INDEX
1.食品業の原価管理とは
2.2022年以降の食品価格の高騰
3.原価管理の見直しは喫緊の課題
4.食品業の原価管理が抱える特殊な事情
5.食品業の原価管理ソリューション
6.よくある質問
食品業の原価管理とは
食品製造業における製造原価は「原価の三大要素」である材料費・労務費・経費で構成されています。
総売上から原価を差し引いたものが売上総利益(粗利)ですが、当然ながら、粗利を最大化するためには原価の三大要素を適切に削減する必要があります。
※粗利も同様に分解して純利益まで算出しますが、そちらの詳述は別表に記載するに留めます。
総売上 | 売上総利益 (粗利) |
営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
特別損益・税金 | ||||
営業外損益(支払利息など) | ||||
販売管理費(間接部門の人件費・福利厚生費・通信費・水道光熱費など) | ||||
製造原価 | 材料費(原料費・備品費など) | |||
---|---|---|---|---|
労務費(製造にかかわる人件費) | ||||
経費(施設の賃貸料・設備の減価償却費・製造に関する水道光熱費など) |
ただ、食品業における原価の削減は容易ではありません。その要因としては、まず、労働集約型の業態に起因する労働生産性の低さが挙げられます。また、コモディティ化も激しいため商品の差別化が難しく、競合との価格競争が激しいという事情もあります。
財務省が発表している業種別経常利益率調査を紐解けば、製造業全体の経常利益率が8.5%であるのに対して食品製造業は3.7%と半分に満たない数字です(図)。
こうした傾向については、今後も楽観的ではいられません。食品業の利益率をさらに圧迫する要素として、昨今取り沙汰される食品価格の高騰が挙げられます。
2022年以降の食品価格の高騰
2022年は歴史的にみても稀な食品価格高騰の年でした。
小麦を例にとれば、偏西風の蛇行や地球温暖化を主因とする2021年の異常気象で生産量第4位のアメリカと6位のカナダがそれぞれ46.7℃/49.6℃の記録的な熱波に襲われ、壊滅的不作を招きました。新型コロナウイルス禍による生産力低下やサプライチェーンの混乱が追い討ちとなるなか、価格の高止まりを決定づけたのが2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻です。
1位 | 中華人民共和国 |
---|---|
2位 | インド |
3位 | ロシア |
4位 | アメリカ合衆国 |
5位 | フランス |
6位 | カナダ |
7位 | ウクライナ |
2022年3月時点で小麦の国際価格は史上最高値を更新。農林水産省は輸入小麦の政府売渡価格について、17.3%の引き上げを発表しました。
小麦の生産量で世界第3位のロシアは食糧輸出に政治的な制限をかけており、同じく7位につけるウクライナも輸出量が半減。頼みの綱といえる生産量第2位のインドも記録的な猛暑と不作に見舞われ、国内流通を優先して小麦の輸出禁止を決定。5位のフランスも熱波による干ばつを受け、自国の食糧生産に危機感を募らせています。
空前の値上げラッシュは小麦に限った話ではありません。大豆やとうもろこし、コーヒーなど多品目で値上がりしており、当然ながら、穀物飼料で飼育する食肉価格にも影響が出ています。
原価管理の見直しは喫緊の課題
こうした食品価格の高騰は、一過性のものではないでしょう。事実として、2024年現在もオリーブやチョコレート、コメ価格高騰が取り沙汰されるように食品価格は上昇傾向にあります。物価高は食品のほか包装資材にも及んでおり、政府の賃上げ要請や物流の2024年問題を受けて、人件費・物流費も高騰の一途を辿っています。
食品業の売上は回復しているが、利益は下がっている
農林水産省が発表している食品製造業の経営動向をみてみましょう。2022年(令和4年度)の食品製造業の売上高は45兆4千億円で対前年度比9.1%増。一方で、売上総利益率は19.8%で対前年度比マイナス2.3ポイント、売上高営業利益率は2.0%で対前年度比はマイナス0.9ポイント低下しています。
売上自体は新型コロナウイルス禍から回復している一方で、原価の高騰で収益性については大幅に悪化していることがわかります。
中長期的にみても食品価格は高騰する?
