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Codex HACCP 2020最新版に準拠!! セクション1 HACCP 7原則―HACCPの誕生と発展

Codex HACCP 2020最新版に準拠!!  セクション1  HACCP 7原則―HACCPの誕生と発展

HACCPは3原則から誕生した

 食品衛生法改正で法制化された義務的HACCPの国際標準Codexガイドラインは、1993年(平成5年)に発行されたのが最初です。当時からHACCPはいま私たちが知る7原則でしたが、そもそも最初のHACCP発祥の地である米国の歴史を振り返るとHACCPは3原則から始まったことをご存じでしょうか?

 HACCP手法が誕生した背景として、米国NASA(全米航空宇宙局)がアポロ計画で、人間を宇宙に送るのに、食品安全の保証をどう担保するかという目的で開発されたという逸話をどこかで聞いたことがある方々も多いと思います。この宇宙食開発に起因するHACCP誕生はなんと1959年(昭和34年)にまでさかのぼります。

 この検討をしたのが食品メーカーのピルスベリー社と、米国陸軍ネイティック研究所です。すぐにわかったことは製造バッチ毎の微生物検査が汚染合格を見逃してしまう可能性の高さでした。そこから“全体的なプロセス、原材料、加工環境および関与するコントロールの確立こそが、成功への唯一の道であると結論付けた”ことが発想のきっかけです。

 食品安全保証の基盤として“ゼロ欠陥プログラム” (Zero Defect program)と、“失敗モード”(Mode of Failure)が比較検証されまして、前者の全点検プログラムは総花的で食品製造への適用は現実的でないことがわかり、後者の、製品/プロセスに固有のハザードを特定し、そこに知識と経験を結集する手法が採用され、これがHACCPへとつながったのです。1971年(昭和46年)に食品保護全米会議が発表した最初のHACCP概念は以下の3原則でした。

  1. 栽培/収穫からマーケティング/仕込みに関連するハザードの特定及び評価
  2. 特定されたすべてのハザードをコントロールするためのCCPの決定
  3. CCPをモニターするためのシステムの確立

国際標準Codex HACCPの誕生

 食品安全に対するこの新しいアプローチ誕生への高い関心から米国では、1974年ごろHACCP について数多くの会議やセッションが開催され、FDA(米国食品医薬品局)もHACCP要素に基づいた査察官トレーニングを実施、低酸性及び酸性化缶詰食品規制に活用されましたが、それ以外の食品にHACCP は業界で広く活用されませんでした。

 再びHACCPが脚光を浴びたのは1985年、全米科学アカデミーがサルモネラ菌の微生物基準確立の報告書で、食品供給の安全性を保証する最も効果的かつ効率的な方法としてHACCPの活用を推奨しました。これに伴い米国ではHACCPガイドラインの議論が進み「CCPをモニターするためのシステム」はモニタリングと、モニターするための基準(許容限界)設定や基準を逸脱した場合の是正措置に細分化され5原則となりました。さらにCCPのモニターシステムが正しいことを保証するに足る証拠として検証と記録の必要性に議論が進展して、主に食品微生物学者で構成される諮問委員会NACMCFにより、1989年に私たちの知る7原則で構成されるHACCPの確立に至りました。

 米国でのHACCP手法の進展を受けて、国際貿易の規格・基準を定める食品規格委員会Codexは1993年に最初のHACCPガイドライン(CAC/GL 18-1993)を策定し、さらにWHO(世界保健機構)のSPS協定(1995年)に基づき、米国NACMCFの諮問を受けて、1997年に「食品衛生の一般原則」(CXC 1-1969)の附属文書としてほぼ現行のHACCP 7原則が国際規格として確立(この最新が2020年版 Codex)されました。


「HACCP 7原則」を俯瞰する

 これから一つひとつ定義からひも解いていく「HACCP 7原則」ですが、各論は次回以降に送るとして、改めてもう一度、7原則の全体を俯瞰してみましょう。冒頭に宇宙食のために開発されたHACCPという話をしましたが、以前示したHACCPの10大誤解で説明した通りNASAで開発されたからと「高度な衛生管理」だと曲解しないようにしなければなりません。本来の主旨は、①最終製品検査では安全性の欠陥を見逃す、②総点検方式は現実的でない、ことからHACCPとは(前編)で整理した通り、製品/プロセスに固有のハザードおよびそのコントロール手段を特定する手法として確立されてきたわけです。

 まず原則1・2は、この製品/プロセスに固有のハザードおよびそのコントロール手段を特定することを示しています。言い換えればWhat(何を)、Where(どこで)失敗し得るのか、すなわちコントロールする必要があるのかを“見える化”します。原則3・4・5は、「何を」「どこで」が決まったコントロール手段に対して、Who(誰が)、When(いつ)、How(どのように)を予防の観点から計画として定めていきます。この計画を決めていく際にWhy(なぜ;科学的にどのような妥当性を根拠にして)の大切さが2020年版Codexでは改めて強調されました。原則6・7は上記計画が遵守されていることと、計画自体に有効性があることをいかに保証するかのマネジメント要素で構成されます。次回からは各原則をていねいに詳述いたしましょう。

杉浦 嘉彦
 執筆者 

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏

【 講師プロフィール 】
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007年より)
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
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監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

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コーデックス規格
基本選集 I 対訳

監修:一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター
翻訳・編集:株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部

大幅に改訂された「Codex 食品衛生の一般原則 2020」の内容を翻訳、長年の HACCP トレーニング実績を持つ日本 HACCP トレーニングセンターが監修。
付随するガイドラインや実施規格も発刊予定です。

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