CCPモニタリングは「“連続的”でないといけない」ということはありません。誤解されている場合はこの機会に修正しましょう。正しくは「“連続的”が可能な場合(Where possible)は望ましい」です。CCPモニタリングが連続的であれば、前回解説した通り、逸脱が起こる前に「調整」(adjustments)でき得るわけですね。しかしながら、HACCPは実践であり机上の空論ではありません。現場ではいくらでも「可能ではない場合」があります。

 事例にある水分レベルや保存剤濃度は通常、配合後に実施する性質のモニタリングでそもそも連続的である必要性がありません。またポンプ設定はポンプ内流量・流速をモニターできない設備で“比較校正済み”シールが貼られているような場合、アレルゲンの正しいラベルはAIカメラモニターができない設備で製品ロット毎のラベル貼り前と後にチェックするような場合が想定されます。温度・時間コントロールであっても、バッチ式オーブンや釜に備え付けの計測器がないならば頻度を決めて中心温度計を突き刺すようなモニタリングは多くの現場で実施されています。

モニタリングが“連続的でない”場合の頻度

 モニタリング技術も年を経るに従い最新技術が導入されてより簡易に連続的モニタリング可能な設備が登場していますが、規模の大小や設備の新旧を問わず現場で実践可能であるかという側面から考えると、モニタリングが“連続的でない”場合、あるいはモニタリングの性質的に連続的である意味がない場合は上述した通りいろいろ考えられます。

 このようにモニタリングが“連続的でない”場合は、頻度が適切でなければいけませんが、この適切性には2つの考慮点があります。一つ目は「許容限界が満たされる可能性がある範囲」の頻度であること、二つ目は「逸脱による影響を受ける製品の量を制限する」側面です。

 前者は、たとえば上述した「抜き取り式で中心温度計を突き刺す」モニタリングを挙げると、統計的な温度のバラツキを考慮して振れ幅が小さい場合の頻度は長めに設定できるかもしれませんが、振れ幅が大きいあるいは不安定な場合、頻度は相当程度に短く設定しないと逸脱を見逃してしまうかもしれません。

 また後者で例を挙げると、同じ中心温度計による事例で統計的な温度のバラツキの“振れ幅が非常に小さい”からといって数ロットを越えてゆるい頻度に設定すると、いざ逸脱が見つかった時には、前回正常だった時点までさかのぼり次のセクションでご説明する「原則5 是正措置」の対象となりますから、留め置くべき製品が膨大になる、あるいは出荷してしまっていてリコールしなければならない、といった収集のつかない事態、これは重大な経営リスクとなり避けたいところです。

微生物検査でなくプロセスコントロール

 最後の文節では微生物学的検査に頼るのではなく、なんらかの物理的・化学的測定に置き換えた予防的プロセスコントロールに着目する大切さを記述しています。微生物サンプリングが食品安全の保証足り得ないこと、微生物制御をプロセスコントロールで実現することは第20回第21回第35回および第44回と繰り返しご説明してきたとおりです。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007~2024年)
国際HACCP同盟認定 トレーナー・オブ・トレーナー
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数

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