帝国データバンクの調査報告では、2024年後半についても月最大2千品目前後、年間で最大1.5万品目の値上げペースが続くと予想されています。円安局面が長期化すれば、当初予想の品目数を上回る可能性もあるでしょう。
中長期的にみても、開発途上国の人口増加により国際的な食糧需要は激増することは確実視されているほか、エネルギーのバイオ燃料依存が進めば、穀物価格に跳ね返ることも予測されます。
これからの食品業における最大の課題は、まずなによりも精緻な原価管理といえるのではないでしょうか。
食品業の原価管理が抱える特殊な事情
原価管理はあらゆる業種で最重要に位置づけられる基幹業務です。ただ、特殊な事情を抱える食品業では、それも簡単ではありません。
以下、食品業の原価管理を困難にするポイントを3つに絞ってご説明しましょう。
原料価格の値動きが激しい
国際情勢や気候条件、あるいは季節によって、原料となる食品の値動きが激しいことは、食品業の原価管理を複雑なものにしています。
棚卸評価にしても先入先出法・後入先出法・平均原価法などの手法から適切なものを選ばなければ正確な原価管理は覚束ないでしょう。
多品種小ロット化
食品業界は現在、ユーザーの多様な嗜好に合わせた多品種小ロット化へ舵を切っています。
品目別・ライン別・工程別・費目別の細かな原価管理が必要となる一方で、生産効率の維持を両立しなければならず、管理業務も煩雑になりがちです。
複雑な歩留まり
食品業の原価管理を複雑にさせる大きな要因のひとつに歩留まりがあります。
食品業における歩留まりとは、簡単にいえば可食部位と考えて問題ありません。
たとえば、1kgの魚を下ろして骨や内臓を取り除き600gになった場合、歩留まり率は60%です。
この魚を15,000円で仕入れた場合、歩留まり原価は仕入れ値を0.6で割って25,000円と算出されます。
食材は加工によって可食部位の量が大きく減少します。魚は個体の栄養状態や種類によって差異が大きく、野菜も季節ごとに水分量が増減します。
そうした事情から歩留まり率の計算は容易ではありませんが、正確な原価管理には必要な手順となるでしょう。
食品業の原価管理ソリューション
食品業の原価管理は重要課題でありながら、同時に煩雑で、一筋縄ではいきません。Excel(エクセル)で管理している事業者さまも多いのが実情ですが、人の手に依るそうした業務フローは膨大な作業量や人的ミス、属人化など、さまざまな問題を孕んでいます。
最も有効な管理方法といえるのが、専用の原価管理システム・原価管理ソフトの導入です。
内田洋行ITソリューションズでは、原価管理にお悩みの食品業事業者さま向けに、スーパーカクテルCore FOODs 原価をご案内しています。同製品は食品業の商慣習に最適化された原価管理システムとして多くの食品業事業者さまから好評の声を戴いています。工程別・費目別の精緻な原価管理のほか、経営判断を支援する分析機能などが標準で搭載されています。また、バックオフィスの業務フロー効率化を図れば、原価の高騰を販管費(販売管理費)の圧縮で相殺できるというメリットもあります。
製品の詳細についてPDFカタログをご用意していますので、ぜひ下記のバナーよりご覧ください!
よくある質問
- Q.2022年以降の食品価格高騰の原因はなんですか?
- A.新型コロナウイルス禍から経済が回復するなかでの急速な需要拡大に、ロシアのウクライナ侵攻の影響が重なったことが大きな要因です。エネルギーや穀物に関して世界有数の産出国であるロシアが戦争状態に入ったことに加え、猛暑や干ばつなど天候不順による凶作、円安による輸入コスト高なども重なりました。値上がりの影響は包装資材や物流にも出ているほか、賃上げの影響で人件費も高騰しており、食品業の原価管理にとっては、困難な局面といえるでしょう。
- Q.食品製造業の原価率と利益率は?
- A.経産省が公表している「2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー」によれば、食品製造業の売上原価率は79.3%、売上利益率は20.7%です。売上原価率は前年比で1.9ポイント上昇しており、穀物や原油価格高騰の影響がみてとれます。
- Q.食品卸売業の原価率と利益率は?
- A.経産省が公表している「2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー」によれば、食料・飲料卸売業の売上原価率は89%、売上利益率は11%です。売上原価率は前年比で0.2ポイント上昇と、原価高騰の影響は製造業より小さかったことがわかります。売上が伸長したことで物流費などの販売管理費が薄まった結果と考えられています。
- Q.食品小売業の原価率と利益率は?
- A.経産省が公表している「2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー」によれば、飲食料品小売業の売上原価率は69.8%、売上利益率は30.2%です。売上原価率は製造・卸とは逆に前年比で0.7ポイント減少しています。製造業に比較して、卸・小売はすみやかな価格改定や粗利率の高い商品構成への変更など原価高騰に対して対策しやすい業態であることがわかります。
- Q.原価管理システム “スーパーカクテルCore FOODs 原価” の対象業種を教えてください。
- A.スーパーカクテルCore FOODs 原価は、食品業の商慣習に基づいて開発された原価管理システムで、食品製造業(食品メーカー)・食品卸売業・食品小売業とさまざまな業種で導入実績がございます。
【参考】
・総務省統計局「世界の統計2022」
・農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」
・農林水産省食料産業局「食品製造業をめぐる情勢」
・農林水産省「食品産業動態調査」
・気象庁「世界の異常気象速報」
・財務省「四半期別法人企業統計調査(令和4年1~3月期)」
・経済産業省「2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー」
・帝国データバンク「2024 年の食品値上げ 1 万品目突破」